ヌメ革の財布や名刺入れのお手入れに使うクリームは何を選べばいいの?
いろいろあるけど何が違うの?
こんな質問にお答えする内容です。
財布だけでなく手帳、ブックカバー、キーケース、スマホケースなど、タンニンなめし革製品全般のお手入れに応用できます。
上の写真に写っているのが記事作成時に手元にあったケア用品(2023年時点ではもっと増えています)。
いろいろ自腹切って試している革職人がご紹介します。
早速結論を書いてしまいます。ヌメ革の財布用におすすめのクリームは3パターン。
- 迷ったらこれ→シュプリームクリームデラックス
- 清潔に使いたい→コロニルのデリケートクリーム
- テカテカにしたい→アニリンカーフクリーム
ここまで読めばこの記事の要点はわかったも同然です。
ここから先は、これらをおすすめする理由について詳しく説明します。
ヌメ革財布用クリーム|おススメ3選と選び方
各クリームの説明をする前に、この結果を導いた実験についてお話します。
下の画像をみてください。
下記のクリームをイタリアンレザートイアーノに塗ったらどうなるかを検証しました。
- エムモウブレイのデリケートクリーム
- コロニルのデリケートクリーム
- サフィールのデリケートクリーム(今回は紹介しない)
- コロニルのシュプリームクリームデラックス
- エムモウブレイのステインリムーバー(今回は紹介しない)
- 誠和のレザークリンケア(今回は紹介しない)
- エムモウブレイのアニリンカーフクリーム
※極端に厚く塗ったテストの為、通常より強く影響が出ています。
あなたはどのクリームの結果がいいと思いましたか?
ちなみに、この緑の革はトイアーノというものです。使っていくうちに色変化が起こり、革らしい味わいが楽しめるイタリアンレザーです。
このようなヌメ革(タンニンなめしのイタリアンレザーや栃木レザー)の財布に使うなら?という問いへの私の答えが、先にも書いた以下内容です。
- 迷ったらこれ→シュプリームクリームデラックス
- 清潔に使いたい→コロニルのデリケートクリーム
- テカテカにしたい→アニリンカーフクリーム
革用クリームに何を求めるかで違ってきます。
迷ったらコレ。水シミも防げる万能型→コロニルのシュプリームクリームデラックス
シュプリームクリームデラックスは、防水効果をもたらすフッ化炭素樹脂が入ったクリームですが、実は防水性以外のステータスもバランス良く優秀。
コロニルのシュプリームクリームデラックス
成分表示を見ると、
- シーダーウッドオイル
- ラノリン
- フッ化炭素樹脂
となっています。
- フッ化炭素樹脂で防水効果あり
- シダーウッドオイルの素敵な香り
- 有機溶剤不使用
- ラノリン配合で保湿効果あり
フッ化炭素樹脂の防水効果
クリームなのに、防水スプレーに使用される防水成分が配合されています。
完全な防水性能はありませんが、入っているかどうかで安心感に差が出ます。
防水成分についてはこちらで詳しくお話ししています。
お時間のある時にどうぞ。
シダーウッドオイルの香りでケアを嗜む
エッセンシャルオイルや香水の原料としても使われるシダーウッドオイルが主成分なわけですから、香りはもちろん素敵。
私が知る限り、香りまで楽しめる革クリームというのはこれだけです。
有機溶剤不使用
有機溶剤は汚れを落とすと同時に染料を落とし、油分も取り去ります。
タンニン鞣し革だと多用はキケンです。
有機溶剤不使用のシュプリームクリームデラックスなら革に優しくて安心。
ラノリン配合で保湿効果あり
ラノリンは化粧品にも使われる保湿成分です。
革を保湿してひび割れを防ぎます。
革のひび割れについては☟で詳しく説明しています。
シュプリームクリームデラックスの気になる点
気になる点は、しいて言えばですが、ロウ成分が多めですこしツヤが出るところ。
ツヤ歓迎という方なら何も問題は無いです。
コロニルのシュプリームクリームデラックスは、加脂と保湿が出来て防水効果も期待できるクリーム。
香りがいいからお手入れのモチベーションも上がりそう。
汚れ落とし効果はないです。
財布をいつも清潔に使いたいアナタにおすすめ。コロニルのデリケートクリーム
こちらもエムモウブレイと同じデリケートクリームですが、違いは、メーカーが汚れ落とし効果を謳っているところ。
おすすめする理由は、
保湿効果もアリ。
では、どうしてコロニルのデリケートクリームが革の汚れ落としにいいかというと、界面活性剤と有機溶剤を使っているから。
界面活性剤と有機溶剤で財布の汚れ落とし効果が高い。
右上がこのコロニルのデリケートクリーム。
このクリームに含まれる有機溶剤は油汚れを浮かせて落とせるので有効です。逆に、水分でヌメ革の汚れを落とそうとすると、落とした汚れが革にしみ込んで広がってしまい逆効果。
界面活性剤は、せっけんや洗剤の主成分。汚れと革の間に滑り込んで汚れを剥がしてくれます。
財布は手に触れる機会が多いですから、汗やホコリ汚れにも有効なところはポイントです。
有機溶剤が入ったクリームは革に良くないのでは?
汚れ落としという目的で使うなら有効です。ですが色落ちするので、頻繁に使ったり使い過ぎはNG。
コロニルのデリケートクリームは保湿成分には期待できる
プルプルのゲル状なのは、保湿作用を持つロウ成分によるもの。
メーカーにより、この保湿の為にラノリン(ウール由来)を使ったり、小麦プロテインを使ったりとさまざまです。
このデリケートクリームは革に浸透しやすい状態になっており、保湿成分が革に一定の水分を保つ効果があります。
コロニルのデリケートクリームはヌメ革の日常使いには向かないかも
コロニルのデリケートクリームはヌメ革の日常使いに向かないと考える理由は以下の通り。
- 洗浄成分が少し強い
- 油分が含まれていない
洗浄成分が強いということは、必要な油分や表面の塗装なども取り去ってしまいます。
それを補う油分が欲しい所ですが、このクリームには油分はあまり含まれていないようです。
コロニルのデリケートクリームは、有機溶剤多めで油分が含まれていないので日常使い向きというよりもたまに掃除で使いたい感じ。
とはいえ、汚れ落としに特化しつつ保湿もできるクリームという存在は貴重。
テカテカにしたい→アニリンカーフクリーム
靴に使えて小物にも使えるクリームですが、ここまで紹介してきたデリケートクリームとは少し雰囲気が違うクリームです。どちらかと言えば乳化性クリームに近いものかもしれません。
エムモウブレイのアニリンカーフクリーム
このクリームのポイントは以下の通り
- 油脂とロウがこってり目
- 紹介した中で一番ツヤが出る
- 汚れ落とし効果あり
- あまりデリケートな革にはおすすめできない
アニリンカーフクリームは、革のツヤを引き出すこってり目のクリーム
指で触ると少しベタっとする印象。
ロウ成分が多いらしく、紹介した中で一番ツヤが出るクリームでした。
コーティング力が高い為、汚れや水シミ防止に役立ちます。
ツヤで見た目が不自然になることを懸念する方もいるかもしれませんが、夜塗って翌朝には自然に馴染んでいて、ちょっと高級感が出る感じ。これはこれで悪くないです。
財布の仕上がりがベタベタすることもないので安心して使えます!
アニリンカーフクリームは汚れ落とし効果あり
有機溶剤で汚れを浮かせて落とすクリームです。
コロニルのデリケートクリームの次くらいに油性マジックの除去能力がある印象でした。
あまりデリケートな革にはおすすめできない
水分の多いデリケートクリームに比べ、このクリームは成分の効果がガツンと出る。
塗りムラができるとそこだけ色が変わったりツヤが出すぎてしまうかもしれません。
ヌメ革以外でも注意が必要で、私は以前このクリームをカーフの靴に塗ったところ、部分的に塗り過ぎてしまって、その部分だけ少し白っぽくまだらになってしまったことがあります。
トイアーノのブックカバーにアニリンカーフクリームを塗ってみた
ナチュラルな革の状態とは少し違っていますが、これはこれでかっこいいです!
アニリンカーフクリームは、加脂効果があって汚れ落としも期待できるクリーム。
ツヤが出るので、財布の味変的使い方もできます。
保湿成分はあまり入っていないがコーティングで革を守る。
ムラなく伸ばして使いましょう。
サフィールのデリケートクリームは?
おすすめできるクリームですが、シュプリームクリームデラックスと似た成分で、なおかつシュプリームクリームデラックスの方が私個人がおすすめできるので、今回はサフィールは省きました。
こちらで記事にしています。
エムモウブレイのデリケートクリームは?
以前はこのクリームをおすすめしていましたし他の革に使うにはお勧めなのですが、一部例外があるかも。
写真左上の部分がモウブレイのデリケートクリーム。白っぽくなっているのがわかりますか?
これは初めて経験しました。めったに起こることではないのと、今回は極端に多く塗ったテストだからという点はご理解ください。
トイアーノはすっぴんに近いヌメ革。他の革なら起こらない現象かもしれません。
モウブレイのデリケートクリームは、カーフの靴などに使う分には非常に優秀です。最高と言ってもいいくらい。
ですが、念のためヌメ革に使うのは今後避けようかと思います。
2020年3月時点での考えでは、極端に塗り過ぎなければ全く問題ないと考えています。
今後もテストは続けていくので、その過程で何かわかったら発信していく予定です。
詳しくは、エム・モゥブレィ デリケートクリームは買いか?|デメリットと使い方で。
財布に使える各クリームの特徴まとめ!
タイプごとに分けて財布用のおすすめクリームを紹介しました。
何度も書きましたが、この記事で言いたいことは以下の通り。
- 迷ったらこれ→シュプリームクリームデラックス
- 清潔に使いたい→コロニルのデリケートクリーム
- テカテカにしたい→アニリンカーフクリーム
読んだけどどれにするか決めかねてる
という方は・・・
コロニルのシュプリームクリームデラックス
がいいと思います。香りも良いので続けやすくておすすめです。
本編には登場しませんでしたが、ブライドルレザーに使うなら[コロンブス] 革小物用 ブライドルレザークリームがいいです。
この記事をきっかけにして革に触れる楽しさや奥深さを知ってもらえたらうれしいです。
長文お読みいただきありがとうございました。
記事の感想、リクエストなどコメントでお待ちしております。
コメント
棒線が商品名に入っていますが勧めたが良くなかったから消したという事ですか?
となるとコロニルデリケートクリームがオススメとなりますが有機溶剤入りは良く無いのでは?
消したのではなくAmazonのリンクとプラグインの相性で打ち消し線が入ってしまうことがあるようです。
私個人の意見ですが、迷ったらシュプリームクリームデラックスをおすすめします。