革と皮ってどうちがうの?
こんな質問に対して、
なんとなくわかるんだけどうまく言葉にできない!
なんて方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
よどみなく返せるようになるよう、革業界に13年いる革職人がわかりやすく解説します。
皮を鞣して腐らないよう加工したものが革
革って何でしょうか?皮とのちがいからお話ししてみましょう。
皮を腐らないように鞣し加工したものが革
皮は、そのままにしておくと腐ってしまうか、干し肉のようにカチカチに固まってしまいます。
そうならないように、皮に鞣し加工をほどこし、腐らない状態にしたものが革です。
なめしの目的は、柔らかさを保ちながら腐らない状態にし、なおかつバッグや財布や靴などに使ったときに映える風合いに仕上げることです。
まちがわれやすいけど、皮と革は別物ということです
なめしについてもっと詳しく知りたい方は、別記事の「革の鞣し(なめし)とは何か?」をご覧ください。
毛皮はどうして革じゃないの?
なめしていても毛が残っている物は革じゃなくて皮と書くのが通例なんだ
まぎらわしいポイントや例外があるので、具体的な例をあげて分類してみましょう。
革と皮の例
生皮を使ったワンちゃん用のおやつ
生皮を使ったアフリカの太鼓
毛付き牛皮のラグ
太鼓には生皮(きがわ)という皮が使われています
この生皮はなめしは行わず、皮を乾燥させたもの。革とは呼びません
牛革のバッグ
エイ革を使ったブックカバー
スエードは起毛しているけどこれは毛じゃなくて革の裏面をやすりで加工したもの
くわしくは、スエード、ベロア、ヌバック、バックスキンのちがい|起毛革の特徴をわかりやすく解説をご覧ください。
革と皮のちがいのまとめ
財布やバッグに使う”かわ”は、毛皮を除いてほぼ全て”革”と思って間違いないです。
革に使う動物の種類|牛、馬、豚、羊など
どんな動物が革に使われるの?
家畜の革とエキゾチックレザーの2種類があって、一般的なのが次にあげる家畜の革だよ。
家畜の革が一般的
家畜の革は、おもに肉を利用したあとに残った皮(真皮)を利用して作られます。
牛革|革と言えばこれ。最も一般的な革
牛革は、供給量がもっとも多く、国内の革のほとんどが牛革だと言っても過言ではありません。
厚みがあり丈夫で毛穴が目立ちにくいため、いろいろな用途で使われています。
牛革についてもっと詳しく知りたい方は、牛革はどんな革?特徴、種類、手入れ方法《写真多数》をご覧ください。
豚革|丈夫な地産地消ジャパンレザー
3つならんだ毛穴が特徴。
丈夫で軽いく、薄く加工しても耐久性が保たれるので、裏地には最適です。
安価な商品が多いですが、有名ブランドでメインの素材に使われていたりも。 他の革と違い、国内で消費された残りの皮が国内で革に加工される地産地消素材でもあります。
豚革についてもっと詳しく知りたい方は、豚革(ピッグスキン)はどんな革?特徴、構造、種類をわかりやすく解説をご覧ください。
山羊革|強くて繊細な革
豚革と同じく丈夫で軽い。薄く加工しても耐久性が保たれるので、裏地にも最適です。
安価なものから高級品まで、財布から靴まで様々な使い方ができます。
山羊革についてもっと詳しく知りたい方は、山羊革(ゴート)ってどんな革?羊革とのちがいをご覧ください。
羊革|しなやかだけれど強度は高くない
山羊に似た表情の革。柔らかく、キメは細かいですが、強度は山羊より劣ると言われます。
手袋やバッグ、裏地用として多く使われています。山羊革同様、安価なものから高級品まで使われます。
もっと詳しく知りたい方は、山羊革(ゴート)ってどんな革?羊革とのちがいをご覧ください。
馬革|お尻の革は最高級品
主にヨーロッパから輸入した原皮が使われます。衣料用、バッグなどに。
馬革のお尻部分深層部を削り出すとコードバンという高級素材になります。
一般的に多く出回っている家畜の革に対して、野生の動物や革を採る目的で養殖されている生き物の革がエキゾチックレザーと呼ばれています。
関連記事 革になる動物とその革20種紹介|革質、大きさ、特徴など
家畜以外の革がエキゾチックレザー
エキゾチックレザーは手に入りにくいものが多く、家畜の革に比べて高価な場合が多いです。
などなど。
関連記事 エキゾチックレザーってどんな革?|本物と偽物の見わけ方
人気が高まりつつあるジビエレザーもエキゾチックレザーの一種と言えます。
ジビエレザーとは?…捕獲された野生動物の革。「増えすぎた害獣の皮が原料」、「廃棄されていた原皮のリサイクル」などを理由に、エシカル消費できる原料として注目を集めています。
関連記事 ジビエレザーって何?
革を使うのはエシカル消費?|革は肉の副産物から作られる
家畜の肉を食料とし続ける限り、革を利用することには意味があるとデテログは考えています。
革を使う目的で家畜を育てたり、家畜の命を奪ったりすることはありえません(少なくとも国内で流通している牛革や豚革などにおいては)。
ですが、問題がすべて解決しているとは言えません。
家畜の革は肉の副産物から作られる|革を使うのはエシカル消費?
エシカル消費って?
環境や人に良いことにつながる消費活動
つまりお買い物などのことだよ
革製品を買うことがエシカル消費かどうかは判断がわかれるところかもしれませんが、すくなくとも人や環境に悪い消費とは言えないとデテログは考えています。
家畜の革は、肉をとったあとに残った皮を原料に作られています。
豚は皮(例:トンポーローなど)を食べることがありますが、それ以外の家畜の皮はあまり食べられていないかほとんど食べられていないか。
革として利用しないとこれらの皮はゴミとして処分することになってしまいます。
革のために牛や山羊を育てるのは全然割に合わないので現実的ではありません
少なくとも肉が食べられている間は、革を製造することには意味があり続けると考えています
廃棄物の皮が革になるなら合理的なサイクルだね
革を鞣すと大量の水が使われ環境破壊が進む?
海外の革工場を取り上げた動画を見たよ
革が環境破壊につながっているという意見が叫ばれるときに、海外のタンナーの動画や写真がセットで掲載されているのを見かける時があります。
世界には今でも環境汚染を続ける過酷な状況のタンナーがあるのかもしれません。ですがそれはごく一部の現実であることを知っておく必要があります。
すくなくともEU諸国や日本では、きびしい基準をクリアしないとタンナーの運営を続けることはできません。
皮革製造で大量の汚水や臭気等を排出するので公害の元のように考えられがちですが、日本では、鞣し工場からの排水は個別企業の排水処理施設あるいは下水道に排出され終末処理場で浄化されて河川、海に流入します。したがって、皮革排水が河川を直接汚染していることはありません。
出典革と革製品に関するQ&A|東京都立皮革技術センター
Q05人類はどうして皮を利用し始めたのですか
日本の一大皮革産業地域のたつの市では、タンナーからの排水をきれいにする前処理場を作り、地域の水質改善に取り組んでいます。
そこで兵庫県とたつの市(*)は、公共下水道事業の一環として皮革工場からの排水を処理する前処理場(公共下水道に流す前の汚水を処理する施設)を、林田川沿いにある3つの皮革工場帯に建設して水質保全を図ることにした。
出典 一般社団法人日本タンナーズ協会 革きゅん 使う前よりもっときれいに! 日本のタンナー業のエコな水処理の取り組み
工場近隣の川にはアユも遡上するそうです
とはいえ、世界中すべてのタンナーが、環境や従業員への配慮をしているかというと、断言するのはむずかしいと言わざるを得ません。
画像 海外の先進的なタンナー
私たち作り手にできることは、信頼できるお店で信頼できる素材を買うこと
消費者のみなさんも、好きなブランドがどんな流通経路を経た素材を使っているのか?まで興味を持ってもらえたらとてもうれしいです
トレーサビリティの意識改革も進んでいる
流通経路の話が出ましたが、最近では革のトレーサビリティに関する意識も変わりつつあります。
トレーサビリティとは、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることです。
出典 トレーサビリティとは | トレーサビリティ大学 | キーエンス
こういった経路を、消費者が知りたいときに知れる状態にしておくことが信頼につながります
革と皮のまとめ
革と皮の関係についてまとめると次の通りです。
革が環境や人道的によくないのではないかと考える方が増えているように感じます。
ただ、そういった方の中には、革について正しい知識を持っていない方も見受けられます。
どのような経緯であれ、革について興味を持つ方が増えたことを、職人としてうれしく思います。
これを書いている私の考えは、革は持続可能性が高く、理にかなった工業製品だということで変わりありません
多くの方に革の良さをもっと知って欲しいので、革についての知識を今後も広める活動を続けていきます。
革について学んだ上で皆さんが自分で判断して行動していただけたら幸いです。
長文お読みいただきありがとうございました。
関連記事 ヴィーガンレザーとは?合皮との違いは?
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