エルバマット(ELBAMATT)の特徴、革質、ネックなところなどについてお話しします。
エルバマットはとにかく発色がステキなイタリアンレザー。経年変化もしやすいので、革製品の味を楽しみたい方にもぴったりです。
ですが、ネックになる部分もあり、使いどころを選ぶ素材の一面も。
ご紹介します。
エルバマットはこんな革
エルバマットのビジュアルや品質などについてお話しします。
エルバマットで作ったdeteの革製品
この革で作った商品をちらっとご紹介。
エルバマットの発色の良さよ。
国産のタンニン鞣し革にはここまで鮮やかなものは多くないので新鮮です。
紹介記事 ミニマリストの為の超シンプルキーケース・・・THE キーホルダー
ドアップと曲げた感じ。
油分を多く含んだこってりとした質感とビビッドな色は、他のタンナーでは出せないテンペスティならではの味。
カラーバリエーション
色数が非常に豊富で、どの色も素晴らしいセンスです。
私個人としては、スワッチを見ながら一杯飲めるくらいに楽しい。
2015年にいただいたエルバマットのスワッチですが、27色くらいありました。すごい色数です。
イタリアンレザー人気を広めるきっかけの一つ
昨今革好きの間でイタリアンレザー熱が高まっています。
エルバマットはそのきっかけを作った銘柄の一つ。
エルバマットの広がりをきっかけに、他の革輸入業が参入して数多くのイタリアンレザーが日本で使われるようになりました。
私的イタリアンレザー世代
— dete® (@mkgx81) January 22, 2022
第一世代はブッテーロ・ミネルバ他サライ系。
第二世代はエルバマットに始まる伊革戦国時代。
第三世代はアラスカ・プエブロ他の蝋引き・バフ系。
次は何でしょう。
エルバマットの革質
通常の牛革の1.5倍から2倍(タンナー調べ)の油脂を加えた独自加工で仕上げているとのことで、その油分の多さはさわってみればすぐにわかります。
しっとりと指に吸い付くような質感です。かといって、ベタベタしたりすることはありません。
表面の見た目は、新品の状態ではあまりツヤはなくマットで、発色がいいわりに落ち着いた印象を受けるでしょう。
硬さは、同じ厚みのタンニンなめし革(くわしくはクロムなめし革とは?タンニンなめし革&ヌメ革との違いを)と比べると、若干やわらかめでなじみやすい革と言えます。
エルバマットの良いところ
良い悪いは客観的に解説するのがむずかしいところなので、完全に主観でお伝えします。
最初に上げるのは経年変化の楽しさです。
経年変化が楽しい
エルバマットは経年変化がとても楽しい革です。
使ううちに色が濃く変わり、マットだった表面に透明感のあるツヤが現れます。
特に、「明るい色」「鮮やかな色」はかなり大きく変化します。
ほどよい硬さ(しなやかさ)で使いやすい
厚みを確保すれば一枚革でもほどよくコシがあり、いろいろな製品に使いやすいちょうどいい硬さです。油分が多い革らしいしなやかさも兼ね備えています。
カジュアルな製品や、味を楽しみながら長く使う製品にぴったり。
カラーバリエーションの多さは作り手にとっても楽しい
テンペスティ社が用意する定番カラーは20種類以上。
色選びに悩む時間は作るときも楽しい。
多すぎるとお客様を困らせることになるから注意。
エルバマットのネックなところ
一番のネックは、色落ち(移染)しやすいところです。
バッグやベルトなど、身につける製品に使う場合は注意が必要です。
とはいえ、財布や手帳カバーなど手にもって使う製品であれば問題はないかと思います。
色落ちしやすい革の要素は主に3つあって、
エルバマットはこれらすべてに当てはまる革です。
色落ちにはきびしいはずの百貨店でもイタリアンレザーはなぜか許される。
国産レザーは基準クリアが絶対なのに…というプロのボヤキを聞いたことがあります。
レザクラ勢向け。扱うときの注意点
エルバマットでレザークラフトする際の注意点をざっとならべます。
オイルレザーの接着はむずかしい
まず、油分が多い革共通の特徴として、接着剤が効きにくい点があります。普通に縫う部分なら問題ないですが、接着だけで仕上げたいとなるとむずかしいです。
対策として、油分が多い革に対応したボンドを使ったり、普段二回塗るところを三回塗ったり、下地を塗ってからボンドを塗るなどの対策が考えられます。
専門のレザークラフトショップなら、オイルレザー向きの接着剤を聞けばおすすめを教えてくれるかもしれません。
コバ磨きがちょっとむずかしい
次にコバ磨きですが、エルバマットのコバは、硬いヌメ革にくらべるとちょっとだけキマりにくいです。
蝋を入れるなどしっかり仕上げる方法はありますが、硬い革に比べるとどうしてもコバの耐久性は落ちます。とはいえ、製品にするにしてもぜんぜん許容範囲内ではあります。
めちゃめちゃにこだわればの話であることはお含みおきいただければ…
オイルが少ない革に油分が移る
二種類以上の革を組み合わせて使う場合、エルバマットなどのオイルレザーは注意が必要です。
たとえばヌメ革とエルバマットが接する形の作品を作ると、接している部分からエルバマットのオイルがヌメ革に移ってシミができるおそれがあります。
いずれ馴染んでわからなくなる可能性はあり、自分で使うなら問題はありません。
ですが、これを人に贈ったり販売したりするとなると、理解してもらうのはむずかしくなるかもしれません。
ここで挙げたエルバマット特有のクセをつかんでもらえば、それ以外は全く問題ない素材です。
エルバマットのエイジング
エルバマットのエイジングは非常に魅力的。
イエローはオレンジに、グレーはくすんだブラウンに、グリーンは渋みのあるカーキに変化します。
プラムのエイジング。
エルバマットの経年変化については最高のシボ革E.geminiとエルバマットの経年変化写真でくわしく紹介しています。
ヌメ革(タンニンなめし革)全般の色変化については、ヌメ革の色変化|ベージュのヌメは何色に?緑は?グレーは?で解説しています。
エルバマットと相性の良い商品・悪い商品
革質についての考え方はいろいろありますが、たとえ高級であっても人気があっても、製品と相性の悪い革が使われていたらいい仕上がりにはなりません。
この章では、エルバマットと相性のいい製品はどんな製品なのか?についてさらっとお話しします。
エルバマットと相性の良い製品
ブックカバーや財布、キーケースなど、ほとんどの革小物製品に向きます。
ほどほどの硬さでなじみやすい革なので、型崩れさせたくないキッチリした製品よりは、アタリ(カードの段など入れたものの跡が残る)すら楽しむようなカジュアルな使い方に向いた素材です。
その分、経年変化の楽しさは随一と言うことができます。最高です。
エルバマットと相性の良くない製品
体に触れるカバンやベルトなどにはあまりおすすめできません。
理由はこの革のデメリットでもある色落ちのしやすさ。
淡い色の服に長時間触れたりこすれたりすると移染してしまう恐れがあります。
財布や手帳など手にもって使う製品なら、通常の使い方であれば問題はないはずでしょう。
エルバマットはどこで買える?
エルバマットの製品や革生地はAmazonや楽天他、いろいろなネットショップで購入ができます。
ネットで買えるエルバマット製品
これを書いている2022年時点では、2010年代当時とくらべると世の中に出回るエルバマット製品は格段に増え、一般の方でも目にする機会が増えてきたのではないかと思います。
ブッテーロやミネルバボックスをイタリアンレザー第一世代とすると、エルバマットは第二世代の立役者。
鮮やかなイタリアンレザーの楽しさを広めてくれました。
現在ネットではどんなエルバマット商品が売られているのかざっと見てみましょう。
その他、百貨店やセレクトショップで売られている財布やキーケースの素材に使われていることも多いです。
エルバマット(素材)が買えるお店
趣味のクラフター向けに、エルバマットの革生地が買えるお店をいくつか紹介します。
使いやすいサイズにカットし、うすく漉いた状態で販売されているので便利ですね。
ぱれっと
豊富な厚みとカットサイズから選べるレザークラフトショップ。楽天とAmazonにショップがあります。
レザーマニア
LCレザークラフト
その他、各地のレザークラフトショップでも取り扱いがあります。
革は同じ革でも厚みがちがったり販売される形や大きさがちがう場合があり注意が必要です。
先に紹介したショップはいずれも複数の厚みやサイズを用意していますが、ショップによってはそうでない場合もあります。
必ず確認してから買うようにしましょう。
革を買うときの注意点について、クラフト用ヌメ革販売店〔ネットで買える〕まとめ|買い方と注意点でお話ししています。
カット革も便利ですが、革の勉強をしたいならぜひ一度半裁やダブルショルダーにチャレンジして欲しいです。
くわしくは、革の勉強をしたいなら一度でいいから半裁とダブルショルダーを買ってほしい理由3つをご覧ください。
エルバマットのお手入れ方法
油分が多く染料をたっぷり使っているので、テキトーに使っていても経年変化がキレイ。
だからしばらくの間はブラッシングだけしておけばOK。
ブラシはこちらの馬毛タイプか化繊タイプがおすすめです。
ブラシの選び方についてくわしく知りたい方は、革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。をご覧ください。
クリームは、少なくとも半年くらいは使わなくて大丈夫です。
ですが、ずっとそのままでいいというわけではありません。
油分は確実に抜けていくので、その分を補ってあげないと表面がかさついて見た目が悪くなったり、革がひび割れてしまうなど、その他の革と同じようにリスクがあります。
おすすめはいくつかありますが、まず紹介したいのは、コロニルのシュプリームクリームデラックス
万能で使いやすい上香りもいい(感じ方に個人差アリ)のでおすすめしやすいです。
詳しくは、1909シュプリームクリームデラックスの万能感をレビュー&使い方をご覧ください。
その他、日本のメーカーコロンブスの革小物コンディショニングクリームもおすすめ。
よりデリケートな革にも対応しており、多くの革に安心して使うことができます。
詳しくは、革小物用コンディショニングクリームの使い方とレビュー(コロンブス)をご覧ください。
エルバマットについてのまとめ
エルバマットの見た目や特徴、向く製品などについてお話ししました。
エルバマットは、色が美しく経年変化も良い雰囲気。そしてほどよい硬さで厚みもある(うすく加工することも可)ので、幅広い用途におすすめできる革です。
使って楽しいだけでなく、レザークラフト勢にも素材としてぜひ試していただきたい革です。
接着剤が効きにくかったり、コバが若干磨きにくいなどクセはありますが、その点だけ理解しておけばあつかいやすい素材です。
ただ、色移りにだけは気を付けましょう。がっかりしてからでは遅いので。
まとめると、エルバマットは長く愛せる革素材といえるでしょう。
革の成長を楽しみながらじっくりと付き合いたいですね。
この記事は以上です。長文お読みいただきありがとうございました。
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