この記事では、味が出る素材として知られているタンニンなめし革(ヌメ革)のキレイなエイジングを目指すお手入れの方法をご紹介します。まず、きれいなエイジングを目指すうえで一番大切なことをお話します。
- Q革製品を上手にエイジングさせる使い方は?
- A
汚れを防いできれいに使うこと
ヌメ革は魅力的な素材ですが、使い方やお手入れ方法によっては汚れも付きやすく、シミができたり黒ずんでしまったりすることがあるからです。
では、汚れを防ぐ為にはどうすればいいでしょうか?
- Q革の汚れを防ぐお手入れ方法は?
- A
日ごろのブラッシングと防水スプレー
その答えは、革の汚れを防ぐ主な方法はブラッシングと防水スプレーを使うです。
その理由について、腹落ちする解説を載せました。
防水スプレーが苦手な方への提案も紹介しています。
ところで、「ヌメ革」というのは革の製法の一つで、植物から採った渋(タンニン)で作った革のことです。ベージュのナチュラルなヌメ革が有名です。
もっとくわしく知りたい方は、関連記事ヌメ革とはどんな革?|ヌメ革の性質、お手入れ&扱い方をご覧ください。
革の汚れを防ぐには何よりもブラッシングを第一に
きれいな経年変化のために何よりも大切なのは、日頃のブラッシングです。
ブラッシングは革を長持ちさせるためにも大切。その理由は主に2つです。
ブラッシングが汚れ予防に
ブラッシングは、革についた細かなホコリや汚れを落とすのに有効です。
もし汚れがついた状態で水に濡れたりクリームを塗ると、汚れごと革に染み込ませてしまうことになります。
きれいなエイジングを目指すなら、マメなブラッシングは不可欠です。
お掃除だけじゃない!ブラッシングの効果。革が美しく変身?
ブラッシングの効果は、汚れ落としだけではありません。
革のキメが整うため、軽い傷は目立たなくなり、革にツヤがでます。 美しく使うためにも、ブラッシングは欠かせません。
エイジングするタンニンなめし革であれば、ブラッシングしてすぐに効果を実感できるはず。
継続は力なりです。こまめにブラッシングして美しいエイジングを目指しましょう。
ブラッシングのやり方
力を入れすぎないように、そして汚れをかき出すようにブラッシングしましょう。
ブラシを持つ指先やブラシの柄が革にぶつかってしまいやすいので気を付けてください。
ブラッシングを怠ると革はどうなるか・・・
ブラッシングを行わず汚れたままにしておくと、知らず知らずのうちに汚れが革内部に入り込んでしまいます。
水に濡れた時は特に注意!水が汚れを革内部まで浸透させてしまい、簡単に落とせなくなります。
万が一濡れてしまったときのお手入れ方法は、濡れた革財布の手入れ方法|保存版をご覧ください。
また、汗に含まれる老廃物や塩分も革に悪影響を及ぼします。手に触れて使う機会が多い財布やブックカバーなどは、特に念入りにブラッシングで汚れを落としてあげましょう。
良質な油脂が使われたヌメ革なら、汚れさえ付かなければ自然といい感じにエイジングしていきます。
革製品用ブラシの選び方
ブラシにはいろいろ種類があって、どれを使ったらいいのか迷ってしまう方も多いと思います。
財布やバッグ用だったら使いやすいのはエム・モゥブレィのプロブラシ。
プロブラシより少しやわらかめの馬毛ブラシを使ってもいいでしょう。
ブラシを選ぶときに気にしていただきたいのは毛の種類。
硬い毛の方が弾力があるため、しぶとい汚れも掻き出すことができます。
その反面、革に刷毛跡やキズが残ってしまうリスクも✖
逆に、柔らかい毛のブラシは、繊細なキメの細かい繊細な革との相性が良く、革を傷つけることなくブラッシングができます。
化繊毛のブラシはバランスが良く、デリケートな革製品にも使えるので一つ持っておくといいです。
ブラシについてより詳しい説明は、革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。をご覧ください。
きれいなエイジングの為には防水スプレーが必要?
結論を言うと、濡れやすい製品や汚れやすい製品には防水スプレーを推奨します。
防水スプレーをすすめる理由
理由はずばり、防水スプレーを使えば水シミや汚れを防いできれいなエイジングを目指せるからです。
防水スプレーは水だけでなく汚れも寄せ付けにくくしてくれます。
防水スプレーをヌメ革に使うかどうかは議論になるところですが、私の考えは推奨です。
くわしくは、防水スプレーはヌメ革に悪影響?使った方がいい理由をご覧ください。
特に防水スプレーを使って欲しいヌメ革製品
- シザーケース
- バッグ
- 靴
など。
水濡れや汚れがつきやすい製品は防水スプレー推奨です。
対して、普通の財布や名刺入れなど、財布やポケット内で持ち運ぶ製品は水濡れのリスクは高くありません。その代わり、手汗等の汚れが付きやすいです。
防水スプレーは汚れも防いでくれます。
汚れを気にされる場合は、財布など小物にも防水スプレーを使うことをおすすめします。
おすすめ防水スプレー
フッ素タイプの防水スプレーです。革に浸透して初めて効果を発揮する為、革用のクリームやオイルなどによるケアを行う前に塗布してください。
防水スプレーの選び方について詳しくは、コロニルの革用防水スプレー4種類を比較|迷ったらウォーターストップで間違いなしをご覧ください。
デメリット:防水スプレーでエイジングが止まる!?
防水スプレーには、紫外線から革を守る成分が含まれています。
この成分が紫外線のダメージ(肌でいうサンバーン)から守ってくれるのですが、同時に害の少ない日焼け(肌でいうサンタン)も防いでしまいます。
なので、ヌメ革特有の色変化を強調したいのであれば、防水スプレーは使わないという選択肢もあり得ます。
その分汚れは付きやすくなりますので、どちらを優先するかですね。
防水スプレーをかけても完全に色変化が止まるわけではないので、デテログの本音を言えば、エイジングを重視する方にも防水スプレーをおすすめしたいところ。とはいえ、好みの問題なので、どう使うかはユーザーの自由です。
次の章では、防水スプレー以外の選択肢についてお話します。
防水スプレーを使いたくない方へ。オイルではっ水効果を
エイジング止めたくないし防水スプレーは苦手だ
そんな方には、コロニルの『オーガニック プロテクト&ケア』がおすすめできるかも。
オーガニックプロテクト&ケア、平たく言うとミスト状のオリーブオイルスプレー。ムラなくオリーブオイルを塗布することができます。
オイルは撥水性があり、紹介するオーガニックプロテクト&ケアも同様に水を弾いてくれます。さらに、オイルなのでそのものが革の柔化を助けてくれるため、別にクリームを塗る必要がなくなります。
さらに、日焼けを促進させる、エイジング派にうれしい副作用があるかもしれません。
私の実験によると、オリーブオイルはヌメ革のエイジングを加速させます。
次の写真は、同じ革に様々なクリームやオイルを塗って日焼けさせたときの変化を比べたものです。
最も日焼けしてブラウンに近づいたのがオリーブオイルを塗った部分でした。
詳しくは、ヌメ革日焼け実験|オイルやクリームで日焼けは早まる?をご覧ください。
革の手入れにクリームやオイルは必要?
革用のクリームは状況に応じて適切に使用することをおすすめします。
使うタイミング
イタリアンレザーなどオイリーな革の場合、新品時は塗らなくていい場合もあります。
ヌメ革や栃木レザーはイタリアンレザーの多くの革と比べ、油分が少ない革が多いです。最初からカサっとした革は、使う前に使ってあげた方がいいかもしれません。
この判断は一般の方にはむずかしいと思うので、最初は購入したお店のスタンスに沿って行うのがおすすめです。
しばらく使って、革表面が少し乾いてきたかなと感じたら、薄く塗ってください。その後、雨に濡れて油分が落ちてしまったタイミングや、定期的(数か月~半年)に一回くらい塗ってあげるといいですね。
クリームが必要な理由
革には油分が含まれていますが、使っているうちに少しずつ抜けていきます。
抜けた油分は補わなくてはいけません。
補わずに放置すると、革が硬化し、曲げたときにひび割れする原因になります。
硬化のメカニズムは、潤滑油の役割をしていた油分が抜け、力がかかった時に革の繊維が裂けてしまうことと考えられます。
おススメの革用クリーム
おすすめは3つ。
革小物モイスチャークリーム
コロンブスのプレミアムなクリーム。
天然成分を豊富にふくんだ油性クリームです。
オイルによって色が濃くなり、ムラ感ができるのが特徴。エイジング好きとしてはこれがたまらないです。
くわしくは、コロンブス革小物モイスチャークリームの使い方|色が濃くなる?をご覧ください。
エム・モゥブレィ デリケートクリーム
モイスチャークリームとは対照的に、油分が少な目のあっさりした塗り心地。お肌に付ける乳液のようにスッと革に染み込みます。
ナチュラルなヌメ革に使ってもシミになりにくく、エイジングに影響しにくいため扱いやすいクリームです。
くわしい使い方は、エム・モゥブレィ デリケートクリームは買いか?|デメリットと使い方をご覧ください。
1909シュプリームクリームデラックス
コロニルのシュプリームクリームデラックスは、デテログを通しておすすめしているクリームの一つ。
ですが、エイジングを重視するなら注意が必要です。それは、1909シュプリームクリームデラックスが日焼けを遅らせるクリームだからです。
このクリームには、防水スプレーに使われるフッ化炭素樹脂が配合されています。これを塗布すると、目に見えないレベルで革表面がツルツルになり、水を弾くようになります。だからなのかどうか不明ですが、実験したところ、防水スプレー同様に日焼けしにくくなったのが確認できました。
シュプリームクリームデラックスのくわしいレビューは1909シュプリームクリームデラックスの万能感をレビュー&使い方を、日焼けの実験については、先ほども紹介したヌメ革日焼け実験|オイルやクリームで日焼けは早まる?をご覧ください。
オイルは必要?
オイル(油分の多いケア用品)は、使いどころが難しいです。
理由ですが、塗りすぎてしまう方が多く、それによって革が柔らかくなり過ぎて型崩れしてしまうから。
革は、タンナーがそれぞれ独自の技術と配分で油分をコントロールして作り上げます。少ないと革が乾いたり柔軟性が足らなかったりしますが、逆に多すぎるとヘタってしまいます。
もし液状のオイルを塗る際は、ブラシをハケ代わりにして塗ると失敗しにくくおすすめです。くわしいやり方は、ニートフットオイルの失敗しにくい塗り方|ムラになりにくいをご覧ください。
先ほど紹介したオーガニックプロテクト&ケアは、ミストで出るから失敗しにくい革用オイルの一つと言えるでしょう。
そもそも、革のエイジングって?
一般的に言われる革のエイジングは、ヌメ革のあめ色への変化です。
ベージュのヌメ革が深い茶色になり、艶々とした独特の光沢を放ちます。
なぜ艶が出るのか?
表面の凹凸がつぶれ、平らになることで光沢が出ます。
これには、タンニンなめし革の特有の、”可塑性(かそせい)が強い”という性質が寄与しています。
固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質。塑性。
引用元 可塑性とは何? Weblio辞書
つまり、タンニンなめし革は、押しつぶされたり摩擦がかかったりすると革の表面が潰れ、それによって擦れる部分にツヤが出る仕組みです。
革ならではのうつくしいツヤに魅了されるレザーファンが多いです。
なぜ色が変わるのか?
ベージュのヌメ革が褐色に変化していく理由はいくつかありますが、美しいエイジングとされるのは、摩擦熱による焼けと、紫外線による日焼けです。
これらは、革に含まれるタンニン(渋)によるものです。
タンニンを多く含む無垢素材の家具なども、使い込むと深い色合いに変わっていきますね。それと同じ作用が革にも起こっています。
なお、ベージュ以外のヌメ革も同じように変化します。グリーンはカーキに、青は緑よりに、赤はブラウンになど。くわしくは、ヌメ革の色変化|ベージュのヌメは何色に?緑は?グレーは?をご覧ください。
革製品のエイジングを目指した手入れ方法まとめ
きれいなエイジングの為のケア方法は、何よりも汚れをためないこと!
汚れを溜めない為には、マメなブラッシングが効果的です。
そして、必要に応じて防水スプレーとクリームを。
革製品は、使いこんではじめて完成するものです。
適切なお手入れを続けて、お気に入りの革製品を少しでも永く愛していただければうれしいです。
長文お読みいただきありがとうございました。
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