レザーブランドdete代表のミコガイです。

最近よく聞くヴィーガンレザーって何?

合皮と何が違うの?
そんな疑問にシンプルにお答えします。
これが回答なのですが、それだけだと誤解を与えてしまうかもしれないので、ちょっとだけ詳しく解説します。
この記事のテーマは大きく分けて3つ
- ヴィーガンレザーとは?
- ヴィーガンレザーは大きく分けて3種類!合皮との違いは?
- 未来キタ!天然素材由来のヴィーガンレザー
という内容でお話していきます。
ちなみに、先日書いた記事”ヴィーガンレザーが流行ると革製品はオワコン化します“がバズってChromeのおすすめ記事に紹介され、一日で約2000人の方に読んでいただきました。
ヴィーガンレザーがいかに注目されているかがわかります。
本題に入る前に、2019年8月時点での、革の専門家としての私のスタンスを話しておきます。
《革や合皮やヴィーガンレザーに対するdeteのスタンス》
- 合皮・・・革と比較するとあきらかに品質が劣る。使わない。
- 人工皮革・・・人口スエードのみ採用。それ以外使わない。
- 革・・・ピンキリだが良い革は人工皮革やヴィーガンレザーとは比較にならない品質の高さ。deteのメイン素材
- 天然由来のヴィーガンレザー・・・将来性に期待。
ヴィーガンレザーとは?
先にも話しましたが、
革のような見た目や質感で、なおかつ動物質の成分を使っていない生地がヴィーガンレザー。

じゃあ合皮のことですね。

合ってるけどそれだけじゃない。合皮じゃないヴィーガンレザーもあります!
お答えします。
ヴィーガンレザーは大きく分けて3種類!合皮との違いは?
- 合皮(合成皮革)
- 人工皮革
- 天然素材由来のヴィーガンレザー
合成皮革と人工皮革は別物です
合成皮革:化繊布を樹脂でコーティングしたもの
人工皮革:立体的に織った化繊の繊維にポリウレタン樹脂を染み込ませたもの。どちらもいずれは劣化しますが、人工皮革の方が革に近い構造で長持ちします。
関連記事 ヴィーガンレザーが流行ると革製品はオワコン化します より
合皮 | 人工皮革 | 天然由来 ヴィーガン | 革 | ||
---|---|---|---|---|---|
耐久年数 | ~3年 | ~6年 | 未知数 | ~30年以上 (手入れ次第) | |
多様性 (バリエーション) | 〇 | △ | 〇 | ◎ | |
価格 (合皮価格=×1) | とても安い (×1) | 安い。 (×2~2.5) | 結構高い (×5~) | ピンキリ (×1.5~30) | |
よくある劣化 | べたつき ひびわれ はがれ | べたつき ひびわれ はがれ | 未知数 | ひびわれ 変色 カビ | |
サスティナビリティ (持続可能性) | 〇 | 〇 | ◎? | ◎ | |
商品素材として アリ?ナシ? | × | △ | 〇? | ◎ |
既存の合皮や人工皮革の最大の欠点は、加水分解を起こしてしまうこと。
加水分解するとどうなるか?
ベタつきやひびわれなどの表面の劣化を引き起こします。
革なら適切なケアである程度劣化を防ぐことができるのですが、合皮や人工皮革はいくら丁寧にケアしても時間が経てばダメになります。
合皮の劣化が萎える
特に合皮については、耐久性が問題。
繊維を塩化ビニールやポリウレタンでコーティングしただけの構造なので(それぞれPVC、PUと呼ばれる)、どうしても経年の劣化は避けられない。
しかも、劣化の仕方がかなり残念で萎えるんですよね。
大切にしていたバッグを久々に使ったらボロボロのベタベタに・・・
ってショックですよね。
今後の技術革新でそういう点が解消されるなら、私どものブランドdeteでも内装などで人工皮革を導入を検討してもいいと思っています。

話はわかったけどヴィーガンレザーって既存の合皮と変わりがなくてガッカリ。
ここまでの情報ではおっしゃる通りです。
でも、ヴィーガンレザーはそれだけじゃありません!
ここからは、”本当のヴィーガンレザー”こと、”天然素材由来のヴィーガンレザー“についてお話していきます。
未来キタ!天然素材由来のヴィーガンレザー
天然素材由来のヴィーガンレザーとは、主に植物質の原料を使った革っぽい素材のこと。
今話題のサスティナビリティ(持続可能性)を実現するエコ素材ということで注目されています。
〈Mylo〉Bolt Threads社 マッシュルーム素材 2020年11月更新
シートの上で菌糸を培養させ、革のような質感や見た目に作り上げたヴィーガン素材。
写真は、2018年に製作された、ステラマッカートニーとのコラボモデルのプロトタイプです。
Products made with Mylo will be available from adidas, lululemon, Stella McCartney, and more starting in 2021.
引用元 Mylo Unleather
Google翻訳
Myloで作られた製品は、2021年から、adidas、lululemon、StellaMcCartneyなどから入手できるようになります。
2021年からアディダスやステラマッカートニーなどで販売が開始されるそうです。
公式ページの説明で一部気になる部分があります。
We process the resulting network and tan and dye it to make Mylo.
引用元 Mylo™ | Vegan, Sustainable Mycelium Leather
革の分野でtanといえば、革に使う薬品のタンニンか、タンニンの作用で日焼けさせるの意味かなのですが、このヴィーガン素材でtan and dyeというのは、日焼けで色が変わることを意味しているのでしょうか?(英語あまりわからない)
だとすると、タンニンが含まれたヴィーガン素材だということになりますね。
また一歩、ヴィーガンレザーが本当の革に近づいたのかもしれません。
〈Muskin〉 マッシュルーム素材
何これ!?新しすぎる!
マッシュルームの菌を培養し、革のような繊維を作り上げているのだとか。
革というよりも毛皮に近いようなワイルドな雰囲気ですが、可能性は多いに感じます。
↑のリンクからサンプルを購入できるようです。
Pinatex ピニャテックス パイナップル繊維素材
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↑こちらは前回のヴィーガンレザーの記事でも紹介したパイナップル繊維由来のヴィーガンレザー。商品化が進んでいて一歩先を行っている印象です。
2020年3月、ピニャテックスの実物を手に入れました。
こちらで紹介しています。

天然由来ってコンセプトはおもしろいけど、革みたいなクオリティはないでしょ?
って思う方もいらっしゃると思います。
私はまだ手にできていない為、↑で紹介した商品のクオリティについては何とも言えませんが、2019年時点での私の結論は以下の通りです。
現に、2020年時点で日本でヴィーガンレザーとして販売されている商品のほとんどは、従来と何ら変わりのない合皮や人工皮革。でも、10年後、20年後はかなり楽しいことになっているはず。
2020年時点ではですが、革の方が高品質ですし、革こそエコでサスティナビリティです。
※日本や欧州先進国では環境に配慮していないタンナーは排除されています。
※牛、豚、山羊などの原皮は肉の副産物なので、肉食が維持され続ける限りは、革は環境面でも動物愛護観点でも合理的な材料です。
でも、ここから先はハイスピードで進化が続いていきそう。
キノコの菌を培養したヴィーガンレザーは、Muskin以外でも研究が進められています。
2020年2月 ピニャテックスを使った時計を見つけました。
2020年3月 うちにもついにピニャテックスのサンプルが届きました!

2020年8月 ピニャテックスのお財布が発売されました。次の章で紹介。
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天然由来のヴィーガンレザー製品はどこで買えるの?
2020年に入ってからは、ヴィーガンレザー熱の高まりを感じます。
ですが、楽天でヴィーガンレザーで検索してみても、出てくる商品はほとんど合皮のようですね。
たとえばこんな商品があります。
先ほど紹介したピニャテックスのお財布です。
Amazonはどうかというと、やはりこちらも天然由来の新しいヴィーガンレザーはほとんど見かけない。
合皮の商品が多い中で、唯一目についたのはこれ。
木で革っぽい質感を作る発想はおもしろいですよね。
ヴィーガンが多いヨーロッパでは、菌糸レザーのスニーカーやバッグなども買えるらしいです。
例えば↓これ

アッパーは菌糸レザーとリサイクルPETの人工皮革
アウトソールは天然ゴム、インソールは天然コルク、ライニングはエココットン。

アッパーは大麻葉、リサイクルPETの人工皮革
アウトソールは天然ゴム、インソールは天然コルク、ライニングはバイオセラミック。
ちなみに菌糸レザースニーカーの値段は599€、へンプスニーカーは€499。
それぞれ71,335円と59,426円(2019年8月8日時点)
高い・・・
このブランドはヴィーガンレザーにこだわっているのではなく、ヴィーガンファッションにこだわっているようです。
うちは革ブランドなので革基準で考えてしまいますが・・・
この記事のまとめ
- ヴィーガンレザーとは、革を模した素材のこと
- ヴィーガンレザーと呼ばれる素材は大きく分けて3つ
-合皮、人工皮革、天然由来のヴィーガンレザー - 合皮は劣化が萎える。人工皮革も劣化する
- 現時点では革に匹敵する合皮や人工皮革は生まれていない
- 天然由来のヴィーガンレザーは今後進化を続ける見通しで、ヨーロッパではすでに商品化が進んでいる
というお話でした。
ある情報筋によると、2019年時点でのヴィーガンレザーの注目度は、国内でもアパレルブランド方面を中心に急速に高まっている模様。問い合わせが多くなっているんだとか・・・
私の考えですが、いくら環境に配慮したヴィーガン素材が登場したとしても、革を無くすのは合理的ではありません。
理由は、肉が消費される限り、原材料の皮は排出され続け、処分するかリサイクルするかの選択に迫られることになるから。
皮を今後どう処分するか?について語っているヴィーガンレザーメーカーや、推し進めるブランドは見た事がない。
きっと、これはこれで黙殺されつつある不都合な真実の一つなのでしょう。
とはいえ、ファッション素材の一つとしてはおもしろい。
今後もヴィーガンレザー業界から目が離せそうにありません。
それではまた。
多数の反響をいただいた記事です。こちらも一緒にどうぞ。
2020年10月更新 本当にサステナブルなのは本革という語られない真実
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コメント
ピンキリのキリは最低なので、品質悪い側では…すみません。
直しました。ありがとうございます。