ジビエとジビエレザーってどういう関係?
ジビエレザーの品質ってどう?
どこで買えるの?
そんな疑問を持った方に向けた内容です。
昨今、革関連の事業者やクラフターの間で、ジビエレザーの認知が高まりつつあります。今後、一般消費者にも少しずつ知られていくことになるでしょう。
この記事では、にわかに盛り上がりつつある『ジビエレザー』に焦点をあて、
などについて掘り下げてみます。
ジビエレザーってどんな革?
ジビエレザーとジビエレザーの活用について深掘りします。
ジビエレザーはジビエ肉を採った残りの皮(革)
ざっくりいうと、ジビエレザーというのは、ジビエ肉をとった残りの皮を原料に作られるレザー(革)のこと。
国内におけるジビエレザーの現状は、害獣被害対策として捕獲したシカやイノシシやツキノワグマなどの皮を原料にしていることがほとんどです。
そのため、革を使うことを目的にした素材ではなく、害獣被害を防ぐのが第一目的で、その副産物のジビエのまたさらに副産物がジビエレザーです。
ジビエ(gibier)は本来野生動物の肉を指すフランス語ですが、「ジビエの副産物から作られる革=ジビエレザー」という造語として認知が広まりつつあります。
ジビエレザーという言葉は最近できたものですが、日本の野生の鹿革には古い歴史があります。
日本列島がかたちづくられた後の集落跡からは獣皮・樹皮・藁編みの甲冑と想像されるものが出土しており、鹿皮を武具へ利用したのは弥生時代に始まったと言われています。
出典 日本の文化と鹿|日本鹿皮革開発協議会
エキゾチックレザーとジビエレザーのちがい
エキゾチックレザーは家畜以外の生き物全般の革を指す言葉です。広い意味でとらえれば、ワニ革やトカゲ革やサメ革と同じく、ジビエレザーもエキゾチックレザーの一つと言えます。
関連記事 エキゾチックレザーってどんな革?|本物と偽物の見わけ方
ジビエレザーのいいところ
ジビエレザーの一番の良いところは、すべてが一点ものになる天然素材のおもしろさだと思います。
供給量は少なく、希少価値が高い素材でもあります。
猪革の丈夫さや鹿革の唯一無二のしなやかさなど、革素材としての品質の高さも魅力です。
根拠なくエシカルだなんだというマーケティングはいかがなものかと思うケースがありますが、ジビエに関しては実態が伴ったエシカル消費と言えるんじゃないかと。
ジビエレザーはサスティナブルな素材
革に使わなければ捨てられてしまう皮を再利用するのがジビエレザー事業です。
シカやイノシシなどの捕獲が行われる限り、持続可能性が高いビジネスということができるでしょう。
2021年時点では、環境省と農林水産省は現状のシカ・イノシシの個体数が多すぎる状態と認識しており、今後も捕獲数を増やしていく活動を続けるようです。
捕獲鳥獣のペットフードや皮革等への有効利用、ジビエ利用における衛生管理の高度化
出典 鳥獣被害の現状と対策
の促進等を国等が講ずる旨を明記。(R3改正時)
ジビエレザーを使うと社会貢献になる?
ジビエレザー製品を使うと、ジビエの流通や捕獲に携わる業界にお金が流れ、鳥獣被害から農家のくらしを守る活動に貢献できます。
主に農家が野生動物から被害を受けていて、その額は毎年100億円を超えています(令和2年の農作物被害額は161億円)。
くわしくは、鳥獣被害問題とは?ジビエレザーは解決策になり得るか?でお話ししています。
ジビエレザーにはどんな動物の革がある?
ほとんどの哺乳類の皮は革に加工することができ、捕獲さえできれば作ることは可能です。
関連記事 革と皮の違いとは?革の製法や加工法も紹介
一般に流通している日本のジビエレザーで最も多いのは二ホンジカの革(ホンシュウジカ、エゾシカなど)で、次に多いのがイノシシの革と言われています。
かなり希少ですが、ツキノワグマやヒグマの革をなめしている業者も存在します。
熊革。キズが多いし案外小さい。たったの61デシ。 #革鞣し #白鞣し #熊革 pic.twitter.com/R3y8gpbgWp
— タツノラボ (@tatunolabo) April 17, 2018
ジビエレザーは何に使われる?
イノシシ革は豚革と似た特徴があり、同様にいろいろな革製品に仕立てることができます。
豚革と比べて野生らしい荒々しさがあり、背中のたてがみの毛穴が目立つのも特徴です。
参考記事 豚革(ピッグスキン)はどんな革?特徴、構造、種類をわかりやすく解説
鹿革はしなやかさが特徴で、布のようにやわらかなバッグや衣類、小物などに使われています。
鹿革は、印伝という漆を使った製法もに用いられるほか、お掃除などに使うセーム革の原料としても有名です。
なお、セーム革の最高級品は国内のシカではなくキョンというシカ科の動物の皮で作られており、その原皮は主に中国からの輸入に頼っています。
さらに余談ですが、キョンは元来日本にはいない動物でしたが、動物園から逃げ出した個体が野生化し、千葉などで年々生息域を広げつつあります。
その後、爆発的に増え続け、その数は、千葉県内でおよそ4万4,000頭を超え、東京都に近い柏市でも目撃されるなど、都内に接近してきている。
引用元 「キョン」大量発生で被害相次ぐ 千葉県内でおよそ4万4000頭を超える
生態系への影響や農作物被害が問題になっているので、国産キョンの利用も推進して欲しいと思います。
メーカーがジビエレザー採用に二の足を踏む理由
現時点でジビエレザーの採用に二の足を踏んでいる革製品メーカーやアパレルブランドも多いと思います。その理由を考えてみましょう。
1~3に関しては私自身がネックに感じていることです。
deteでは大きなパーツが必要な製品が多く、鹿革や猪革では取ることができなかったり、廃棄が多くなってしまいます。
財布や名刺入れなら全く問題ないと思います。
供給量は今後増えていく可能性はありますが、それと同時に大手のメーカーがジビエレザーを使い始めた場合、取り合いになってしまい安定的に仕入れることができなくなる可能性もあります。
もちろん、そこを逆手にとり、希少価値の高い素材として限定販売をすることも可能なので、必ずしもデメリットとは言えないでしょう。
ジビエレザーが抱える課題には、解決が目指せるものとそうでないものがあります。
ジビエの皮はどれくらい使われている?
猟師兼ジビエレザー販売をしているバリードさんのお話では、現状ではほとんどが廃棄処分されているということです。
詳しいインタビューの内容は先ほども紹介した【猟師にインタビュー】ジビエレザー(鹿・猪)原皮流通の現状は?をご覧ください。
ジビエレザーの流通量を増やすにはまだまだ課題が山積みです。でもこれから盛り上げていきたい。
これからジビエレザー本気でやろうっていう人が増えない。
— dete® (@mkgx81) September 6, 2021
ちゃんとみんなが儲かる仕組みにする必要があって、そのためにはお客様にも理解を求める必要があると思います。
害獣の社会問題についての啓蒙とかも。私はまだ勉強中。
ネットで買えるジビエレザー製品
ネットで手に入るジビエレザー製品を集めてみました。
地元で獲れたジビエの革を使ったふるさと納税案件が多いようです。
ふるさと納税で買えるジビエレザー製品
過去記事の「財布・バッグをフルオーダーメイドできる革職人・レザーブランド10選」で紹介したRAGTIMEさんが関わっている商品です。
猪革を手縫いで仕立てたプレミアムなコインケースに仕上がっていますね。
藍染のエゾシカ革を座面に使ったタモ材のスツールです。タモと藍の経年変化が楽しそうですね。
広島県の鹿原皮を兵庫県でなめしたジビエレザーを使ったコインケースです。タンニンなめしなので色つやの変化が楽しそうです。
エゾシカ革を使ったカジュアルな靴です。写真で判断するにヌメのように見えますね。育て甲斐がありそうです。
宮崎県えびの市で獲れた鹿の革を使ったコインケースです。ふるさと納税でこの価格はかなり安価ですね。
出典 ふるなび
こちらのキーホルダーは自ら獲った鹿の革で作っているそうです。
出典 ふるなび
兵庫県宍粟市で捕獲した鹿革で作られたがま口財布です。鹿革もこんなに鮮やかに染まります。
出典 ふるなび
こちらのキーケースは、なんと、一人の猟師が捕獲から鞣しから製品製作まで手掛けているそうです。
その他のふるさと納税で買えるジビエレザー製品は、楽天ふるさと納税とふるなびがが豊富で、ほぼほぼ同じ寄付案件がヒットするようです。
その他のふるさと納税で手に入る革製品について、〈ふるさと納税〉革製品の返礼品を職人がチョイスでくわしく書いています。
楽天で買えるジビエレザー製品
猪の革を使ったラウンドジップの長財布です。
厳密に言えば革製品ではなく皮製品の毛皮ラグマット。北海道で捕獲されたエゾシカの毛皮が使われています。
エゾシカの革を使ったスニーカーです。
エゾシカ革を使った名刺入れです。
写真で見た感じでは、プルアップ(シワや伸びた部分の色が明るく変化する状態)する加工がされているように見えます。
加工方法によって鹿革もいろいろな表情を見せてくれますね。
ジビエレザーを使ったブランド
amarilloは、エゾシカ革を使った革製品のブランドです。北海道を拠点に活動されていて、2021年12月にユナイテッドアローズでトランクショーを開催していました。
ジビエレザー生地が買えるお店
一枚からジビエレザーが買えるお店はまだまだ多くないですが、じわじわと広がりを見せているのを感じます。
WAVE-original
Yahoo!ショッピングでエゾシカ革を扱っているお店です。
WAVE-original鹿革‐Yahoo!ショッピングでベージュだけでなくいろいろな色のエゾシカ革を購入できます。
VARIED
国内で捕獲したシカやイノシシの革を扱うお店です。
ご自身も猟師をされていて、別記事の【猟師にインタビュー】ジビエレザー(鹿・猪)原皮流通の現状は?でご協力いただきました。
私も、鹿革を一枚購入させていただきました。
ジビエレザーの商品化を目指し研究中です。
BASEのショップから注文可能です。
フジトウ
老舗の革屋フジトウさんでもエゾシカ革を扱っています。染料で絞り染めをほどこしたインパクトのある素材です。
このような特殊な染め革は自分で二次加工を依頼したり特注でしか作れない場合が多かった中で、絞り染め×エゾシカ革というダブルのインパクトを打ち出した攻めの一枚に仕上がっています。
まとめ
ジビエレザーは、ジビエの肉を採った残りの皮をなめして革にしたもののことで、主にシカとイノシシの革が使われています。
天然ならではのキズが特徴で、風合いもそれぞれにちがう天然素材ならではの楽しさがある革です。
将来的に、牛や豚をふくめた革全体の流通量は減っていくことが予想されますが、ジビエレザーはむしろ増えていくと考えています。
消費に対して倫理感が求められる時代ですが、ジビエレザーはそれ自体が社会貢献につながる商品と言うことが言えるでしょう。
それはなぜか?について、鳥獣被害問題とは?ジビエレザーは解決策になり得るか?でお話ししています。
ジビエレザーは天然素材ゆえ制約が多く、導入はむずかしいと感じるメーカーも多いでしょう。
その分、上手に活用できれば魅力的な製品に仕上げられるポテンシャルは十分に持っています。
デテログは、微力ではございますが、ジビエ素材を応援することで、鳥獣被害を減らし日本の生態系を守るお手伝いができたらと考えています。
この記事は以上です。長文お読みいただきありがとうございました。
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