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革製品ができるまで|deteの手縫いシザーケースはこうして作られる

革製品ができるまで シザーケース

革製品ってどうやって作られてるんだろう?

革職人の技に興味があります!

deteのシザーケースを検討中!

そんな疑問や興味を持った方に楽しんでいただける内容です。

最初の章で大まかな流れを紹介、次の章で細部をじっくりと掘り下げてみます。

プロフィール

革職人の経験を活かし、趣味のレザークラフターや革製品のトラブルに悩む方に役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

・レザーブランド"dete"の代表
・出版書籍『革職人になる方法』Amazon手芸本1位獲得

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革製品ができるまで|deteのシザーケースの場合

シザーケースS06-3を例にとって解説します。まず、S06-3はどんなシザーケースなのかをざっくりと。

S06-3はこんなモデル

技術的な部分について解説すると、まず縫製は手縫いです。

長年のハードな使い方に耐えられるよう、必要な部分は補強して裏貼りをしています。

断面は可能な部分はヘリ返し、それ以外の部分は切り目で染色してロウで磨いています。

それでは製作工程についてです。

製作の流れ

製作の流れ

  1. 裁断
  2. 漉き(厚み調整)
  3. 補強/下ごしらえ
  4. 裏貼り
  5. 組立て
  6. 縫製(手ぬい)
  7. 仕上げのコバ処理
  8. 金具取付け
  9. 検品、ブラッシング

裁断(革の切り出し)

大きな革から必要なパーツを切り出します。

大きく粗裁ちしたあと、革包丁というナイフを使って手作業で正確にカットします。

カットが済みました。↑は一部で実際は他にもパーツはあります。

漉き(厚み調整)

パーツ細部の厚みを調節します。

ヘリ返しという技法のために、縁にむかって少しずつ薄くなるように漉き加工しました。

※写真では彫刻刀で溝を掘っていますが、この加工は現在は行っていません。

補強/下ごしらえ

この写真は、ダッカールをつけるベルトパーツの内部。

芯を仕込み、この上に革を巻いて縫います。

その他、傷みやすい部分の内部にナイロンテープを貼ったり、曲げやすくする為に溝を掘ったりと、丈夫できれいな仕上がりになる為の加工をほどこします。

関連記事 レザークラフト|補強の方法と丈夫に作るテクニックまとめ

裏貼り

裏地を付けます。

写真はマチ(厚みをつくる側面)のパーツ。

裏地を貼って補強します。

裏貼りの重要性についての記事を書いています。

関連記事 

レザークラフト脱初心者|裏地を付けるメリットと選び方

裏打ちをマスターするだけでレザークラフトの腕が上達する本当の話

組立

縫製してコバ(断面)を染色して磨いたら、接着剤を塗って組立てます。

接着剤の扱い方について 

ゴムのりの使い方(革と革を接着する方法)

貼り方と圧着について 

革と革を貼る道具|ハンマー、ペンチ(エンマやっとこ)、ローラーをどう使い分ける?

革の表面同士がうまく接着できない!革表面を荒らす3つの方法

縫製(手ぬい)

通常、手縫いはポニーや馬というクランプにはさんで行うのが一般的ですが、このシザーケース本体の手縫いはポニーが使えません。

机の上に置いて行うか、膝の上に布を置いてその上で手ぬいします。

構造上、ミシンで縫うことはできません。

菱錐という専用のキリを使って一目ずつ縫い進めます。

菱錐について詳しくは 菱錐(ひしぎり)とは?|使い方は2種類|砥ぎ方とメンテナンス

仕上げのコバ処理

コバに捻を入れ、磨いて丈夫に仕上げます。

捻というのは縁にミゾを入れる装飾加工。

詳しくは 革製品に入れる「捻(ネン)」って何?|目的と効果と捻の種類

コバ磨きは布や硬い木などでこすって段差をなくしなめらかに仕上げます。

詳しくは ふのりと蜜蝋のコバ磨きの方法 [革職人伝授]

金具の取り付け

金具を打ち付けてがっちりと固定します。金具は、写真のように手作業で打つ場合と、ハンドプレスで機械的に打つ場合があります。

関連記事 革職人がホック金具をハンドプレスで付ける理由とメリット|使い方

検品、ブラッシング

仕上りに問題がないかどうか最終確認を行います。

ブラッシングして革の粉やホコリを払います。

ちなみに、ホコリ落としで使うブラシは、化繊毛、馬毛、山羊毛のどれかならどれでもOK

デテログは万能な化繊毛と馬毛をおすすめしています。

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山羊毛は趣味性が高いブラシです。

ブラシの比較記事も書いています。お時間がある方はこちらもどうぞ。

詳しくは 革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。

関連記事 山羊毛ブラシを革製品に使うメリット|なめらかな光沢

完成

重厚ですがスリムでいい雰囲気に仕上がりましたね。

写真は、プルアップブラウン×イタリアンレザーチョコ×茶色ステッチです。

ここからは、さらに細部を掘り下げてみてみましょう。

S06-3購入ページへ

革製品の製作風景|細部を掘り下げる

今後は細かい部分をピックアップして解説します。deteのシザーケースS06-3が作られる背景やプロセスの断片をお楽しみください。

コバ処理に関わる作業

何をしているところ?

あらかじめ大きくしておいたパーツを、貼ったあとに正確な型でカットしようとしています。

最初から正確な形にしておかない理由は、この方がきれいなコバに仕上がるから。きれいになる要因は2つ。

  • 断面が整うから
  • 接着剤の塗りムラがへるから
革包丁(裁ち包丁)という日本の刃物です。

手縫いと手縫いに関わる工程

ミシン縫いにはない手縫いならではの工程を紹介します。

金具がジャマしてキリが通せない部分の手縫い

金具がジャマして菱錐が届かない部分の手縫い
何をしているところ?

手縫いの一コマ。

通常の手縫いとはちがい、刃が曲がった菱錐(ひしぎり)を使っています。

金具がぶつかってしまい、通常の菱錐では縫うことができません。

当然ミシンで縫うこともムリな構造です!

貼り合わせたパーツを二重にまたいで縫う

何をしているところ?

手縫いの縫い初めに、貼り合わせたパーツをまたぐように糸を通しています。

さらに、この部分は二重に糸を通し、糸が革に食い込む力を分散しています。

こうすることで丈夫になるだけでなく、手縫いらしいステッチデザインのアクセントにもなっています。

手縫いならではのひと手間です。

縫い穴をあける作業

何をしているところ?

手縫いするための穴を開けようとしています。

木のハンマーなどで叩いて印を付け、菱錐というキリで貫通させて空いた穴を縫います。

手に持っているのは菱目打ちという道具。
入谷の鍛冶屋さんが打ってくれた菱目打ちを自分で削って磨いた職人道具です。

今日本で作っているのは数社のみ

美しさと耐久性にかかわる|パーツの作り込み

力がかかるパーツの内部補強

何をしているところ?

腰に付けるベルトとの接続パーツを作っています。

内部にナイロンテープを貼り、二つ折りにしたパーツで金具を挟んで作ります。

伸び止めのナイロンがあるかないかで、耐久性に大きな差が出ます。

ベルトを留めるパーツ作り

何をしているところ?

ダッカールクリップとブラシをホールドするベルトの付属パーツを作っています。

薄い革を三つ折りにして圧着して完成。

革包丁で厚みを調節して捻を入れたら縫い付けます。

意外と強度が試されるパーツです。

ベルトパーツの穴あけ作業

何をしているところ?

ベルトパーツのバックルを通す穴あけをしています。

この穴は、ベルトパーツの組み立てが済んでから開けます。そうしないと位置が狂ってしまいます。

ずれると目立つので慎重に。

制約がある組立て

何をしているところ?

一番外側のパーツを貼り合わせて最後の組み立てをしているところ。

強いテンションがかかる為、一度に左右を貼ることはできません。
その為、片側を貼って縫ったらもう片側を貼って縫うという工程になります。

このテンションがあるから革にハリが出て美しいふくらみに仕上がります!

ヘリ返しのための漉き加工

何をしているところ?

ヘリ返しという技法の準備で厚みをうすくする漉き加工をしたところ。

表革の厚みを、ヘリに向かって少しずつうすく漉きました。この漉いた部分で裏革のへりを巻きます。

すっきりした仕上がりになります。

型崩れを防ぐ芯材使い

何をしているところ?

硬いパルプ系の芯材を胴に貼り込んでいます。

こうすることで型崩れを防ぎ、いつまでも使いやすさを保ちます。

芯材が表の見た目に影響しないよう、周囲には漉き加工を入れて厚みをけずっています。

芯材の種類を変えると効果はまるでちがいます。
どう使うか頭を悩ませるのも楽しい。

R部分の切り出し

何をしているところ?

R部分を型紙通りにカットしています。

シャクシャクと料理包丁で刻むように、すこしずつ向きを変えながら多角形をつくるイメージで切ります。

くり抜くようにして正確にカットする為には、電動糸鋸のように垂直に刃を立てて切る必要があり、手作業ではできないです。

厚い革ならではの手仕事です。

接着に関する工程

接着やその準備についての作業紹介です。

圧着作業

ハンマーで革を圧着しているところ
何をしているところ?

接着面を貼り合わせて、ハンマーで圧着しています。

これをすることで、強く貼ることができ、コバがはがれてしまうことを防ぎます。

鉄の台の上で叩くことで効果アップ

接着面の荒らし

何をしているところ?

接着面を革包丁でけずっているところです。

こうすることで、本来接着剤が効きにくい銀面(表面)を接着しやすくすることができます。

生地同様、革には目があり、きれいに荒らせる向きとそうでない向きとがあります。

革製品ができるまでのまとめ

シザーケースを例にとり、革製品ができるまでの工程を解説しました。

製作の流れをおさらいします。

製作の流れ

  1. 裁断
  2. 漉き(厚み調整)
  3. 補強/下ごしらえ
  4. 裏貼り
  5. 組立て
  6. 縫製(手ぬい)
  7. 仕上げのコバ処理
  8. 金具取付け
  9. 検品、ブラッシング

この流れは製品によって変わります。

同じ製品であっても、常に技術をブラッシュアップしながら日々製作しているため、工程や作業内容は常に変わる可能性あります。

私達の仕事に興味を持ってくれたことをうれしく思います。

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