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【注意喚起】革の近くで湿気とり(塩化カルシウム除湿剤)を使うの禁止!その理由

【注意喚起】革の近くで湿気とり(塩化カルシウム)を使うの禁止!すすめない理由 革製品のお手入れ方法

当記事はプロモーションをふくみます。

革製品や靴の天敵はカビ。カビを防ぐには湿度をコントロールするのが一番です。

湿気コントロールに市販の除湿剤を使う方がいると思いますが、使い方には注意が必要です。

クローゼットや下駄箱でよく使われる定番の湿気取りが革に悪影響をあたえることがあるからです。

こんな方に向けた内容です

どんな影響があるの?

 
 

どんな時に起こるの?

湿気を下げるほかの方法は?

などについてお話します。

この記事で伝えたい結論はこちら↓

塩化カルシウムの湿気とりを革に近づけちゃだめ。シリカゲルの除湿剤はOK。

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それでは一緒に勉強しましょう。

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革職人の経験を活かし、趣味のレザークラフターや革製品のトラブルに悩む方に役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

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湿気とり(塩化カルシウム除湿剤)の近くに革を置くとどうなる?

結論を書くと、最悪の場合湿気とり内の水があふれ、革に深刻なダメージを与えてしまうことがあります。

ダメージの原因は湿気とりに使われる塩化カルシウム。

塩化カルシウムと水が革に染みこむと革が縮み、硬くなる

最初に、塩化カルシウムが革に染みこむとどうなるかを見ていきましょう。

ざっくりまとめると、ある革は変形して引き攣れができ、またある革はエンドレスびしょ濡れ地獄(記事後半でくわしく)に。

表面の模様が変わっているだけでなく、変形してゆがみが生じています。硬くなって弾力もなくなりました。

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こうなったら修復はできないよ。

コラム:床にバッグを置いたら変形したケース

バッグを床に置いて食事し、帰り際バッグを見たら変形していたケースが報告されています。専門機関が調べたところ、塩化カルシウムが付着していたそうです。

持ち主は思い当たるふしがありません。どこで付いたのでしょうか?

その答えは床を濡らしていた雪解け水。雪を融かすために撒かれた塩化カルシウム(※)をふくんだ水が誰かの靴裏に付着していて、それがバッグについてしまったようです。

※冬の時期、雪を溶かす目的で、公道や個人の敷地内に塩化カルシウムがまかれていることがあります。多いのは雪国ですが、雪が降ると関東平野部でも使われることがあります。

湿気とりパックから水が漏れることがある?

身近なところで使われる塩化カルシウムの代表は、クローゼットなどで使われる湿気とりです。

写真はダイソーの商品。有名商品でいうとオカモト株式会社の「水とりぞうさん」やエステー株式会社の「ドライペット」があります。

主成分は塩化カルシウム
皮革製品の近くで使用しないように注意書きが

この湿気とりを革の近くで使うとどうなるか?実験してみました。湿気とりの天面に革を置いておいたらどうなるでしょうか。

高温多湿の夏の間、玄関に2か月放置しました。

結果はなんと異状なし

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中に溜まった水がこぼれない限りは問題なさそう。

じゃあ水がこぼれることはあるの?ということでさらに実験。

念のためビニール袋に入れ、逆さにして1日置いてみました。

結果、何の問題もなし。逆さにおいても溜まった水がこぼれることはありませんでした。

もっと長い期間逆さにしておくと?

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倒れてこぼれた実例があるよ。

↑のケースがどんな要因でこぼれたのかわかりませんが、こぼれる原因として考えられるのは次の4つです。

  • ちょっとずつ染み出した
  • 天面のシートをさわって変質させた
  • 上限を超えた量の水分を吸わせた
  • シートを傷つけた

白いシートは完全防水を保証するものではない

天面の白いシートは水蒸気を通しますが、逆さにしてもこぼれません。おそらく、水蒸気は通すけれど水は通さない大きさの穴が空いているシートなのでしょう。

液体の水は水素結合によっていくつかの水分子が集合している状態ですが、水蒸気は水分子がばらばらになっている状態です。この集合体と単体の大きさのちがいよって、水は通さないけれど水蒸気は通すという現象が起きます。
参考 水の科学「氷・水・水蒸気…水の三態」 水大事典 サントリーのエコ活 サントリー

ずっと逆さにしていたことにより、シートに何らかの影響(穴が広がった?)があって染み出したのではないでしょうか。

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透湿防水で有名なゴアテックスのウェアも、ずっと水につけていたり圧力をかけたりすると濡れるよ。

白いシートはさわらない

紙のフタをなぜ付けないといけないの。
タンクの上にある白いシートは、目には見えない極小さな孔が空いていてそこから湿気を吸収しています。この白いシートを手で触ると、手の油分で孔を広げ吸湿液が漏れてしまうことがあります。白いシートに直接触れないようにするため紙フタをお願いしています。

引用元 お問い合わせ | オカモト株式会社

塩化カルシウムの湿気取り天面には、紙やプラスチックのカバーが付いているはずです。捨ててしまう人がいるかもしれませんが、ちゃんと使いましょう。

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白いシートはなるべく触らないようにしよう。

湿気とりを放置するとキケン?吸いすぎ注意

上限を超えた量の水を吸うとあふれてしまうことがあります。

使用期間を超えて使用した場合、あふれてしまう事がございますので、ご注意ください。

引用元 お問い合わせ | オカモト株式会社

たいていの湿気とりには、「ココまで」の線が引かれているし、半年とか1年とか使用期限が書いてあります。

注意書きを守って正しく使いましょう。

蒸発して漏れる心配はほぼほぼない

倒していなかったと仮定して、吸った水が蒸発して漏れることはないの?

一般的な市販の湿気とり(塩化カルシウム)は、吸った水分を放出することはほとんどありません。さらに、たとえ蒸発したとしても、塩化カルシウムが揮発することもほぼほぼない。

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塩化カルシウム水溶液が蒸発して影響をおよぼす心配はいらなそうだね。

塩化カルシウムは濡れなければ安全?

塩化カルシウムが革に良くないことはわかっていただけましたね。

この現象は、塩化カルシウムが水に溶け、革に染浸みこんで初めて起きます。

革の中に浸入(浸透)して初めて、革タンパク質と反応するのであり、その結果、革は変性し収縮硬化 するのである。すなわち、濡れやすい(親水性の高い)革の場合にのみ生じる現象である。

出典 かわとはきもの No200_p01-10.indd

濡れなければ大丈夫ってことかな。

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ダメダメ!塩化カルシウムが付くだけでダメージを受けるって考えた方がいいよ。

日本は湿気大国です。塩化カルシウムが湿気を吸い、水分を帯びた塩化カルシウムが革に浸みこむことは十分に起こり得ます

なので、たとえ濡れない状況であっても、塩化カルシウムを革に近づけて置いてはいけません

結論:塩化カルシウムの湿気とりは革の近くで使わない

使用期限と水の上限を守って使えば、下駄箱やクローゼットで湿気とりを使っても大丈夫そう

とはいえ、忘れて水をあふれさせてしまうリスクがあり、そうなったら大切な革靴やバッグが台無しです。

なので、塩化カルシウムを革の近くにおくのはおススメしません。除湿したいなら別の方法を検討してください。

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塩化カルシウムトラブルに遭うのはどんな革?

結論は、どんな革でもリスクがあります。理由は、塩化カルシウムによる収縮・変形はタンパク質の変性によるものだから。

なめしの方法にかかわらず起こります。

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このあと紹介する今回の実験では変形した革とそうでない革がありましたが、革質や水溶液をつけていた時間など、さまざまな要因が絡んでの結果だと判断しています。

どんなふうに変形したのかを見る意味でも価値があると判断し、実験結果をそのまま公開します。

革の種類と塩化カルシウムの影響のちがいを検証するため、4種類の革に塩化カルシウム水溶液を載せて変化を見る実験を行いました。

実験内容と実験に使った革

湿気とり内の水を捨て、融け残った塩化カルシウムを革に載せて一晩放置します。

今回実験するのは次の4つの革。

使った革
  • エルバマット(型押し)/タンニンなめし
  • トイアーノ/タンニンなめし
  • トリヨン・クレマンス/クロムなめし
  • ミュージアムカーフ/クロムなめし
デテログ
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デリケートなイタリアンレザー2種と有名なシュリンクレザーと超高級手染め革。

トイアーノは日本のヌメ革に近い革だよ。

なめしって何?という方に向けてちょっとだけ解説を。

タンニンなめしは木から抽出したポリフェノールを使った製造方法の革で、水を吸いやすいくデリケートな革です。クロムなめしは金属の3価クロムを使うなめし方法で、水を吸いにくく状態が変化しにくい革

関連記事 タンニンなめし革とクロムなめし革のちがい

濡れやすい革といえば、 素肌感覚の革、すなわち、素上げ革やアニリン仕上げ革、植物タンニン鞣し革などが該当する。

出典 かわとはきもの No200_p01-10.indd

タンニンなめし革の方が影響出そうだね。

デテログ
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私もそう思ってたんだけど結果は意外だったよ。

結果。クロムなめし革は塩化カルシウムで収縮しやすい?

実験の翌朝。

雨の夜だったこともあり、一晩で湿気を吸い明らかに水分量が増えていました。このように嵩が増えるのが塩カルの怖いところでもあります。

水分をふき取った結果が次の写真です。

ぱっと見、一番ひどいことになっているのは右上のヌメ(トイアーノ)ですね。

ですがこれは濡れているだけ(塩カル独特の半永久濡れループ状態なので大問題ですが後ほど)なので、まずは塩化カルシウムによる変形と硬化に注目してみていきましょう。

今回お伝えしたいのは、意外にも塩化カルシウムによるダメージが大きかったのは水を吸いにくいはずのクロムなめし革2種だった事実です。

トリヨンクレマンスの場合

まずは特に顕著だった左下のトリヨンクレマンスから。フランスの高級シュリンクレザーです。

左半分に演歌カルシウム水溶液を載せたトリヨン

塩化カルシウムを載せた左側がゆがんでしまいました。

拡大。

シュリンクのシボの間にひきつったような模様が入りました。部分的にしみ込んで急激な収縮が起こったようです。

ミュージアムカーフの場合

こちらもトリヨン同様のクロムなめし革。最高級の紳士靴などに使われるイタリアの手染め革です。

左半分と、少し中央右にかけてはみ出した形で塩化カルシウムが載せられたミュージアムカーフ

朝見たら中央より右に塩化カルシウムがはみ出していました。そこから左半分にかけてふくらんだような変形が確認できます。

そしてこちら。断面から水溶液が染みこみ、そこだけえぐれたように収縮が起こっています。

エルバマットの場合

エルバマットは、油分をたっぷりとしみこませたイタリアのタンニンなめし革でありオイルレザー。油分の効果で、他のタンニンなめし革よりも水を吸いにくい傾向があります。

関連記事 イタリアンレザー『エルバマット』ってどんな革?特徴、品質、良くないところ

左半分に塩化カルシウム水溶液を載せたエルバマット

変化なし。

無。無です。

デテログ
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意外な結果…

油分で水を吸いにくいとはいえ、タンニンなめしです。しかも、顔料(※1)を使ったトリヨンや、靴に使われる(※2)ミュージアムカーフよりも影響が出にくいとは意外も意外。

※1一般に染料染めの革より顔料塗装した革の方が水を吸いにくい
※2一般的に靴用革は水や汚れに強い

関連記事 顔料を使っている革は悪い革?染料と顔料のメリットとデメリット

関連記事 オイルレザーってどんな革?手入れと扱い方の注意点

ヌメ(トイアーノ)の場合

色が濃くなってむざんな状態ですが、変形や硬化は確認できません

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ふしぎ。本当にふしぎ。

濡れているだけなら乾けば元通りになるよね。

デテログ
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そうなってくれればいいんだけど…最悪ずっとこのままかも。

塩化カルシウムは除湿効果がある。つまり、空気中の湿気を吸って留める効果があるということです。

つまり、内部まで浸透した塩化カルシウムを排出できない限り、この革はずっと濡れた状態のままかもしれません

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どうなるのかしばらく見守るつもりだよ。

タンニンなめし革は塩化カルシウムで収縮・変形しない?

ヌメ革は塩化カルシウムがついても平気ってことかな?

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そうじゃないよ。今回はたまたまそうなったけど、革はどれも変形するリスクがあるんだ。

今回このような結果でしたが、タンニンなめし革で変形が起きない保証はありません。

むしろ、水を吸いやすいタンニンなめし革こそ塩化カルシウムトラブルが起きやすいという声もある。

濡れやすい革といえば、素肌感覚の革、すなわち、素上げ革やアニリン仕上げ革、植物タンニン鞣し革などが該当する。革製品でいえば革らしい革、高級素材を用いた製品が被害を受けやすく、これらは、特に要注意ということになる

出典 かわとはきもの No200_p01-10.indd

たとえどんな革であっても、塩化カルシウムの除湿剤を近くに置くと危険です。

革に使える除湿剤はシリカゲル

どうしても革製品の近くで湿気とりを使う必要があるのなら、シリカゲル製の除湿剤を使いましょう。

雨で靴が濡れた時、私はくつ用ドライペットで乾かしています。

くつ用ドライペットは塩化カルシウムを使っていないから革靴にも安心。そして紙やタオルを詰めるより早く乾き、くり返し使えて経済的です。

湿気を吸って効果がなくなったら天日干しすればまた使えるようになります。

空間全体の除湿をするなら次のような対策を。

塩化カルシウムを使わない除湿方法
  • 換気する
  • エアコンをつける
  • 除湿機を使う

もし下駄箱やくつの匂いが気になって除湿を考えている場合、その原因は湿度だけではないかもしれません。下駄箱のにおいが気になるときは、革靴と下駄箱の匂いを防ぐ方法9選が役に立つはずです。

カビを防ぐ方法を知りたい方は、プロが教える革製品のカビ予防策!おすすめ防カビ剤も紹介をご覧ください。

革の近くで湿気とりを使ってはいけない理由のまとめ

革の近くで湿気とりを使ってはいけない理由は、塩化カルシウムをふくんだ水が革についてダメージを与える可能性があるからです。

万が一塩化カルシウムが革に浸透すると、革を収縮変形させたり硬化させたりします

近くに置いておくだけならすぐに悪影響があるわけではありませんが、設置したことを忘れて水があふれてしまうケースがあるようです。

そうならないためにも、最初から革製品の近くで塩化カルシウムの湿気とりを使わないのがベター。これがデテログの結論です。

この記事は以上です。長文お読みいただきありがとうございました。

参考文献 皮革ハンドブック 日本皮革技術協会編

参考文献 かわとはきもの No200 東京都立皮革技術センター

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