オイルを塗るとヌメ革の色変化が早まるよ。
という話を聞いたことがあります。これって本当でしょうか?
長い期間をかけて実験してみました。
先に結論を言ってしまうと、たしかに差は出たけれど、さほど大きな変化ではないという結果になりました。
意外な結果ですこし残念だったのが本音ですが、別な発見がありました。
それについて掘り下げて解説してみます。
なお、ヌメ革って何と気になった方は、ヌメ革とはどんな革?|お手入れ&扱い方をご覧ください。
ヌメ革の色変化について詳しくは、ヌメ革の色変化|ベージュのヌメは何色に?緑は?グレーは?をご覧ください。
- オイルを塗るとヌメ革の色変化は進む?
- クリームの種類でエイジングに変化はある?
- 防水スプレーはヌメ革の焼け防止になる?
ヌメ革日焼け実験の方法
まず、どんな実験をしたのか?について。
実験の内容
細長く切ったヌメ革(イタリアンレザーのマイネ『キャメル』)を区分けし、それぞれに各クリームを塗ります。
革は日当たりのいい窓辺に置き、約一か月ごとに各クリームを塗り足します。
クリームやオイルを塗る前には軽くブラッシングしています。
オイルやクリームは、種類によりますが、塗ってすぐは色が濃い状態が続きます。
ですが多くの場合、2,3日かけてすこしずつ内部に浸透し、元に戻っていくイメージです。
ヌメ革日焼け実験結果〔5か月後〕
5か月実験を続けたらどうなったでしょうか。
こちらが結果です。
最初にも書いた通りですが、それぞれの差があまり大きくないという結果に。つまり、
というのがこの記事の結論。
でもこれで終わりじゃなくて、色変化こそ大きくないものの、それぞれのクリームやオイルで結果に差が出ました。
それについて掘り下げます。
一番焼けたのは?
ヌメ革は、なめし方にもよりますが、基本的に焼けると赤かっ色(赤茶色)に近づきます。
関連記事 ヌメ革の色変化|ベージュのヌメは何色に?緑は?グレーは?
最も色が濃く(赤く)なったのはオリーブオイルでした。
次がニートフットオイル、その次がラナパーです。
一番光沢が出たのは?
くり返しの塗布とブラッシングで最もツヤが出たのはコロニルのシュプリームクリームデラックス。
次に強いツヤに仕上がったのはラナパーです。
一番マット(ツヤ無し)だったのは?
オリーブオイルが一番マットな仕上がりになりました。
防水スプレーとニートフットオイルもマットでしたが、オリーブオイルに比べるとすこしだけツヤが出ているように見えました。
クリームはツヤが出たのに対し、オイルはどちらもマットな結果です。どうしてこの差が出るかというと、これは油分の性質のちがい。
ある種のオイルは革に塗った時に表層に残る性質がありますが、またある種のオイルは内部まで素早く浸透します。
今回のクリームには、表層に残る性質があるオイルが含まれていて、そのオイルの作用+その上をブラッシングしたことによりツヤが増しました。
対してオイル2種はすぐに浸透する性質の油分だったので、表層に残らず、見た目のツヤはあまり変わらなかった結果になりました。
次は、各オイル/クリームごとに見ていきましょう。
防水スプレーの日焼け
防水スプレーをかけたところはあまり色変化がなく、光沢も強くなってはいません。
実験前の推測では、すっぴんよりも明るく(焼けが抑えられる)と考えていましたが、結果はすっぴん同等(すこし焼けている)でした。
防水スプレーのUVカット効果は完璧ではないようです。
過去の防水スプレーの結果では、防水スプレーをかけた方がすっぴんよりも色変化しにくかったケースもあります。
関連記事 amazon激安防水スプレー(LOCTITE 超強力防水スプレー)とCollonilの日焼け比較
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レビュー記事 コロニルの革用防水スプレー4種類を比較|迷ったらウォーターストップで間違いなし
ラナパーの日焼け
ラナパーにはロウ成分が多く含まれており、ブラッシングによって光沢が出ました。
すっぴんに比べると若干日焼けも進みましたが、自然な仕上がりで好感が持てます。
有名ゆえなのか賛否両論あるクリームとしても知られていますが、やはりバランスよく仕上がった優秀なクリームだとデテログは考えます。
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関連記事 「ラナパーは革に悪い」は本当か?|デメリットとメリットを解説
コロニルシュプリームクリームデラックス
ラナパーやオイルに比べて色変化が少なく仕上がりました。
これは、シュプリームクリームデラックスに含まれるフッ化炭素の効果なのではないかと推測しています。
この根拠として、フッ化炭素はUVカット効果がある防水スプレーの主成分であることから、この成分が日焼け防止に役立っているものと考えました。
光の加減によってですが、角度によっては少し白っぽくも見えます。
これはニュートラル(色なし)のクリームでまれに起こる現象で、他社製品でも起きることを確認しています。
関連記事 革財布にクリームを塗ったら白く残ってしまった。対処法は?
原因は塗りすぎです。今回の実験では、通常なら落ちてしまう表層のクリームが落ちない(通常の使用状況とちがうから)ことに起因したものと考えています。
※白っぽくなるのは気温が低い場合に発生しやすく、温かい季節になると消えることがあります。
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関連記事 1909シュプリームクリームデラックスの万能感をレビュー&使い方
オリーブオイルの日焼け
一番マット&日焼けが進んだのがオリーブオイル。
油脂は、種類によって革表面に残って油膜を張るものと、内部に浸透するものとがあります。
オリーブオイルは後者。内部まで浸透するオイルです。
なので、オリーブオイルは革をやわらかくする効果が高いオイルだと思います。
ニートフットオイルの日焼け
オリーブオイルの次に色が濃くなり赤みを帯びていたのがニートフットオイル。
すこしだけツヤが出ている点から、オリーブオイルに比べると、多少表面に残る性質もあると推測します。
関連記事 ニートフットオイルの塗り方|おすすめは馬毛ブラシで一石二鳥の使い方
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すっぴんの日焼け
何もつけずに日光浴だけした状態。
ヌメ革は紫外線で焼けるので、当然ながら何もつけていないすっぴんの部分も焼け薄いキャメル色になっています。
その他気づいたこと
春から日焼けが加速した
春先(2月末、20℃を超えるような日が続いた)から日焼けが加速。
これを書いている3月中旬になると、目に見えて日焼けが進んでいるように思います。
紫外線の強さは春先から強くなって、5-8月ごろにピークを迎えます。
参考記事 紫外線量は5月が最大なんて言われていますが⋯やっぱり夏の方が多いんじゃない!?|院長ブログ|五本木クリニック
オイルより革のロットのちがいの方が大きかった
今回、ロット違いの2枚のヌメ革(マイネという銘柄)でテストしましたが、焼け方に大きな違いが出ました。
実験前は、片方がすこし濃いめだなくらいの差でしたが、結果、一枚はキャメルの色を保っていますが、もう一枚は深いブラウンになりました。
同じ銘柄の革でも、ここまで大きな差が出てしまうのがタンニンなめし革(ヌメ革)の不安定さであり、おもしろさでもあると私は思います。
あなたはどう感じますか?
ヌメ革の日焼けのまとめと、おすすめのクリームなど
オイルやクリームごとの日焼けのし方のちがいについて書きました。
比較した結論は、
オイルでヌメ革の日焼けは加速するけど、それほど大きな差ではない。
です。その中で、
もっとも日焼けが進んだのはオリーブオイル、次がニートフットオイル、その次がラナパーでした。
光沢が出なかったのはオリーブオイル、もっとも強い光沢が出たのがシュプリームクリームデラックス、次がラナパーでした。
じゃあオイルもクリームもヌメ革には必要ないかというと全くそんなことはなく、柔軟性を保ってひび割れを防ぐために油分が必要です。
また、油分が入ると水がしみにくくなることから、オイルやクリームを塗ると汚れが革にしみ込むリスクが減る効果もあります。
おすすめのクリームなどについてですが、
デテログは穏やかに変化させることをすすめています。
いい味出ていても汚れたらガッカリしますよね。だからすこしずつきれいにエイジングする道を目指したい。
でも最終的には好みです笑
おすすめの商品はこれらです。
関連記事 1909シュプリームクリームデラックスの万能感をレビュー&使い方
関連記事 革小物用コンディショニングクリームの使い方とレビュー(コロンブス)
液体のオイルは扱いがむずかしいので、デテログはクリームをすすめています!
早くエイジングさせたい場合、今回使ったラナパーを使ってもいいし、もっとおすすめなのはコロンブスの革小物モイスチャークリーム。
良質な油分を含んだ油性クリームでエイジングが早まります。
関連記事 コロンブスのモイスチャークリームとコンディショニングクリーム比較
モイスチャークリームは良いですよ。個人的にも好みなアイテムです。
革のイケてるエイジングを目指したお手入れについては、革製品のお手入れ方法 ~美しいエイジング編~をご覧ください。
ヌメ革の日光浴の意味とやり方についての記事を追加しました。
関連記事 ヌメ革を日光浴させる方法【革職人流】|効果とデメリット
この記事は以上です。長文お読みいただきありがとうございました。
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