オイルレザーのあれこれについて革職人が解説します。
オイルレザーって他の革と何がちがうの?
お手入れ方法は?
どんな製品に使われてるの?
などについてお話します。
オイルレザーってどんな革?
名前の通りオイルを多く含んだ革
オイルレザーは、なめした後にオイルを染み込ませた革の総称のこと。
オイルが多く入っていれば、クロムなめしであろうがタンニンなめしであろうが、全部ひっくるめてオイルレザーです。
でも、オイルが入っていない革なんてあるの?
と思ったアナタはするどい!
基本的に、革はなめす前に油脂を抜いて、仕上げにまた入れ直す工程があります。
なので、厳密に言えば油分がゼロの革は無いです。
じゃあ、オイルレザーとそうでない革の違いは何かというと、後から油分をたっぷり染み込ませた革がオイルレザーで、油分をあまり感じないさらっとした革はオイルレザーでないという曖昧な答えになります。
きちんとした定義はありませんので、上記のように覚えておけばいいかと思います。
オイルレザーの代表的な革と質感。
エルバマット、クロムエクセル、ミネルバボックスなどが代表的。
しっとりした手ざわりが特徴で、使い始めはマットな質感の場合が多いです。
通常の革よりも経年変化が早いのも特徴。
中でもタンニンなめしのオイルレザーは、経年による色変化がしやすく、素のヌメ革に比べてそのスピードが速い傾向があります。
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オイルを含ませる理由
理由はいくつかありますが、主なのは以下の3つ。
- 革を柔らかくするため
- 防水性を上げる為
- 風合いを良くするため
柔らかくするため
オイルを含ませると革は柔らかくなります。
素材として柔軟性が必要な場合に、オイルを多めに入れて柔らかくすることがあります。
オイルレザー製品の柔らかさを保つには、定期的に油分やその他の保湿成分を補ってあげる必要があります。
保湿成分を補うにはクリームを使うのが最適。こちら☟で解説しています。
防水性を上げる為
革が含んだ油が水をはじいてくれるので、ワークウェアやアウトドア向けの素材として古くから使われてきました。代表的なものがレッドウィングや昔のホーキンス。
小傷がついてもブラッシングで元に戻りやすい素材なので、ワークブーツや登山靴にも最適です。
風合いを良くするため
オイルがたっぷり入った革は、しっとりとし手ざわりと深く鈍い色になり独特の雰囲気を醸し出します。
この雰囲気にハマってしまう人が多数。
オイルレザーを選ぶメリット
オイルレザーは、他の革に比べてカジュアルな印象を与えてくれます。カチッと決めすぎな雰囲気になりにくく、休日のリラックススタイルに合わせやすい革製品と言えるでしょう。
経年変化が早いのも特徴で、オイルレザー独特のエイジングが楽しめます。
オイルレザーのデメリット
オイルレザーを扱う上で一番注意しなくてはいけないデメリットは、色落ち(移染)です。
特に、鮮やかなイタリアンレザーをはじめとした染料染めタンニンなめし革は色落ちしやすい革が多くく、注意が必要です。
関連記事 顔料を使っている革は悪い革?染料と顔料のメリットとデメリット
油分が多ければ多いほど移染しやすい傾向が強いので、オイル分の多さを謳っている革の場合は特に気をつける必要があります。
心配な方は、どれくらい色落ちするのか購入前に確認した方がいいかもしれません。
オイルレザーが合うファッション
過酷な環境で使うのに向いている反面、ラフな見た目なのでドレッシーな用途には向きません。
ワークやミリタリーとの相性はばっちり。
昨今人気の、スポーティーなカジュアルスタイルのはずしアイテムとしてもおすすめです。
オイルレザーの代表的な靴やバッグ
オイルレザーといえばレッドウィングという方も多いはず。
コードバンで有名なホーウィン社の人気素材クロムエクセルを使ったジャックパーセル。
クロムエクセルの靴は経年変化も良いです。
参考 7年履いた安藤製靴のチロリアンシューズOR1(クロムエクセル-ボルドー)の経年変化
スペインの革靴ブランドバーウィックのプレーントゥ。こちらもクロムエクセルを使っています。
参考 手染め靴Berwickタッセルローファー|買って最初の手入れ方法
ミネルバボックスのL字ファスナーミニ財布です。
ミネルバボックスはイタリアのバケッタレザーで、日本で特に人気があります。
ブライドルレザーで有名なホワイトハウスコックスの別レーベル「セトラー」のオイルヌバック二つ折り財布。
ヌバックというのは、革の表面を毛羽立たせた革で、マットからグロッシーに変化していく過程が楽しい素材です。
キプリスのオイルコードバンの二つ折り財布。コードバンもオイル多めの加工がされていればオイルレザーです。
オイルレザーの手入れ方法
オイルレザーはオイルがしみ込んだ状態で完成する革なので、オイルが抜けてしまうと不完全な状態になります。
例えばオイルレザーの靴。
オイルが抜けた状態で使ってしまうと、ひび割れの原因になります。
より詳しい革のひび割れと予防策についてはこちら☟
だからきちんとお手入れが必要です。
手入れ方法
基本的なお手入れは、ブラッシングとクリームで保湿。
クリームやオイルは塗り過ぎ注意ですが、ブラッシングは毎日してもいいくらい。
- ほこりが革の油分を吸ってしまう
- カビが生えやすくなる
- クリームを塗った時によけい汚れてしまう
デメリットだらけです。
必要な道具
ブラシのおすすめはエムモウブレイのプロブラシ(化繊)。
クリームのおすすめはシュプリームクリームデラックス。
よりオイル多めではっ水効果があるこちらのクリーム「モイスチャークリーム」も良いです。オイルのムラ感がオイルレザーの雰囲気を一層味わい深くします。
登山靴やワークブーツに使うなら、コロニルのラスティカルスプレーがいいそうです(コロニルの営業さん談)
このスプレーの主な成分は、フッ化炭素樹脂と植物性のオイル。
それぞれの効果は、防水性と、防水/柔軟/保湿です。
防水性を高めながら革に栄養を与えることができ、オイルレザーのヘビーな質感も守る。
理にかなっていると思います。
革が乾いてしまっている場合は、動物油100%のニートフットオイルを使ってもいいです。
オイルレザーも水洗いできる!?
水洗いは可能です。
注意点もありますので、別記事を読みながら行ってください。
オイルレザーのブーツを水洗いする方法を紹介しました。
オイルレザーについてのまとめ
オイルレザーは、なめした後にオイルを染み込ませた革の総称のことです。
とても広い意味での言葉なので、一口にオイルレザーと言っても性質や見た目は千差万別です。オイルレザーだからこうだとか、オイルレザーだからあのブランドと同じ素材だとか、先入観を持たずに判断する必要があります。
一緒に語られることが多いヌメ革についてはこちら☟で書いています。
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