ピニャテックスPINATEXは革の代わりになるか?革屋がヴィーガン素材を売ることの是非

パイナップル由来のヴィーガンレザー革辞典

話題のサステナブル素材『PINATEX-ピニャテックス』とは何なのか?革に代わる素材になるのか?
革職人のレポートです。

ピニャテックスについてのミーティング

ピニャテックスについてのミーティング

2020年3月某日、代理店の営業さんが実物を持って訪問してくれました。

あれやこれや質問して少し詳しくなったので、そこで得た情報をシェアしたいと思います。

この記事を書いた人
dete

・レザーブランド"dete"の人
・職人歴10年/元・美容師

【DeteLogはこんな方向け】
・レザクラの腕を上げたい
・革のケアの腕を上げたい
・「革」に詳しくなりたい

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ピニャテックスとは?革の代わりになり得るか?

ピニャテックスPINATEXに水をかけたり曲げたりしてみる
これがピニャテックスだ!
ピニャテックスとは?

ピニャテックスは、パイナップルリーフ由来の生地の商品名。

『革に代わる可能性があるヴィーガンレザー』と、以前からこのDeteLogで紹介してきました。

が、実際に手にしてみると全く違った。

結論を先に言ってしまうと・・・

ピニャテックスは、革や合皮の代わりにはなり得ません。

全く別物でした。

じゃあどこがどう違うのか?解説していきます。

革というより紙や不織布やフェルトに近い

ピニャテックスは、革というよりも、紙や不織布、フェルトに近い質感や性質です。

革のような詰まった感じがなく、指で押すとフカフカとした感じで非常に軽い。

柔らかいですが表面は少しハリがあって硬さを感じます。

例えるなら、少ししっかり目のフェルトに、カビの生えたチーズの皮が付いたような感じです。

構造は人工皮革に似ている

構造は人工皮革と非常によく似ています。

人工皮革と合成皮革の違いは、合成皮革と人工皮革は別物ですで紹介しています。

一般的な布が繊維を互い違いに重ねる『織り』で作られているのに対し、この素材は繊維が四方八方に絡み合った不織布の構造。

太い繊維を使わずとも厚みを出すことができます。

パイナップルリーフの不織布に樹脂を染み込ませてコーティングしたのがピニャテックスです。

ピニャテックスの原料

原料
  • パイナップルリーフ繊維 72%
  • PLA(結着)  18%
  • ポリウレタン 10%

PLA樹脂はPoly-Lactic Acidポリ乳酸の頭文字をとった略で、トウモロコシやジャガイモなどに含まれるデンプンなどの植物由来のプラスチック素材だ。

引用 PUとは

ポリウレタン(PU)は別名ウレタンゴムとも呼ばれるプラスチック素材で、ゴムのように柔らかく抗張力(引張り強度)や耐摩耗性、弾性、耐油性に優れている。

引用 PUとは

パイナップルリーフを絡めて作った不織布をPLAで結着し、ポリウレタンでコーティングした素材と思っていただいてOKです。

ポリウレタンは加水分解するのでは?

ミコガイ
ミコガイ

ポリウレタンって加水分解しません?

営業さん
営業さん

このポリウレタンは加水分解しないポリウレタンです。

どういうこと?

ポリウレタンと一口に言っても、ポリエーテル由来とポリエステル由来の2種類に分別されるんだそうです。

安価なポリエステル由来の場合加水分解しやすくなりますが、ピニャテックスに使われているポリウレタンはポリエーテル由来なので堅牢性が高いということらしいです。

エーテル系ウレタンゴムは、結合分子内に-O-を持っており、この分子構造になりますとH2O(水)には影響されません。

一方

エステル系ウレタンゴムは、結合分子内に-COO-を持っており、この分子構造はH2O(水)と反応して-COOH(酸)と-OH(アルコール)に分解されやすいのです。

参考 ウレタンゴムのエーテル系とエステル系の違い

つまり、ポリエステル由来は水に反応して分解してしまうのに対し、ポリエーテル由来のポリウレタンは水に影響されることが無いということ。

だから、ピニャテックスは加水分解することがないという理屈だそうです。

素材についての感想。革が持つ丈夫さや持つ喜び、味わいはゼロに等しいが・・・

革には独特の重厚さや質感があり、それが高級感を醸し出して持つ喜びを与えてくれるもの。
残念ながら、ピニャテックスにはそれが感じられない。

ピニャテックス マリン

ピニャテックス マリン

じゃあ、それで生地としての価値が無くなるか?必ずしもそうは言いきれない。

どういうことかというと、使い方次第でファッションとして面白くもできるということ。

例えば、アウトドアウェアではナイロンの生地が良く使われますね。
こういった素材は、生地だけで見ても何の変哲もない素材だったりしますが、服に仕立ててみるとグッとかっこよくなるもの。

 

革のように単体で芸術性を持つような素材ではないが、独特のシワと質感があり、生地としての可能性はある

やはりコンセプトとしておもしろい

何度も言いますが、ピニャテックスの原料はパイナップルの葉。
それもただのパイナップルの葉ではなく、今までずっと見過ごされてきた廃棄物にスポットを当てた商品だということ。

パイナップルの葉がこんな生地になってしまうのかという小さなストーリーが人の心を動かすのだと思う。

シンプルにおもしろい。

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ピニャテックスは売れる素材か?

ピニャテックス色見本
カラバリ10色

さて、ピニャテックスがパイナップル繊維でできた生地だということはわかってもらえたと思いますが、多分皆さんが気になっているのは、次のような事なのではないでしょうか。

  • 流行るの?
  • 素材としてアリなの?

ズバッと答えたいところなのですが、これが日本で売れるのかどうかはなんとも・・・

ミコガイ
ミコガイ

なんか売れそうなー。 知らんけど

ふざけてるわけじゃないです。本当にわからないんです。

現に、シャネルはこの素材を使った帽子(2,300€ほど)を販売していますし、ヒューゴボスはそれより前からこの素材を使ったスニーカーを作っており、H&Mもしかり。

日本ではまさにこれから(2020年~)ですが、すでにバイヤーやメーカーの注目度は非常に高い。

さらに、サスティナブルという言葉がテレビでも流れるようになった。

昔のミコガイ

じゃあ売れるんじゃないの?

うーん。これから多くの店で見かけると思うしそれなりに広がると思いますが、これが継続するのかどうかはわかりません。

売れる土壌はできています・・・が。

まだ情報が少なすぎるので、今後も調査を続けます。

ピニャテックスを使った商品

ピニャテックスのサイフや、ピニャテックスを一部に使ったキャップなど、国内でも取り扱い商品が徐々に増えつつあります。

ピニャテックスの良いところとがっかりしたところ

ピニャテックスのパプリカ
カラー:パプリカ
良いところ
  • 色の堅牢性が高い
  • 撥水性が高い
  • 色がおしゃれ

がっかりしたところ

革のような耐久性が無い(ひっぱりに弱い)

色の堅牢性が高いところが良い

耐色性能は高い基準をクリアしているそう。ハイブランドに卸しているのですから当然です。
濡れた状態でも色落ちしにくい塗装がされているようです。

撥水性が高い

防水ではありませんが、撥水加工がなされており、多少の水ははじいてくれます。

エーテル系のポリウレタンなので加水分解でダメになる心配もない模様。

色がおしゃれ

色はなかなか良いトコロをついてきた印象。

シーズンごと、別注なども出るかもしれませんが、定番は暖色よりっぽい10色展開(ピニャテックスオリジナル)。

革のような耐久性が無い(ひっぱりに弱い)

ここはちょっとがっかりだった。メーカーパンフレットを見ても、革に代替する素材を意識しているわりに、革のような堅牢性の高さが無い

伸びやすい方向と伸びにくい方向があるのですが、伸びやすい方向に引っ張ると、がんばれば手でちぎれるくらい。

もう少し強い素材をイメージしていました。

弱くて製品として使えない?

じゃあ使えないくらいにモロいのか?というとそこまでではない。

あとは作り手側がどう料理するかです。

革のように芯無しの一枚で使えるかといえば使えない。ただそれだけのことです。

レザーブランド、革問屋がヴィーガン素材を販売することの是非について

ピニャテックスのサンプルバッグ
ピニャテックスのサンプルバッグ

私個人の考えを書きます。

本革※もピニャテックスも同じくらいサスティナビリティが高い素材。だから親和性が高い。並行して販売するのはアリ

※欧州、日本など環境への配慮をしているタンナーの革のみ

現時点でははっきりとしたことは言えませんが、deteの素材として採用したらおもしろいかもしれないなと考えています。

肉牛(豚、山羊なども)の皮とパイナップルの葉、原料となる素材はどちらも副産物です。

今後も継続して原料が手に入り、無駄なく利用できる環境に優しい素材だと思います。

革をなめす際に出される薬品が環境に影響を与えるという意見もありますが、EU諸国や日本では厳しい基準がしかれており、大きな悪影響を与えるものではないと言われています。

革に代わる素材が出ることに反発するメーカーやタンナーの方も多いと思いますが、よく調べもせずに拒否反応を示してしまうのは残念なこと。

これは逆の立場についてもいえることで、革素材を使うことが動物の命を奪うことに直接結びついていないという事実も認めなくてはいけません。

革は食肉の副産物を原料としています。
ちなみに、創業主のカルメン・ヒオサさんは「アンチ革」、な立場にいるようですが、営業さんいわく、革問屋としてコンタクトを取ったところ、非常に喜んでくれて好意的だったとのこと。

革がアリなのかナシなのか?革に代わる素材がアリなのかナシなのか?固定観念を取り払った上で良し悪しを判断することが大事。
柔軟な姿勢でいてこそ、自分達にも消費者にもメリットを与えることができるものと思っています。

肉大好きで動物大好き自然を愛する私にとって最高の素材は革ですが、革に代わる何かがスタンダードになる日が来るなら、その流れに乗るのもやむなしというスタンスです。

是非あなたの意見も聞かせてください。コメントお待ちしています。

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コメント

  1. 森本ひなた より:

    こんにちは。お聞きしたいのですが、個人でピニャテックスの生地を購入したいのですが、代理店さんなど日本でももう販売しているところはあるのでしょうか。

  2. 革製品好きー! より:

    革を取るためだけに、というのは、まーよろしくはないですよね。
    しかし食肉が一般的な中で、牛の皮を活用しようというのは極当たり前だと私は思います。
    食肉が供給され続けてる間は、廃棄が減って革製品はむしろサステイナブルだと思いますねー。

    肉食ってる地域で革製品全般に対して反対って言ってる人が居るのが驚きです。

    • detedete より:

      コメントありがとうございます。

      肉食ってる地域で革製品全般に対して反対って言ってる人が居るのが驚きです。

      事実を知らない方も多いんだと思います。
      牛や豚の革がいかにサスティナブルなのかの周知を徹底してかないといけないと感じています。

  3. bell より:

    はじめまして。
    これから植物による革の染色をやってみたいなと考えていたところ、ピニャテックスのことを知りました。革とはまた違った魅力的な素材ですね!革問屋さんでも取り扱いがあるのでしょうか?私も是非教えていただけましたら幸いです。

    • detedete より:

      コメントありがとうございます。
      ピニャテックスは革とは全く違った質感の素材です。近いものはフェルトや不織布やスポンジですね。

      メールでご連絡させていただきます。

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