amazonで買える激安防水スプレーのLOCTITE(ロックタイト)と、レザーケアの定番ブランドCollonil(コロニル)ウォーターストップの性能を比較して動画と写真で解説しました。
安い防水スプレーって使えるの?
防水スプレーは良い物選んだ方がいいの?
こんな疑問にお答えします。
先に結論を書きます。
ロックタイトとコロニルはどちらも防水スプレーとしてちゃんと使えるが、コロニルの方が効果は大きい。
↓の写真は、溝で区切った ヌメ革の各部分に各スプレーを使ったり使わなかったりしたところに水滴を垂らしてしばらく経ってからふき取った状態です。
コロニルの防水スプレーをかけたところがシミが薄いです。
なお、コロニルブランドで販売されている革製品用防水スプレー4種の違いについては、コロニルの革用防水スプレー4種類の違い|迷ったらウォーターストップで間違いなしをご覧ください。
くわしく深掘りします。
防水スプレーを比較しようと思った経緯
ロックタイトの防水スプレーが買いやすいお値段だからです。
革製品のお手入れを身近に感じていただきたいからです。
革製品を長く愛していただくためには、より適切なケアを継続することが大切ですが、コストが多くかかるとお手入れがおっくうになってしまいますよね。
中でも、防水スプレーのコストが馬鹿にならない。説明書き通りに2週間に1回くらい使っていたら、2000円近くする防水スプレーもあっという間になくなってしまいます。
高級な防水スプレーを時々使うより、ほどほどの性能でマメにケアしてもらう方が効果的なのではないか?
そう考え、コストを気にせず使える良質な製品が無いものか?と、今回の検証にいたりました。
今回検証する二種類の防水スプレーはこちら
- 左:Henkel (ヘンケル) LOCTITE(ロックタイト) 超強力防水スプレー
- 右:Collonil(コロニル) [コロニル] 防水スプレー ウォーターストップ 400ml
お手頃な防水スプレーですが、きちんとフッ素系です。
フッ素だと何がいいの?
革表面に膜を作らないから革の透湿性をそこなわないと言われているよ。
つまりフッ素系の防水スプレーを使うと、革を防水透湿素材に近い性質にしてくれるんだ。
洋服に使うゴアテックスみたいになるんだね。
今回ご紹介するロックタイトとコロニルの価格には大きな開きがあります。
効果に値段なりの差はあるのか?じっくり検証していきます。
ロックタイトとコロニルどちらがおすすめ?検証します
それぞれのスプレーの性能を比較します。
より実践的な実験の為、性質の違ういくつかの革を使いました。使用した革は以下の通り。
各革に水と油を垂らした時に、どんな影響があるかを検証する為、一枚の革を4ブロックに分けました。内訳は、以下の通り。
- 右上:ロックタイト塗布
- 右下:コロニル塗布
- 左上:防水処理なし
- 左下:防水処理なし 水/油を垂らさない
こんな感じで厚紙で区切ってスプレーしました。
実験の準備。スプレー塗布
それぞれのスプレーを実際に使ってみます。
ロックタイトにスプレーを塗布します。
ロックタイトの使い方表記
20cm離して、全体がしっとりするまでスプレー。
屋外で新聞紙などを敷いて使うことを推奨します。
ヘアスプレーのような勢いを予想していたところが、壊れているのかと思ったくらいに噴射が弱い。ミストのような感じです。
ところがこれが使いやすい。細かいミストで成分が出てくるので、ムラなく塗れる。
噴射の範囲が狭いので、小物には使いやすいです。大きな製品に使う場合は、十分に離して使う方がベター。
TOIANO パープル。塗布したそばからすぐに浸透します。
こちらはエルバマット。
びっくりするくらい吸ってくれない。
非常に油分の多い革なので、元来持っている防水性がそもそも高くて、防水スプレーがなかなかしみ込んでくれません。ゆっくりと時間をかけて浸透していきます。
スプレーの説明書には、塗布してから20分くらい乾かすと書いてありましたが、ことこの革にいたっては、1時間ほど放置する必要がありました。
コロニル塗布
コロニルの使い方表記。
20~30センチ離して、表面が軽く湿る程度に2回スプレー。
コロニルだけが2回スプレーというのは誤算。
正しい使い方は尊重したいところですが、これでは効果に差が出てしまう可能性があるので、スプレー回数は1回で統一することに。
コロニルのスプレーは、ロックタイトとは逆に、しぶきが大きく、ムラになりやすそうな粗いスプレー。値段が高いコロニルの方が、スプレーボトルの品質が低い(※)です。
※スプレーの粗さについては納得できる理由がありました。健康被害を減らすためにあえてこうなっています。くわしくは後半で解説します。
また、不用意に広範囲に噴射が広がってしまう為、今回のように狭い範囲にスプレーしたい場合は少し困ります。
両スプレー塗布後。
いずれも、まだ乾いていない状態で色が濃くなっています。
真ん中のエルバマットイエローをご覧ください。
右上のブロックがロックタイト塗布部分、右下がコロニル塗布部分です。コロニル塗布のブロックは、写真でもわかるくらいに水玉のような、まだらのムラになっています。このムラが後々どのように影響してくるでしょうか。
1時間放置後
濃くなった色は元通りになり、スプレーしたてで気になったムラは無くなりました。
実験準備は完了。ここからが本番です。
結果。動画で見るロックタイトとコロニルの防水性能差
防水スプレーをかけた革に水をかけて検証してみます。
動画は、11分間の変化を19秒にまとめたタイムラプスです。
動画を載せておいてなんですが、あまり変化がわかりません。
それもそのはずです。吸水性の高い革で、尚且つ防水処理をしていないブロックは、水を垂らした瞬間にほとんど吸い込んでしまい、それ以上の変化はありません。
そして防水処理をしたブロックは、いずれの防水スプレーとも、どの革においてもかなり高い防水性能を発揮していて、最後までほとんど吸水が見られません。
写真もどうぞ。
実験開始
実験開始から15秒後
実験開始から80秒後
実験開始から3分30秒後
実験開始から7分後
実験開始から10分ごろにティッシュで水気を拭き取りました。
拭き取り後。
Cはコロニルをスプレーしたところ、Lはロックタイトをスプレーしたところ、右下はスプレーしていないところです。右上には水をかけていません。
唯一、ヌメ(一番左)は少々水を吸って色が変わっています。こういった吸水性の高い革は特に防水スプレーを使う必要性が高いと考えられます。
水濡れ防止に、フッ素系の防水スプレーははっきりとした効果があることがわかりました。
ところで、肝心のロックタイトVSコロニルの結果はどうでしょうか?
Cがコロニル、Lがロックタイトです。
ヌメ以外の革については、ロックタイト、コロニルともにほぼ完璧に水を防いだと言えるでしょう。
ヌメは若干ですが効果に差が出ています。コロニルの方が水シミが小さいです。
誤差の範囲とも取れますが、コロニルは価格差のメンツを何とか保った形でしょうか。
続いては防油性能の比較です。
先に結論を書くと、防油性能には差が出て、コロニルの方が優秀という結果になりました。
ロックタイトとコロニル防油性能差
垂らしたのはミシンオイル。さらりとした液状のオイルなので、革への親和性は抜群です。
水がほとんど浸みこむことがなかったエルバマットも、今回はほかの革と同じようにシミができています。
防水スプレーをしたブロックとしなかったブロックの差は歴然で、スプレーをしなかったブロックは、みるみるうちに革の内部までオイルが浸み込んでいく過程が見て取れます。
さらに、今回はロックタイトとコロニルで結果に差が出ました。コロニルの方が油の浸透が遅く、拭き取ったあとのシミも小さいですね。
油汚れをより防いでくれるのは、コロニルの防水スプレーだと考えてよさそうです。
15秒後
3分後
8分後、拭き取り
拭き取ってから1分半後
コロニルはオイルからもしっかりと革を守っています。
油を吸いやすいヌメ革でもコロニル防水スプレーをかけた部分はある程度油じみを防いでくれます。
水を垂らした時には両者に大きな差が出なかったのに、油の場合はコロニルとロックタイトではっきりとした差が出たことに驚きました。
高いだけのことはあるようです。
半日後の様子。
油は徐々に浸みこみ、揮発して目立たなくなりますが、防水スプレーを使ったブロックは革への影響も最低限で済みます。
防水スプレーの日焼け予防効果を実験
結論から言うと、コロニルのウォーターストップを使った方がしっかりと日焼けを防いだ結果になりました。
実験内容
区分を分けてスプレーをまんべんなく塗布し、日の当たる室内に1年間(2017年11月~2018年12月)放置。
途中(2018年夏ごろ)、もう一度同じようにスプレー塗布しました。
あらためて結果発表。
左半分の2区分:防水スプレー無し
右上:ロックタイト 超強力防水スプレー)
右下:コロニル 防水スプレー
でした。
- 防水スプレーを使っていない左側半分は日焼けして赤く濃くなった
- ロックタイト防水スプレーを使った右上は日焼けが穏やか
- コロニル防水スプレーを使った右下は日焼けがかなり抑えられている
王道コロニルのメンツが保たれた結果となりました。
革の日焼けについては、ヌメ革日焼け実験|オイルやクリームで日焼けは早まる?も合わせてごらんください。
ロックタイトとコロニルの防水スプレーのスペック比較
スペックについても触れておきましょう。
分量
〈ロックタイト〉: 420ml
〈コロニル〉: 400ml(200mlもあり)
製造国
〈ロックタイト〉:日本製
ロックタイトはHenkelというドイツのブランドの製品ですが、この製品の製造はヘンケルジャパンが行っています。
〈コロニル〉:ドイツ製
製品特徴の比較
〈ロックタイト〉
【特徴】
●水、油を強力に撥水、撥油
●通気性、風合をそこなわない
●皮革にも使用できるフッ素パワーで水はもちろん、油もはじき、優れた防水・防汚性を発揮。
〈コロニル〉
素材に浸透したフッ化炭素樹脂が防水効果を与えます。水や汚れの浸透を防ぎ皮革本来の美しい風合いを維持し柔軟性や通気性を損ないません。
ゴアテックスにもお薦めの防水スプレー
UVプロテクション
共通しているのは、通気性や風合いを維持しつつ防水効果があるということ。
ロックタイトは防汚と撥油をうたい、コロニルは紫外線に強い点をアピールしています。
成分比較
〈ロックタイト〉
主成分:フッ素樹脂、石油系炭化水素、LPG
第四類第一石油類294ml
〈コロニル〉
成分:防水剤(フッ化炭素樹脂)、炭化水素系溶剤、ナフサ、ブタン、プロパン、ジメトキシメタン、酢酸ブチル、メタノン
第四類第一石油類190ml
くわしくは、長いので記事の別ページに移動しました。記事の最後にリンクを貼りましたが、この記事だけで防水スプレーの効果比較はできるので、ぶっちゃけ読まなくていいですw。
コロニル ウォーターストップのスプレーが粗い理由
検証のところで書いた通り、高価なコロニルの方がスプレーの粒子が粗く、品質が低いように感じるのです。
これについて公式の方からご説明いただきました。
防水スプレーの付着率(周りに飛散させないため)の規定が厳しくなったのは、防水スプレーを吸い込んでしまう危険性を抑えるためで、ある時期から新たに輸入する防水スプレーはこの検査をパスしなければ輸入できなくなりました
— Collonilコロニル(日本公式) (@collonil_jp) November 1, 2021
要は、輸入規制があってあえてこうしているということ。
その目的は、広がったスプレーを吸入することによる健康被害を無くすためです。
納得の理由でした。
防水スプレーを多量に吸い込むとどうなるかというと、肺の中が防水されてしまい、酸素を取り入れることができなくなって最悪の場合窒息死してしまうケースがあるようです。
関連記事 防水スプレーの危険性を話します!安全に使う方法は?
まとめ
ロックタイトとコロニルの防水スプレーの耐水、耐油性能を比較しました。
ロックタイトもコロニルもどちらも革製品の防水加工に使えます!
ただ、値段なりに効果の差があることも確認できました。
革に油や水がしみ込むとき、革の内部には汚れも入り込んでしまいます。
汚れを防ぐためには、革に悪い影響を与えない方法で防水防油対策をしてあげることがベター。
特に、水に濡れる機会の多い製品、ヘビーに使われる道具の場合は、適切なケアをしてあげることが革製品を長持ちさせるコツになります。
革製品に防水スプレーを使うかどうかは賛否わかれますが、デテログは防水スプレーを使った方が長く使えると考えています。
詳しくは、防水スプレーはヌメ革に悪影響?使った方がいい理由をご覧ください。
最後に、deteが考える、防水スプレーの使い方を書いて〆といたします。
防水スプレーの使い方。塗布量、放置時間の目安
防水スプレーは、クリーム、ゲルなどの他のケア剤を使う前に行います。
防水スプレーを使う手順
- ブラッシングで革の汚れを払う
- まんべんなく防水スプレー
- 乾くまで放置
- ブラッシングして余分なスプレー残留物を取り除く
- 必要に応じて、クリーム、ゲル等のケア剤で保湿
- 仕上げのブラッシングで完了
塗布量の目安は、全体がムラなく色が濃くなるまで。液が垂れるのはかけ過ぎです。吸水の具合を見ながら加減してください。
乾燥時間の目安は、塗布前の色に戻るまで。革質や気候、塗布量にもよりますが、20分~1時間程度。
使い方についてくわしくは、職人が解説|革用防水スプレーの使い方/乾かす時間をご覧ください。
ブラシのおすすめは馬毛ブラシかエムモゥブレィのプロブラシ。
クリームはコロニルのシュプリームクリームデラックスが万能でいいですね。
記事内で使った防水スプレーは以下のアイテムです。
ここまでで比較記事は終了です。
コロニルとロックタイトの防水スプレーの成分について検証した内容の記録を別ページで記しています。
あくまでも記録用なので特に有益ではないですw
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