ゴムのり(クロロプレン系接着剤)を使って革と革を貼る方法を書きます。
強く貼れてコバに影響が出にくい方法を紹介するので、レザークラフトの腕を上げたい方に役に立てていただける内容です。
なお、うちで使っているのはサイカプレン NP103というボンドで、見た目はゴムのりと似ていますが、販売店の方に言わせると別物だということです。使い方は変わりません。
今回はこのサイカプレンの使い方を学び、お使いのゴムのりやボンドに応用していただけたら幸いです。
ゴムのりを使って革と革を接着する方法
ゴムのりを使った革と革の接着のポイントは以下の3つ。
- 両面に塗る
- 半乾きになってから貼る
- 貼ったら圧着する
ゴムのりは両面に塗る
ゴムのりや革用のボンドは必ず両面に塗ります。片面に塗っただけではくっつきません。
ボンド用の容器の扱い方、ボンドのすくい方について、接着剤の容器が汚い人はコバをキレイに磨けない?《レザークラフト》で書いています。この記事の後に合わせて読んでみてください。
ジラコヘラで塗る
塗り方は職人でも好みがありますが、私の場合、サイカプレンもサイビノールもジラコヘラを使います。20mmと40mmがあれば十分だと思います。
2本ずつ使うと効率的です。
二回塗りする
サイカプレンNP103を使うときは基本二回塗りします。
一回目塗った分は、革が吸い込みます。その吸い込まれた分がプライマー(下地)代わりになります。
厚く塗れば一回で済むのでは?
と思うかもしれませんが、それではボンドの層が厚くなってしまい、キレイなコバに仕上がりません。
なお、吸い込みがはげしい革の場合、3回塗る場合もあります。
半乾きに乾かしてから貼る
接着する際にもう一つポイントになるのは、半乾きになってから貼るということ。
やってみるとわかりますが、乾いていない状態で貼ってもくっつきません。
10分以上経つと接着力が弱くなり始める印象です。
圧着方法は3つ
貼り合わせたら圧着します。
圧着する方法は、主に以下の3つ。
- ハンマー(点)
- ペンチ(線)
- ローラー(面)
圧着効果は、ハンマー、ペンチ、ローラーの順に高く、強い接着ができます。
一度に圧着できる範囲は逆で、ローラー、ペンチ、ハンマーの順。広い方がムラなく貼ることができます。
それぞれの使い方や使い分けについては、こちら☟で詳しく解説しています。
ヘラに残ったボンドをきれいに取り去る方法
サイカプレンNP-103がついたヘラをきれいにする方法。
問い合わせがあり、ちょうど固まってるヘラがあったので。
この手のボンドはボンド同士をこすり合わせると大抵まとまります。
半乾きなら指でも可。容器の掃除にはポリシャエンを使っています。
汚れたまま放置しないのが一番です。 pic.twitter.com/INzrRRS9FQ
— dete (@mkgx81) September 6, 2020
ヘラ同士以外では、革の床(裏面)にこすりつけても落とせます。
キレイなコバ磨きの為のうす塗りの方法
うす塗りのポイント3つ
- 硬くなったゴムのりを使わない
- 手早く塗る
- ヘラを立てて塗る/ヘラの左面にボンドを付けない
※また、吸い込みやすいボンドの場合、ある程度厚塗りしないと接着が効かないケースもあります。あくまでも、サイカプレンNP103でのやり方です。
硬くなったボンドを使わない
サイカプレンNP103の粘度。新品だとこれくらいです。
— dete® (@mkgx81) September 24, 2020
古くなると固くなってきます。
容器の移し替えはスピード勝負!
使うときも、ヘラですくったらすぐフタをするようにしましょう。 pic.twitter.com/wrzbtJCwtM
ボンドは、ボンド工場で作られた時点から揮発が始まっていると考えてください。封を開けていなくても少しずつ揮発は進み、開けたら一気に加速します。
できるだけ密閉できる容器に移し替える、移し替えは手早く、使うときもフタを開けっ放しにしないなど気を配りましょう。
使いやすい容器はこれ。
くわしくは、別記事の接着剤の容器が汚い人はコバをキレイに磨けない?で解説しています。
手早く塗る
残業中。
— dete® (@mkgx81) September 24, 2020
オチとかないただの作業動画です。
SKA好きなのに陰キャの生きづらさよ。 pic.twitter.com/wBrczAfHYo
手早く塗ります。そうする理由は、すくったボンドがヘラの上で乾いてしまうから。
特に二度目の塗りの時は注意。
ゆっくり塗っていると、一回目のボンドとヘラがくっついてしまうことがあります。
ヘラを立てて塗る/ヘラの左面にボンドを付けない
ヘラを立てる角度に注目してください。
ヘラを立てて塗るとうすく塗れて、寝かせて塗ると厚く塗れます。
コバをキレイに仕上げるならうすく塗り、コバや表面に影響しない部分は接着を強くする為に厚めに塗ります。
是非試して実感して欲しいです。
この時、いくら立てて塗ってもヘラの左面に(右利きの場合)ボンドがついていたら意味がないので、片面だけにボンドを付けるすくい方を練習しましょう。
革の銀面は貼りにくい→荒らす
革の銀面(表面)はただ貼っただけでは強く接着できません。
荒らすことで強く貼ることができます。
その他
その他にもポイントはありますが、考えることが多くなると難しくなるので、余裕があったら意識してみてください。
- ヘラがコバに落ちないように気を付ける
- 奥から手前に、前の動きに重ねながら進める
- 扇形に塗った跡が残るように動かす
など。
目的はそこです。
— dete® (@mkgx81) September 21, 2020
具体的にいうと、真横にヘラを動かすとヘラの奥と手前にボンドが溢れてしまうので、そうならないようにしています。
扇型に動かせば、手前には溢れますが奥には溢れません。
手前に溢れたボンドは次の動きで取り去ります。これをくり返します。
ゴムのりとボンド
ゴムのりもボンドも同じクロロプレーン系接着剤というものですが、別ジャンルとして分類しているお店もあります。
たとえば清水商事さんでは、
- ボンド
- ゴムのり
- 接着ラバー
- 接着剤
と4種類にわけて販売しています。
見てましたが、正直明確な定義はわかりません。恐らく、ゴムのり➡接着ラバー➡接着剤と段々接着力が強くなっていくのだと思います。「ボンド」はエマルジョン系(木工用など)やスプレーボンドなど、それ以外の接着剤としているようです。
私なりの分け方で恐縮ですが、ゴムのりは仮止め用、ボンドは革の種類によっては縫製無しでも使える強力なものと分けています。清水商事さんで分類している「ボンド」とはちがう使い方なので注意してください。
ゴムのり例
ボンド例
ゴムのりの使い方のまとめ
ゴムのり(サイカプレンNP103)を使って革と革を貼る方法についてお話ししました。
ポイントをまとめます。
ゴムのりの使い方
- 両面に塗る
- 半乾きになってから貼る
- 貼ったら圧着する
コバが磨き仕上げになる場合、ボンドがうすく塗れているかどうかがポイントになります。
うす塗りのポイント3つ
- 硬くなったボンドを使わない
- 手早く塗る
- ヘラを立てて塗る/ヘラの左面にボンドを付けない
本当に細かいことですが、こういったことの積みかさねがクオリティの高さにつながるのはまちがいないことです。
チマチマしたことは好きじゃないです。
趣味でつくるならそれもアリだと思います。また、商売であっても、ラフさを残す製品を作るのならあまり深く考えない方がいいかもしれません。
楽しみながらできるのが一番です。このブログ『デテログ』では、よりクオリティが高い造りを目指す方向けに、職人の私が実際に使っている技術を公開しています。
あなたなりに消化して取り入れていただけたら幸いです。
気に入っていただけたら他の記事もどうぞ。
コメント
いつも参考にさせていただいております。
ブログを拝見して、サイカプレンを購入し使用しております。
まだ大丈夫なのですが、粘度が固くなってしまった場合、薄める方法はあるのでしょうか?それとも、固くなってもそのまま頑張って使うのが普通でしょうか?
粘度が上がってくると接着が弱まったり薄く塗れなくなったりするので、そうなったら廃棄するか薄めるかになります。
私の場合は回転が早いのでほとんど固まらず、薄めて使うことはありません。
接着剤を薄めるときは、シンナーやトルエンのような溶剤を使うようですが、キケンなので一般の方にはおすすめしません。
もしお使いになる場合は、どの溶剤がいいのかをサイカプレンの製造元か販売元にお尋ねになるといいかと思います。