この記事では、ヌメ革はどんな革なのか?を多方面から掘り下げます。
最初に、ヌメ革ってどんな革?への回答を。
良い味になる革でしょ?オッケー、ヌメ革の財布買うわ。
と思ったヌメ革製品を検討中のアナタ、
ちょっと待ってください!!
ヌメ革は実は注意が必要な革なのです。
その理由も含めて深掘りします。
- ヌメ革って何?
- ヌメ革のあつかい方とお手入れ
- ヌメ革製品が買えるお店
- ヌメ革の文化背景
ヌメ革はタンニンでなめされた革
ヌメ革は「タンニン」で鞣された革のこと
ヌメ革というのは、タンニンという植物由来のポリフェノール成分で鞣された(つくられた)革のこと。
タンニンなめし革とも呼ばれます。
代表的なタンニンは、クヌギ、ケブラチョ、ウォルナット、ミモザなどの木から抽出します。
タンニンは日本語では渋とも呼びます。
ワインやお茶に含まれるポリフェノールの仲間です。
タンニンなめし革は自然由来の成分で作られており、土に埋めればバクテリアに分解されて土に還ります。
なめしとは?クロムって?タンニンについてもっとくわしく!
そんな方は、クロムなめしとタンニンなめしのちがいをご覧ください。
天然タンニンと合成タンニン
タンニンには天然タンニンと合成タンニンがあります。先ほどあげた木から抽出したのは天然タンニンです。
一般的にヌメ革といわれるのは天然タンニン(ベジタブルタンニン)でなめした革のことで、合成タンニンの革をヌメ革とは認められない場合が多いです。
このあたりも定義がなくあいまいに表記されているので注意が必要
合成タンニンのほうが鮮やかな色が出せるメリットがありますが、従来のヌメ革のようなかっちりした革に仕上がっているものは少なく、同じタンニンでも性質が異なります。
ヌメ革はベージュの革?
一般的に、ヌメ革と言えばベージュかキャメル色の革を思い浮かべる方がいます。
このよく見るベージュやキャメルの革は、色を染めていないか少しだけ染めた素に近いヌメ革です。
この素の状態だけをヌメ革といい、色を染めたヌメ革やオイルを後から加えた革はヌメ革と呼ばないとする考え方もあります。
意見が分かれるところですが、私は広い意味でヌメ革ということが多いです。
色がついていても加工されていても、タンニンなめしならヌメ革です。
そのため、カラフルなヌメ革や、型押しで模様がはいったヌメ革なども多く出回っています。
※タンニン溶液だけで染まった状態
ヌメ革は何の動物の革?
ヌメ革って牛革?豚革?それとも別の?
一般的にヌメ革といえば牛のヌメ革ですが、豚ヌメ革や山羊ヌメ革もあります。
「ヌメ革」は特定の動物の革を指す言葉ではありません。先に書いた通り、製法を指す言葉です。
豚ヌメ革、牛ヌメ革、馬ヌメ革、変わったところでは魚の鮭(!)のヌメ革など、いろいろな生き物の皮を原料としたヌメ革があります。
革になる動物の種類については、革になる動物とその革20種紹介|革質、大きさ、特徴などで紹介しています。
ヌメ革、本ヌメ革、本革のちがい
ヌメ革は本革です。本革は動物の皮が原料。フェイクレザーは本革とは呼びません。
本ヌメ革は、ピット槽鞣しという製法で作られたヌメ革です。
本ヌメ革は、このピット槽のタンニン液にじっくりと漬け込んでなめします。対して、本ヌメ革でないヌメ革は、タイコというドラム洗濯機のような樽でぐるんぐるん回しながらなめします。
本ヌメ革は、繊維が詰まってガッチリとした仕上がりになります。
そのままでは硬い仕上がりですが、オイルを足したりシボを付けたりした本ヌメ革はとても表情豊かに仕上がります。
手間がかかる為、今では世界的に貴重な製法です。
本ヌメ革の代表格「栃木レザー」についてくわしくは、栃木レザーのすべてを革職人が語る|品質や種類、おもなブランドに弱点までをご覧ください。
次の写真がドラム。
普通のヌメ革やクロム鞣し革は、このようなドラムでなめしています。短時間で仕上がる為、ピット槽鞣しに比べるとコストが安く仕上がる傾向があります。
オイルヌメ革とは?
オイルヌメ革はオイルを加えたヌメ革のこと。どんなオイルを加えるかや、どんな加工を施すかで個性を出します。
素のヌメ革に比べると汚れが目立ちにくく、ひび割れしにくいため扱いやすい革が多いです。
オイルレザーというのはオイルが多く含まれた革のことで、オイルヌメもオイルレザーの中に含まれます。オイルレザーについてくわしくは、オイルレザーってどんな革?手入れと扱い方の注意点をご覧ください。
ヌメ革は何年もつ?
ヌメ革は比較的長く使える種類の革です。
製品や作りの良し悪しや革の質にもよるので一概には言えませんが、財布なら10年は使える場合が多いのではないでしょうか。
大切に使われたヌメ革かばんの中には、数十年使っても現役のものもあります。
長く使うためにはお手入れが大切です。お手入れ方法は記事の後半で紹介しています。
ヌメ革の性質
- タンニン100%なめし。
- オイルは、なめしに必要な最低限量のみ入れる。表面処理も行わず、マットで毛穴が目立つ仕上がり。
- 色は薄ピンク~キャメル(染めていない状態)。
- 経年変化大。摩擦によるツヤ、茶色に変化など。
- 汚れやすい(金属汚れ、汗などに反応して黒く変色)。
- 水、油をよく吸う。
関連記事 ヌメ革の色変化|ベージュのヌメは何色に?緑は?グレーは?
ヌメ革のデメリットは汚れやすいところ
ヌメ革は味が出る素材ですが、その反面汚れやすさが気になる人もいるでしょう。この変化のしやすさがメリットでありデメリットでもあります。
ヌメ革製品を販売するとき、しばしば、「あめ色になります」というキャッチフレーズが抱き合わせになっていますが、
あめ色に味が出て一生ものですよ。
こう言われると、
普通に良い感じにアメ色になって長年使えるんだろうな。
と思ってしまうかもしれませんが。
店員さんにはもう少し勉強して接客して欲しいなぁと思ったりします。
ヌメ革は使っていくと色が濃くなってツヤが増していく経年変化が味なのですが、変化のしやすさがアダとなって、汚ればかりが目立ってしまうことも。
この汚れやすさの原因はいくつかあって、革にふくまれるタンニンと鉄分が反応して黒ずんでしまうからだったり、水を吸いやすく水分と一緒に汚れも革内部に浸透させてしまうからだったりします。
それを防ぐためのお手入れをこの後紹介しているのでしっかりチェックしてください。
イタリアンのヌメ革は汚れに強い?
イタリアで作られるタンニンなめし革は、日本の定番のヌメ革よりも汚れに強い革が多いです。
どうして?
理由は、イタリアンレザーには日本のヌメ革のように油分が少ない革が少ないから。
油分が多い革は水分を吸いにくく、水分と一緒に汚れを吸うということが起きにくいです。
だから油分が多いイタリアンレザーは、日本の生成りのヌメ革よりも汚れに強い場合が多い。
国産のタンニンなめし革でも、油分が多い革は油分が少ないヌメ革よりも汚れに強いと言えます。
対して、イタリアンレザーのナチュラルはヌメ革よりは扱いやすい場合が多い。
ヌメ革製品のお手入れと扱い方
ヌメ革の製品は、とにかくデリケートです。日焼け、摩耗による光沢、傷、黒ずみ。
ちょっとした刺激が製品に残ってしまいます。
作業時もとても気を使います!
そのデリケートさと引き換えに、他の素材では感じられない経年変化の楽しさや風格を味わうことが出来るともいえます。
具体的に、革の味ってどんな感じ?
例えばこんな感じです!
革の味についてくわしくは「革の味が出る」ってどういう状態?経年変化と使いこんだ歴史で書いています。
ヌメ革の汚れを防ぐには?
ヌメ革は経年変化を楽しめる反面、使い方によっては嫌な汚れがついてしまうことも。
私の経験から言うと、鉄の粉が付いた時や、汗が付いた時がやっかいです。
黒っぽく変色してしまい、取れません。
黒っぽい反応は革のタンニン(渋)と鉄が結合することで起こります。
それ以外にも、使い始めはあらゆる汚れに染まりやすいので、革表面を清潔にしておくことが何より大切です。
「難しそう・・・。」
って構えてしまうかもしれませんが、大丈夫。
まずはこれだけ。ブラッシングをするかどうかでちがいが出ます。
ヌメ革のお手入れで重要なのはブラッシング
ブラッシングで革表面を清潔にしておけば、万が一雨に濡れても、汚れが革内部に浸透することはありません。
逆に、汚れが付いた状態で水にぬれると、水と一緒に汚れが革にしみこんでしまいます。
私のおすすめのヌメ革用ブラシはこれ。
馬毛ブラシでもいいです。
このブラシがおすすめな理由や検証については、革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。をご覧ください。
ヌメ革にクリームは必要?
クリームは必要ないですか?
長く使うためには必要です。
ひび割れや乾燥による質感の変化を防ぐために、デテログでは革にクリームを塗ることを推奨しています。
クリームは迷ったらこれ。
保湿が出来て柔軟性が与えられて、なおかつ有機溶剤不使用で革に優しい。
詳しくはこちら☟で解説しています。
革に保湿が必要な理由はこちら☟で話しています。
ヌメ革に防水スプレーは必要?
防水スプレーは?
賛否ありますよね。
デテログは、防水スプレーはリスクがあるけど使った方がいいと考えています。
防水スプレーをかけると革にスプレーじみができるリスクがあります。ですが、デテログではそれでもスプレーした方がいいと考えています。
理由は、防水スプレーを使えば水を防ぐだけでなく、防汚効果があるから。黒ずみや水シミを防いで革製品を長持ちさせてくれます。
よりくわしい解説は、防水スプレーはヌメ革に悪影響?使った方がいい理由でお話しています。
防水スプレーのおすすめは、コロニルのウォーターストップ。
こちらで革のエイジングと防水スプレーについての私の考えをお話ししています。
防水スプレーの比較はこちら☟
2021年1月ヌメ革の汚れ防止について書きました☟
使い始めの日光浴は必要?
ヌメ革は使い始めは日光浴させるといいって聞いたけど本当?
一定の効果はありますが必須ではないです。
日光浴で汚れを目立たせなくする効果がありますが、やりすぎると革の内部のオイルが抜けてしまい、ひび割れしやすくなってしまいます。
くわしくは、ヌメ革を日光浴させる方法【革職人流】|効果とデメリットをご覧ください。
オイルやクリームで色が変わる?
革に塗るオイルやクリームによっては、塗っただけで色が変わったり、日焼けを促進させたりします。
この変化をくり返して色が濃くなり重厚感を増していくのがヌメ革の良さでもあるので、ネガティブにとらえなくても大丈夫。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
シミや色変化を防ぎたいなら以下の記事をどうぞ。
ヌメ革製品/クラフト用ヌメ革が買えるお店
革製品専門店に行けば手に入りますが、近くにあるとも限らないですし、まずはネットで情報を得るのもいいですよね。
ヌメ革を使う高級ブランド
ヌメ革を使用した高級ブランドとしては、フランスのルイ・ヴィトンが有名ですね。
ヌメ革製品は、ありとあらゆるクレーム要因をはらんでいます。高級ブランドでありながら、今でもヌメ革を使用し続けるこのブランドは、様々な苦労と長年の研究を経て今の地位を確立したのでしょう。この点については畏敬の念を抱かずにはいられません。
ヌメ革を使うカジュアルなブランド
広い意味でのヌメ革を含めると、カラフルなイタリアンレザーのイルビゾンテも紹介しておきたい。
他にはBREEも有名。
ヌメ革を使う日本のブランド
日本にもヌメ革を扱うブランドはたくさんあります。
他にはHERZなども有名ですね。
弊社deteでは、日本のヌメ革は使用しませんが、イタリアンレザーのナチュラルは採用しております。
楽天やAmazonでもヌメ革製品は売られています。
クラフト用ヌメ革が買えるお店
ヌメ革はレザークラフトの素材にもぴったりです。
関連記事 レザークラフト初心者さんにヌメ革をすすめる4つの理由
レザークラフトを試してみたいという入門者の方向けにご案内します。
Amazon
最近はAmazonの革の出品者が増え、使いやすくなったと感じます。
楽天
|
その他、楽天で「ヌメ革」検索するとこんな感じ☟。
財布からクラフト用まで、本当にたくさんの商品が並んでいます。
革が買えるお店、買い方の注意点についてまとめたクラフト用ヌメ革販売店〔ネットで買える〕まとめ|買い方と注意点をご覧ください。
ヌメ革は日本の文化?風土が関係?本ヌメ革とは?
ヌメ革の歴史背景と日本の風土との関係について考えてみました。
ヌメ革は実は日本オリジナル?他所の国じゃなかなか見かけない。
一昔前まで、日本でレザークラフトと言えばヌメ革。
多くの趣味人がこの革を使っていました(現在では世界中のいろいろな素材が日本のレザークラフターの手に届くようになりました)。
ヌメ革のベースになったと思われるイタリアやアメリカのタンニンなめし革は、多くの場合たっぷりと油脂を含んでいます。
使用される油脂は、こってりとした獣脂(牛など)や魚脂(イワシなどの青魚由来。タンナーの工場付近から漁港のような魚の匂いが漂っていたりも)、さっぱりとした植物油や鉱物油をブレンドして使います。
日本のようにカサカサとした質感のヌメ革は、欧米ではあまり見かけません。
これは、日本の風土が関係しているのではないかと私は考えています。
日本で油分の少ないヌメ革が浸透した理由は?
年間を通して湿度の低い地域では、革表面が乾きやすく、ひび割れが起こりやすくなります。
その為、そういった地域では、油分が少なく保湿力の弱い革は作られなくなり、油分の多い、しっとりとした革が多く残りました。
打って変わって日本では、年間を通して湿度が高いので、しっとりした革はカビの発生リスクや多湿から発生する革の匂いが要因で根付かなかった。
高い湿度が保たれるのであれば、油分で革を守る必要性は下がります。
昔は、革の油分を減らして通気性を良くすることでヌメ革を長持ちさせたのかもしれません。
今は技術が上がっているので、しっとりした革でも問題ありません。
“ヌメ革=オイルが入っていない”は間違いです!
オイルレザーと区別する為に、ヌメ革をオイルの入っていない革と表現する方がいますが、これは間違いです。
タンニンなめしにおいて、鞣し段階で脱脂した皮は、柔らかく仕上げる為に加脂の工程が必ず行われています。仕上がった革の油分濃度が比較的低く、カサッとした質感の為誤解されやすい点です。
ヌメ革についてのまとめ
ヌメ革は、日本独特のタンニンなめし革。色はベージュからキャメルで、水をよく吸い、飴色へと成長する経年変化が楽しめます。
ヌメ革はうまく扱えばとてもいい味を楽しめる革です。
その反面、扱い方が良くないと汚ればかりが目立って残念なことにもなりがち。
肝心なのは、なるべく汚さないことと日々のブラッシングですね。
ブラシについては詳しくはこちらを☟
汚れ防止には、防水スプレーを使ってクリームを塗りましょう。
美しい革のエイジングを考えた手入れについてはこちらを☟
クリームの選び方についてはこちらを☟
ヌメ革の色変化についての疑問を解消するにはこちら☟
クロムなめし革とヌメ革の違いについてはこちらで。
適切なケア用品を使ってきれいなアメ色を目指しましょう!
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