
実は、革はサステナブルな素材なんです。
ヴィーガンレザーよりもずっと(ボソ)。
その理由についてお話しします。
文献の引用があって少しムズカシイ話も出てきます。根拠を示すために載せてるだけなので読み飛ばしもらってOKです。
「サステナブル(Sustainable)な社会」とは、「持続可能な社会」を意味します。それは、地球の環境を壊さず、資源も使いすぎず、未来の世代も美しい地球で平和に豊かに、ずっと生活をし続けていける社会のことです。
皮=なめしていない状態
革=なめしを行い、加工しやすい状態にしたもの
レザー=本革のこと
※ヴィーガンレザーやフェイクレザー、合皮などは全くの別物です。
- 本革がサステナブルだといえる理由
- 革が無くなったら何が起こるのか
- 革製品がすばらしいというポジショントーク
本革がサステナブルだと断言できる理由
レザーはサステナブルな素材です。そう断言できる理由についてお話しします。
理由:レザーはお肉の副産物だから
牛革は捨てられる皮のリサイクル品
牛革の原料は牛の皮。つまりこれはお肉をとった残りのリサイクル品です。
牛革、豚革、山羊革などのレザーだけのために家畜を育てたり命を奪ったりすることはありえません。
原皮は価格が安く、原皮目的で育てるメリットがないので考えられないです。
原皮の価格を知ればレザーが副産物だとわかる

原皮ってめっちゃ安いです。
令和2年8月の国産牛の原皮輸出価格は、一枚当たり834円。
令和2年8月の輸出実績は、52,410枚(前年比206.0%、前月比145.8%)で、前年・前月を大きく上回った。輸出平均価格は834円/枚
令和2年8月の国産豚の原皮輸出価格は、一枚当たり275円。
令和2年8月の輸出実績は、969,238枚(前年比86.2%、前月比77.7%)で、前年・前月を下回った。輸出平均価格は275円/枚(前年比+1円、前月比+34円)となった。
コロナ禍で原皮価格が地の底まで落ちており、東京市場原皮価格によると、令和2年9/28時点の牛原皮は1年前の1/100、豚原皮は1/50です。
古いデータですが、1981年時の国産の豚原皮のキロ単価は以下の通り。
1枚当り重量5.6kg,1枚当り価格394円,kg単 価70.4円である。
一頭の牛からとれる肉はアメリカ産で高くて数十万円、ブランド和牛にいたっては、平均して100万円~200万円。
仙台牛の値段は幅広く見積もって1頭100万~200万円くらいです。
引用元 仙台牛って一頭いったいいくらするの?知られざるその価格
社会情勢や需要の影響で下がっていることを含めてもです。肉の価値に対して原皮の値段はとにかく安い。

原皮を厳選し、高い技術で加工することでレザーの価値が上がるわけですが、原皮だけの為に畜産をしていたらとうてい割には合いません。
豚皮はレザー以外にもいろいろな製品に生まれ変わる
国産の豚の皮は、レザーになる以外に、膠(ニカワ)という接着剤や、食用のゼラチン、コラーゲンを利用した化粧品などに生まれ変わります。
革もコラーゲンも膠も、いただいた命を余すことなく使うという美しい文化だと私は思いますが、あなたはどう感じますか?
現代のタンナーは環境問題に真摯に取り組んでいる

革をなめす時の汚水が環境を汚すことはないの?
日本のタンナーや革に関わる団体、地域全体で環境問題への対策に取り組んでいます。
例えば、日本エコレザー基準というものがあり、認定された革は、発がん性染料を使っていないこと、「排水や廃棄物の適切な処理を厳守していることなどが認められています。
革製造業者以外の方は、革の製造業者を明らかにする必要があり、その業者による、「発がん性染料不使用」および「革製造排水および廃棄物の適正処理の遵守」などの証明書類と宣言書が必要になります。
革づくりが盛んな姫路市では、革をなめす時に出る排水処理にかかる経費を市が支援する取り組みを行っています。
かつては、革づくりが環境を壊していた時代もありました。ですが、今は排水、周辺環境、従業員の働き方への考え方も変わり、日々進歩と改善を続けています。
新世代のヴィーガンレザーと本革、どっちがサステナブル?
このDeteLogでも紹介していますが、ピニャテックスやマッシュルームレザーなど、新世代のヴィーガンレザーが続々と誕生しています。
それらのヴィーガンレザーと本革では、どちらがサステナブルでしょうか?
私の考えではですが、現時点では本革の方が持続可能性が高いと考えられます。
新世代の素材は将来性が未知数なのに対し、食用の肉がすぐになくなるようなことは考えにくいから。

新素材も楽しみではありますが、サステナブルかどうかでいうならレザーが圧倒的です。
次の章では、もしレザーが利用されなくなったらどうなるか?を考えてみます。
皮を革として利用しないとどんな世界になるか?
皮を利用しないとこうなります。
- 皮を焼却 ➡ 温室効果ガスが増える
- 皮の廃棄費用がかさむ ➡ 肉の価格が上がる
- すばらしい革製品がこの世から無くなる
皮を焼却 ➡ 温室効果ガスが増える
皮を廃棄するとなると焼却処分することになるわけですが、その弊害として、まず温室効果ガスが出ることがあげられます。
他にも、においや処分施設の確保など、問題は多いです。
皮の廃棄費用がかさむ ➡ 肉の価格が上がる
もし、皮の需要がなくなったら、食肉を加工する業者がお金を払って処分しなくてはいけなくなり、採算が合わなくなります。
それを原因として廃業を選ぶ業者も出てきます。お肉の値段も当然上がります。
すばらしい革製品がこの世から無くなる
合皮のクオリティが上がっていることは認めます。うちには合皮のソファも椅子もあってどちらもお気に入りです。ですが、革のクオリティには全く届いていない部分もあります。
いろいろありますが、一つだけ挙げるとすれば、経年変化のちがいがあります。
革は味わいの変化を楽しむことができますが、合成皮革や人工皮革などの人造皮革は、加水分解により、確実に劣化します。
劣化までの期間は、商品の製造時期や保管状況、つかい方にもよりますが、早ければ買ってすぐ~数年で寿命が来ます。
育てながら愛せる革製品の文化は残していきたいですね。
革職人である私の立場で言ってもポジショントーク的な側面は消えませんが、それでも言っておきたい。

革製品はいい。

革製品はすごい。

革製品はすばらしい。

かわせい・・・
この辺にしておきますw
牛の皮を食べる文化は世界中探してもごく一部のみ

牛の皮を食べれば革を作らなくても困らないのでは?
食べる国はないんですか?

アフリカやインドネシアの一部で今でも食べられているようです。
ピーナッツソースに牛皮の煮込みをトッピングしたもの。
引用元 メシ通 バックパッカーから研究職へ。「ブルキナファソ」に魅せられた人類学者に聞く“アフリカメシ”の未知なる世界
皮も肉と同じように食べられていればレザーを作る必要はありません。
ですが、実際には世界の牛皮のほとんどは食用として利用されていません。
私は口にしたことはないですし、食用になっているものを見た経験もないです。
そんなこんなで、皮は原皮業者やタンナーに回され、レザーやその他の副産物に形を変えています。
本革こそがサステナブルだという話のまとめ
本革がサステナブルな素材だと断言できる理由について書きました。
その理由は、革がお肉の副産物だからです。
みんながお肉を食べている間は皮が産業廃棄物として皮が処分され続けるわけで、それを解消する一つの方法が皮をレザーとして利用するということです。
『革製品を使うことが環境保全の端っこにかすかに触れている』くらいなら言い過ぎではないはず。
革製品のすばらしさを挙げる際にポジショントークという言葉を使いましたが、それは、

私が革製品のすばらしさをうたうとステマっぽいですよね
という話であって、本革がサステナブルだという部分についてではありません。
ということを伝えたく、この記事を書きました。
合皮や人工皮革などの人造皮革を否定する気はありません。
※実際、うち(dete)でも素材の一つとして人工スエードを使用しています。

ですが、かつての人造皮革の名前を変えて、ヴィーガンレザーとしてもてはやし、本革を悪いものとする話は根拠がとぼしく、とても賛同はできません。
革は万能ではありません。
発展途上国の古いタンナーなどは排水や環境汚染の問題をはらんでいますし、働く人の環境も考え直さなくてはいけない。
でも、エコレザー事業や、環境や排水に配慮したラセッテーなめしなど、前に進もうとしている団体や企業も多い。
deteは、今後新たに爬虫類革の仕入れを行わないことに決めました(多くが革の製造を目的に飼育、屠畜されているため)。
サスティナブルが叫ばれる時代だからこそ、革という素材を今一度見直していただきたいです。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
あなたはどう感じましたか?
コメントで意見を聞かせてくださいね。
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コメント
正直タンパク質ごちゃごちゃするやつでコラーゲンとか皮膚片とかから皮も培養できそうな気がする…
門外漢なのでわかりませんが、できたとしても全く驚きはありません。
その時はぜひ試してみたいです。