みんな革のバッグはどうやって保管してるの?
カビを防ぐ保管方法はありますか?
シーズンオフのバッグ、冠婚葬祭用のバッグなど、長い間保管する革製品もありますよね。
久しぶりに取り出した時によくあるのが、カビ、におい、型崩れなどのトラブル。
ショックですよね。。。
この記事では、そんなトラブルをできるだけ起こさない為の対策方法を紹介します。
- 革製品の保管方法
- NGな保管方法
革素材の保管についてはこちら☟の記事をご覧ください。
大切な革製品のを保管するときのポイント
まず、どの革製品でも共通の「保管時に気をつけたいポイント」についてみていきましょう。
- 湿気が大敵(カビや雑菌)
- やっかいな型くずれ
- 直射日光はできるだけ避ける
- 収納袋を使うなら通気性がいいものを
- お手入れをしてから保管する
湿気は革製品の大敵
湿度が高い環境は革製品にとってつらい場所です。
さらに高温と不潔な環境(クリーニングしていない革製品、ほこりが多い保管場所)がかけ合わされると最悪。
カビが生えやすくなる他、雑菌が繁殖してニオイの原因になることも。
クローゼットに保管する場合は、時々開け放って換気をしましょう。
真夏は時々エアコンの風を送ってあげるといいですね。
毎日使う革製品にカビが生えたという話は聞いたことがありません。
使っていない革製品があるなら、虫干しも兼ねて持ち出してあげるといいかも。気分も変わりますよ。
関連記事 革のプロが教えるカビ対策。防カビ剤はワサエースがおすすめ!
保管時の型くずれに注意|「あんこ」を入れて保管
服でもバッグでも型くずれやシワができてしまうことがあるのは同じですが、革製品は特に気を使う必要があります。
- 折れに弱い芯材が使われているかもしれないから
- クセが付きやすい革かもしれないから
革製品はお洋服のようにアイロンがけすることができません!
芯材は革を補強したり形作ったりするためのものですが、革に比べてクセが付きやすい物が多く、扱い方によっては型くずれの原因になります。
クセが付きやすい革というのは、タンニン(渋)という成分が使われた革です。
この性質によってツヤツヤのエイジングが楽しめるのですが、扱い方によっては型くずれしやすいデメリットにもなってしまいます。
関連記事 クロムなめし革とは?タンニンなめし革&ヌメ革との違い
あんこというのは、バッグなどを膨らませるための詰め物のこと。
店舗で売られているバッグも、紙やビニールなどで作ったあんこを入れていますね。
あれは、見栄えをよくするのと型くずれ防止が目的です。
あんこは、透湿性がある素材(紙、綿など)を丸めて自然にバッグが膨らむように詰めましょう。
積みかさねずに保管する方法として、区切りをつけて立てて保管する方法が有効です。この用途に山崎実業のバッグ収納スタンドが便利そう。
他ブランドなら多用途で提案しそうなところを、バッグ収納だけに全振りする山崎実業さんの安定感ほんと好き。
一つ注意点として、ぎっしり詰めて保管するのは避けましょう。すき間がないとカビのリスクが高まります。ある程度すき間を空け、通気性を確保した形で保管するのがおすすめです。
直射日光は避ける
日光が当たるところに革製品を長い間置いておくのはいいことではありません。特に真夏の日差しはキケンです。
革にダメージを与えるリスクがあり、ヌメ革は焼けてしまうし、鮮やかな革の退色も心配です。
あえてヌメ革を日光浴させることもありますが、革に詳しい方むけの上級テクニックです。
関連記事 ヌメ革を日光浴させる方法【革職人流】|効果とデメリット
通気性がある袋に入れるかそのまま保管
ふくろに入れると湿気がこもりやすくなるし、袋をかけないとホコリが溜まりやすくなる。どちらがいいのかはケースバイケースなのでむずかしいところです。
袋に入れるなら、不織布製か、麻か綿でできた布袋がおすすめ。
湿気を通しながらホコリがかかるのを防ぐことができます。
基本のお手入れをしてから保管する
長期間使わない場合は、中身を全部出して、簡単なお手入れをしましょう。
お手入れしないで使っていると、汚れがつきやすかったりひび割れが起きやすくなったりします。くわしくは、革製品はどうして手入れ(革用クリームとブラッシング)が必要?その理由でお話ししています。
お手入れ方法は、多くの革に対応する最低限のお手入れの〈ブラッシング⇒クリーム⇒乾拭き〉をしておけばOKです。
- ブラシは馬毛ブラシか化繊のプロブラシ
- クリームはシュプリームクリームデラックスかコンディショニングクリーム
このあたりが万能でおすすめです。
⇩の記事にあるお手入れ方法はブックカバー用として紹介していますが、財布やバッグも同様の方法でOK。
道具について詳しくは下記でレビューしています。
関連記事 1909シュプリームクリームデラックスの万能感をレビュー&使い方
関連記事 革小物用コンディショニングクリームの使い方とレビュー(コロンブス)
関連記事 革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。
使わない革製品の保管方法|種類別
種類別に分けて解説します。
柔らかな革のバッグ
紙や布を丸めた詰め物を入れて型くずれを防ぎます。
ショルダーバッグはフックなどに吊るして保管。
手に持ったり腕を通して使う持ち手が短いバッグは、平らなところに置いて保管します。
やわらかいバッグであっても、畳んで保管するのはNG。
クセがついたりひび割れの原因になります。
底が平らなカチッとしたバッグ
紙や布を丸めた詰め物を入れ、平らなところに置いて保管しましょう。
財布、クラッチバッグ、手帳その他革小物
不織布、紙、布などの袋に入れて保管しましょう。引き出しに入れておく場合は、他の物がぶつかったり重なったりしないように置き方を工夫しましょう。
衣装ケースのような通気性が低いところはなるべく避けましょう。
手帳、ブックカバー
基本的に財布と同様です。
本棚に並べて保管すると見た目が美しいのですが、通気性の面で不安があります。
長期間使わない場合は、本からカバーを外し、不織布などの袋に入れて通気性の良いところで保管することをおすすめします。
ベルト
使った後は必ずパンツから外して保管しましょう。
夏場は特に、革のベルトも汗を吸っています。そのままにしてしまうと、ニオイやカビの原因になります。
外したベルトはフックやハンガーにバックルをかけて吊るして保管しましょう。
専用のハンガーも売られています。
通気性がよく、革に余計な負担がかからないので革にやさしい保管方法です。
本当に厳密なことをいえば、着けている時と同じくらいの大きさに自然に巻いて保管するのが一番。
でもそれだと場所を取るので現実的にはむずかしい。なので吊るして保管するのがベターという判断です。
小さく巻いて保管するのはやめましょう。
クセがついてしまい、革に余計なストレスをかけてしまうことになります。
革靴
保管前のお手入れが大切です。
ブラッシングやクリーナーで汚れを落とし、デリケートクリームやオイルを入れましょう。入り組んだ部分もしっかりブラッシングして汚れをかき出します。
鏡面に磨いている場合は、リムーバーを使ってワックスを落とし、デリケートクリームを塗っておきましょう。
内側もきれいにしておきたいところ。
保管場所ですが、扉のない棚に置くのがベストです。
扉付きの下駄箱の場合は、時々空気を入れ替えてあげるなど、換気に気を配りましょう。
できればシューツリーを入れて下駄箱で保管します。
買った時についていた靴箱に入れて保管するのは避けてください。
わさび由来の防カビ剤ワサエースは靴の中に放り込んで使えて、革靴と相性がいいグッズです。
シザーケース
クリーニングとお手入れが特に大切。
毛くずをしっかりとかき出し、風通しの良い日かげで干してから、不織布や布の袋に入れて風通しのいところで保管してください。
使い方によっては、髪用のワックスでべたべたになっているかもしれません。
そんな時は革製品用クリームの油分で落とすか、革靴用のリムーバーを使ってふき取って仕上げにデリケートクリームで保湿してから保管してください。
関連記事 革製品の脂汚れ落とし方法に詳しくなったので紹介する
保管前のお手入れに便利なクリームやブラシまとめ
ブラシ
汚れ落としから仕上げブラッシングまで、革製品を持つなら一家に一つ(革靴があるなら2個以上)もっておきたいです。
いろいろ種類がありますが、馬毛ブラシが万能。
くわしく知りたい方は、革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。をご覧ください。
クリーム
保湿目的のクリームも必要です。
きちんとクリームを塗っておけば、ひび割れたり、革が乾燥して見た目が悪くなるリスクを小さくすることができます。
革小物でも靴でも使える万能クリームなら、コロニルのシュプリームクリームデラックス。
関連記事 1909シュプリームクリームデラックスの万能感をレビュー&使い方
財布や手帳などに使うなら、コロンブスのコンディショニングクリームをおすすめします。
関連記事 革小物用コンディショニングクリームの使い方とレビュー(コロンブス)
カビ予防グッズ
革製品のカビを防ぐには、換気と高温多湿を避けることと清潔に保つことが大切とお話しました。
予防グッズを使えば、発生しにくい環境にすることもできてさらに効果的です。
うちのアトリエで使っているのは、ワサエースという防カビ剤。
わさびの抗菌作用を利用してカビの発生を抑えます。
くわしくは、革のプロが教えるカビ対策。防カビ剤はワサエースがおすすめ!で解説しています。
合皮/人工皮革のバッグ、財布、ベルトなどの保管方法
合皮製品の保管時のリスクは、なんといっても加水分解です。
物質と水が反応して物質の性質が変わってしまう現象のこと。
加水分解によって、合皮表層が剥離してしまったり、表面の塗装がベタベタになってしまうことがあります。
加水分解してベタベタになった合皮のベルト。
プラスチックやナイロン製品も加水分解します。この写真に写っているのは、アウトドアブランドの防水透湿ジャケットの裏地です。
合皮やナイロン製品、スニーカーなどでは避けられない劣化です。
加水分解を防ぐ保管方法
加水分解の原因はなんといっても水分。つまり湿気です。
湿気にさらされないように、革製品の場合同様、部屋の湿度に気をつける(夏場はエアコンをかける等)、定期的に換気をするなどに気を配りましょう。
加水分解してしまったら…
アルコールや重曹を溶かした水で拭き取ることでべたつきをやわらげることができます。
ですが、これはその場しのぎの対策で、根本的な解決にはなりません。
すぐにまたベタベタになってしまうことがあります。
合皮製品は消耗品。傷んだら買い替えることが一番の解決策になります。
【注意】やってはいけない保管方法
除湿剤に注意!革に塩化カルシウムはNGです。
湿気は革の天敵という話をしましたが、除湿剤には気をつけましょう。
革製品に使ってもいい除湿剤と、使ってはいけない除湿剤とがあります。
〇シリカゲル
✖塩化カルシウム入り除湿剤
塩化カルシウムが入った除湿剤ってどんなもの?
昔からある水が溜まるタイプです。
ドライペットや水とりぞうさんなどが代表的な商品です。
商品説明にも革製品の変色・変質のおそれがあると書かれています。
床のシミ、衣類・皮製品の変色・変質、金属のサビのおそれがある。
引用元 ドライペットスキット-Amazon.co.jp
塩化カルシウムがつくとどうなるの?
塩化カルシウムを溶かした水を革につけると、革は縮んでしまいます。
ゼッタイに近づけないでくださいね。
関連記事 【注意喚起】革の近くで湿気とり(塩化カルシウム)を使うの禁止!すすめない理由
シリカゲルの除湿剤は使ってもOKです。
革のハンドバッグを吊るして保管しない
ハンドルがしっかりしたタイプのバッグ(ハンドバッグに多い)は、フックなどにかけて保管するのはやめましょう。変形してしまいます。
風が通らない場所に置いたり、ビニール袋に入れないで!
革製品は通気性・透湿性がない環境で保管するのはNGです。
ビニール袋に入れて長期間保管してはいけません。
前にも書きましたが、不織布の袋か、綿や麻の袋に入れて保管するのことをおすすめします。
外の物置きはダメ
物置は湿気がこもりやすく、土埃などの汚れも溜まりやすい環境です。
箱に入れて革靴を物置に入れておくのも危険です。
濡れたまましまわない
くつでもバッグでも、必ず乾かしてから収納しましょう。革製品を濡れたままにしておくと、カビや型くずれのリスクがあります。
タオルなどで水気を取って風通しの良い日かげで干してください。
この時、ドライヤーや暖房の近くで乾かすのは厳禁です。
詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事 濡れた革財布の手入れ方法|保存版
関連記事 濡れた革製品にドライヤーを使ってはいけない理由は一つ
まとめ
大切な革製品を保管する方法について解説しました。
- 湿気が大敵(カビや雑菌)
- やっかいな型くずれ
- 直射日光はできるだけ避ける
- 収納袋を使うなら通気性がいいものを
- お手入れをしてから保管する
特に大切なのが、湿気対策と型くずれ予防です。
風通しの良いところに保管するほか、ほこりがかからないように袋に入れる時は通気性がいい袋に入れてください。具体的には不織布や綿、麻の袋がおすすめ。
型くずれを防ぐため、あんこを詰め、重ねたり畳んだりせずに使うときの形のまま保管しましょう。
悪い保管方法をしてしまうと、久々に使おうと思った時にショックを受けることになるかもしれません。そうならないように、適切な方法で革製品を扱っていただけるとうれしいです。
長文お読みいただきありがとうございました。
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