この記事は、革製品用クリームはどんな道具でどうやって塗るのがベターなのか?を考える内容です。

失敗しにくい塗り方が知りたいです

指で塗るのが通っぽいけどどうなの?
そんな疑問を持った方に向けてお話しします。
まず前提として、一般的に用いられる塗り方は次の3つに大別できるでしょう。
では、どの塗り方がベターなのか?
結論を書いてしまうと、おすすめの塗り方はブラシを使ってうすく少しずつ塗る方法です。

ブラシって大きくて塗りにくくない?逆に革が傷つきそうだけど…
そんな方に向けて、「これを使うと安心だよ」と言えるおすすめのブラシも紹介するのでご安心ください。
失敗しにくいレザークリームの塗り方
手順と塗り方、塗るときのポイントを解説します。
クリームを塗る手順


関連記事 1909シュプリームクリーム(黒)は黒革靴用クリームの最適解


財布や名刺入れの場合はよりやさしめに扱います。
デリケートな革なら柔らかい馬毛ブラシも検討を。



2年間1日おきに履いてもこの状態の良さはお手入れがあってこそです
ここからは塗り方のポイントを解説します。
ペネトレィトブラシで塗るのが失敗を避けるコツ
布や指もいいですが、おすすめの塗り方はペネトレィトブラシを使う方法。このブラシの良さについては次の章でくわしく掘り下げます。
失敗が怖いなら試し塗りを
どうしても失敗したくない方は、目立たない部分に試し塗りして反応を見ましょう。
綿棒などでクリームを取り、うすく延ばします。多く塗ってしまうと、普通に使えば問題ないはずなのにそこだけ白化してしまうことがあるので注意。

とはいっても、私は試し塗りしたことがありません。信頼できるクリームなら、塗りすぎなければ大きな問題になるケースは多くありません。
一度に多くつけると失敗しやすい。すこしずつ薄く塗る
クリームで問題になりやすいのは、一度に多く塗りすぎたがゆえのムラや白化。
関連記事 革財布にクリームを塗ったら白く残ってしまった。対処法は?
うすく塗り延ばし、乾くまで待つ。あまり変化がないなら(柔らかくなっていない、カサカサのままなど)もう一度うす~く塗りましょう。
クリームが付いた状態でこするとダメージが残るリスクが
クリームの水分や油分を含んだ状態の革は、傷つきやすいデリケートな状態です。塗ってすぐ使ったりしまい込んだりせず、乾くまで陰干ししましょう。
塗るときも、無理にこすったり、力を入れて塗ることがないようにしましょう。鏡面磨きや摩擦によるツヤ出しといった上級テクを使う場合はその限りではありません。
レザークリームはペネトレィトブラシで塗ると失敗しにくい
レザークリームは、ペネトレィトブラシに代表されるミニタイプのブラシを刷毛がわりに使うとムラなく塗り広げやすくおすすめです。

ブラシじゃ細かいところに届かないんじゃ?
と考える方もいるかもしれませんが、心配はいりません。
ここで紹介するのは小回りが利く小さなブラシ。

革にアタリが付きにくいのが一番のメリット
他の方法にくらべ、ブラシでクリームを塗る方がアタリが出にくく安心です。
ここでいうアタリとは、力が加わった部分がへこんだり、テカリが出たり、部分的に色が変わったりすること。
特にタンニンなめし製法の革は、少し力が加わっただけでアタリが付きます。このアタリが革の味なのですが、自分でつけてしまった「跡」と、経年によって知らず知らずについたアタリとではやはり違いがあります。
指やクロスではどうしても手の力が均一にならず、部分的にテカらせたり爪で傷つけたりしがち。クリームの油分や水分で濡れている革はデリケートなので余計に気を使う必要があります。
その点ブラシなら、毛の弾力が余計な力を受け流し、一本一本が力を分散させてくれるからアタリが残りにくいです。
ブラシで塗るとムラにならず延ばしやすい
指やクロスで塗るのに比べ、ブラシを使うとムラなく隅々までクリームを延ばすことができます。
塗りすぎてクリームが表面に残ってしまった場合は布で拭き取りましょう。
ステッチや段差の隙間まで塗りこめるのはブラシならでは
細かな段差がある革製品って意外に多いものです。

毛足が長いブラシなら、こんな段差やすき間にもクリームを塗りこめます。
それに対し、指や布で段差や縫い目にまでクリームを塗ろうと思っても無理があります。ともすれば前の項のようにアタリが出たり傷つけたりするリスクも。
手が汚れず肌荒れのリスクも無い
ブラシを使えば手が汚れず、肌荒れの心配もありません。

レザークリームで肌荒れすることがあるの?

よほどデリケートでない限り心配はないと思うけど、有機溶剤を使ったクリームはリスクが大きくなるかも。
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称であり、様々な職場で、溶剤として塗装、洗浄、印刷等の作業に幅広く使用されています。
出典 有機溶剤中毒を予防しましょう.indd-厚生労働省
有機溶剤は常温では液体ですが、一般に揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。
有機溶剤は人体に悪影響をあたえるものがあるため、デテログはできるだけ有機溶剤をふくまないレザークリームを推奨しています。
有機溶剤をふくまないレザークリームは、『有機溶剤不使用』の革用クリームまとめで紹介しています。
これら4つの理由から、ブラシでクリームを塗るのをおすすめします。
ペネトレィトブラシのおすすめは豚毛。繊細な革には馬毛

クリーム塗布に最適なペネトレィトブラシの素材について考えてみましょう。
ペネトレィトブラシはおもに2種類の素材に分けられます。
最初に結論だけまとめると、持っているクリームの色数分の豚毛ブラシと、念のため馬毛ブラシも1~2本を常備するといいでしょう。

豚毛には白(ベージュ)と黒がありますが、機能的にはほぼほぼ同じです。個人的に、白やベージュの方がクリームの色がぱっと見でわかって使いやすく好きです。
豚毛ペネトレィトブラシの特徴

豚毛は、強いコシと弾力がある硬めの毛質が特徴。
普段のブラッシングにはちょっと硬すぎるかな?と感じますが、クリームを塗るには重宝します。
クリーム塗布に使うなら基本的に豚毛のブラシがおすすめです。
どの豚毛ペネトレィトブラシがおすすめ?
私はエム・モゥブレィとコロンブスを使っています。どちらも一長一短ですが、ストレスなく使える柄の形状からコロンブスのジャーマンブラシ8をおすすめします。

Amazonのページではジャーマンブラシ7の豚毛と書かれている場合がありますが、これはジャーマンブラシ8の間違いです。いずれにしても届く商品は豚毛なので安心ください。


品質が良くハイコスパのブラシ。
立てて置くときに安心感があるだけでストレスなく使えます。
エム・モゥブレィのペネトレィトブラシは、密度が高く、比較的毛が抜けにくいしっかりした造り。
柄の頭が平らな部分が狭くて立てておくときに不安定なのが玉にキズ。

エム・モゥブレィはど定番のシューケアブランド。
お手頃な価格でそろえやすく、品質もいいです。
より上質な豚毛ブラシが欲しい方には、サフィールノワールの選択肢があります。
馬毛ペネトレィトブラシの特徴

馬毛ブラシは、適度な弾力で、豚毛にくらべるとすこし柔らかいのが特徴。
革靴や硬めの財布にはちょっと塗りにくい場合がありますが、クタッとしたやわらかい革製品に使うなら馬毛のしなやかさが生きます。
また、傷つきやすいデリケートな革に使う場合も豚毛より馬毛のブラシを推奨します。
各ブラシの特徴についてくわしくは、革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。をご覧ください。
どの馬毛ペネトレィトブラシがおすすめ?
こちらもコスパの高さからコロンブスのジャーマンブラシ7をおすすめします。
すこし毛が抜けやすいように感じますが十分な品質のブラシです。

見た目にも高級感があります。
豚毛のジャーマンブラシ8と合わせて統一感あるインテリアを楽しんでください。
より上質なブラシが欲しいなら、コロニルのハイエンドライン「1909」シリーズのブラシをご検討ください。

所有欲を満たす、高級感あるコロニル1909のペネトレィトブラシ。
結論:基本豚毛ブラシでOK。デリケートな革用に馬毛もあると安心
一般的な革靴や、ふにゃふにゃでない普通の革財布などに塗るなら、豚毛のブラシで問題ありません。
シープ(羊革)や柔らかなカーフ(子牛革)など、デリケートな革には馬毛の方が向く場合もあるので、一つ持っていると安心です。
別々のクリームや、同じクリームでも色違いを同じブラシで取ると混ざってしまうので、それぞれに専用のブラシを用意するのが理想です。
上記4つのクリームを持っている方なら、4つの専用ブラシを持つのがベター。

とはいっても、全部分けるのは面倒ですよね。
最低限色ごとには分けて欲しいです。
買えるお店は大型靴売り場やホームセンター
ペネトレィトブラシは革製品(特に靴)のお手入れに必須の定番商品です。そのため、東急ハンズやロフトなどの大型の小売店やほーうセンターなら大抵数種類はそろっています。
ですが、小さな靴売り場などではあつかっていない場合も。
ネットより実店舗が安くなるたぐいの商品ではないので、Amazonや楽天で買いそろえた方が便利かもしれません。
レザークリームの塗り方と塗る道具についてのまとめ

レザークリームは布や指で塗るのではなく、ペネトレィトブラシで塗るのが失敗しにくくおすすめの方法です。
不慣れな方は、次の点に注意しながら塗ると失敗しにくく上手に仕上がります。
使うブラシは、基本的に豚毛のペネトレィトブラシが使いやすくおすすめ。やわらかく繊細な革(シープ(羊)、やわらかなカーフ(子牛)など)は馬毛のペネトレィトブラシを推奨します。
ブラシの本数は、使うクリームの数だけそろえるのがベターです。むずかしい場合は最低限クリームの色数だけそろえましょう。
コメント