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顔料を使っている革は悪い革?染料と顔料のメリットとデメリット

革の種類と専門知識

deteのミコガイです。9年革職人しています。

質問をいただきました。

以下、質問と回答全文です。

『レザーは顔料を使っていないと質がいいのですか?』

良い染料染めの革も、良くない染料染めの革もあります。 また、めっちゃ安い革は顔料の革が多いですが、高級ブランドが使う革もまた、大抵の場合顔料が使われています。 ケースバイケースです。

掘り下げてお話ししていきましょう。

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顔料を使っている革は悪い革?染料と顔料のメリットとデメリット

顔料革と染料革のメリットデメリットを表にまとめると以下の通り。

顔料染料
色移りリスク◎低い△高い
変色リスク〇低い×高い
発色の良さ◎良い〇くすみが出やすい
経年変化の味わい
(タンニン鞣し革)
△顔料の厚みによる◎色つやの変化アリ
仕上がり傷を隠せるが平面的自然の風合いが楽しめるが、
傷やシミが残る
この表は横スクロールできます。

一長一短といったところでしょうか。

染料だけで色付けした革も、顔料を使った革も、それぞれにメリットとデメリットがあり、それぞれ違った魅力があります。

次は、deteで使用している素材(エキゾチックレザーを除く主な革)に顔料が使用されているかどうかをまとめてみます。

種別顔料
裏地用羊革
グレージングゴート山羊
栃木レザー
サマーオイル
エルバマット
E.gemini
TOIANO
プリモ子牛
アルランシュリー山羊
ブライドル
WHカーフ子牛

上の方と下の方に顔料を使用した素材が固まっているのがわかりますね。

ここがポイントです。

この表は並び順にカギがあって、単価が低い革から順に並べています。

つまり、

安い革と高い革の両方に顔料が使用されている

ということです。

次の項目ではその理由について掘り下げて説明しますね。

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安い革と高級な革に顔料が使用されている理由

まず大前提として、世の中に出回っている革のほとんどに顔料が使用されています。

顔料革が多く使用されている理由は、安く作れて(工程を減らす方法がある)、廃棄ロスをなくせて(傷やシミを隠せる)、品質が安定していて(ロットぶれが出にくい)、色移りしにくいから。

上記の理由は、[安い革に顔料が使われている場合が多い理由]に直結します。

安い革に顔料が使われている場合が多い理由は、製作コストが低いから

問題は高い革の場合です。

高級素材に顔料の革が多い三つの理由

  1. 顔料だから高いのではなく、高い原料を使っているから高い
  2. 顔料を使用した革の方が富裕層に好まれる
  3. 品質を安定させる為

理由1 高い原料を使っているから高い

元も子もない話に聞こえるかもしれませんが、顔料か染料かという議論以前に、使っている素材が総じて高品質なものが使われています。

また、安価な顔料革のようにべったりとした顔料ではなく、染料で染めた後に、薄く顔料でコーティングしているような革がほとんど。

これは非常に高い技術によるもの。

女性に人気の革 [ワープロラックスカーフ]ワインハイム社製

こちらは、顔料を使用したカーフのWHカーフ(ワインハイマー社製)。

世界最高峰のブランドでも使用されています。

素晴らしい色と質感で私が愛してやまない素材です。

安い顔料革と高い顔料革には、品質面ではっきりとした差がありますよ。

WHカーフで作ったdete製品一覧

理由2 顔料を使用した革の方が富裕層に好まれる

例えば、レッドカーペットの上を歩く女優が持つクラッチが、バリバリに味が出たヌメ革製だったらって考えるとどうでしょうか?

ある意味とんがっててかっこいいかもしれませんが、ヌメ革はドレスとは合いませんよね。

もちろん、「本当はラフなヌメ革が好き。」というセレブもいるかもしれませんが、ライフスタイルとはマッチしません。

顔料で整った素材がテイスト的にマッチします。

理由3 品質を安定させる為

世界基準で販売する場合、品質が安定していることはもちろん、色落ちや色移りのリスクも最小限に抑えたい

また、品質にバラツキがあると高級品としての正当性を保ちにくい。

そうなると、必然的に染料だけで染めた革は使われなくなります。

安い革とはまた違った意味で品質を安定させる必要があるということです。

なぜ顔料を使っていない革が良い革という認識があるのか?

ナチュラルなイタリアンレザー【TOIANO】イタリア製牛革

安い革と高い革に顔料革が多いという話をしましたが、実はそれのほとんどはクロム鞣し革での話。

タンニン鞣しの場合、ほとんどの場合は顔料を使っていない方が高級品です。

それはどうしてか?

これは私の推測ですが、タンニンなめし革で顔料を使った革に高級品が少ない理由は、色変化しないタンニンなめし革に需要が少ないからだと思います。

タンニンなめし革が好きな人は、大抵エイジングが好きな方ですよね。

これが顔料のタンニンなめしとなると、一種の矛盾が生じるわけです。

『色変化するのにしにくい』みたいな。

なので、

高級(良質)なタンニンなめし革=エイジングが美しい革

と言っても過言ではないと私は思います。

ここで最初の質問に話を戻します。

『レザーは顔料を使っていないと質がいいのですか?』

このような質問が出てくる理由は、私と同じように良革=良エイジングと考えている方で、なおかつ革と言えばタンニンなめし革のイメージがあるからなのではないかと思います。

違ったらごめんなさい。

いずれにしても、このイメージに当てはめるなら、顔料を使っていない革は質がいいということも言えるのかなと思います。

顔料を使っている革は悪い革?のまとめ

[PRIMO] オランダ産カーフ リピート率No.1の美しい革

顔料を使っているかいないかだけで良し悪しを判断することは難しいです。

ただ、タンニンなめし革においては、顔料を使っていない革の方が良い革の割合は高いように感じています。

それぞれに利点や表情の違いがあるので、好みや用途に合わせて選びましょう。

味が出る革製品が好きなら、顔料を使っていない染料染めの革一択です。

逆に、あまり色変化して欲しくないなと思う方は、顔料を使った革の財布やバッグを選んだ方が良いです。

以上、『レザーは顔料を使っていないと質がいいのですか?』の回答記事でした。

その他、染料だけを使った仕上げ方法の『素上げ』について以下リンク先でお話ししています。

素上げの革ってどんな革?
『素上げ』の革とはどんな革のことなのかを解説します。素上げ革はデリケートでやっかいなじゃじゃ馬ですが、経年変化をダイレクトに味わえる愛しい素材。扱い方や手入れについても。

ご質問や記事への要望は、コメント欄からお願いいたします。

コメント

  1. K より:

    顔料だけでなく、クロム鞣しorタンニン鞣しに関しても似たような価格傾向がありますね。
    顔料染めは色落ちに対する修繕が楽なので、世代を渡って使うハイメゾンに愛されるのかなと思います。

    • dete より:

      コメントありがとうございます。
      私も、〈クロム鞣しorタンニン鞣し〉は、〈顔料or染料〉と縁が深いものと考えています。

      修繕のしやすさに関しては盲点でした。おっしゃる通りですね。

      染料タンニンなめし革はエイジングが楽しめるから長く愛せるとよく言われますが、顔料革の方が修繕しやすいから長く使えるという考え方もできますね。
      いやー革は深い!

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