クラフト用に大きな革を買ったら、以前買った別商品とは違う形だった。どうして?
革はなめす前にカットします。
そして、革の種類によってカットの形が違います!
牛革の多くは、一頭丸々の形で売られているわけではありません。
一定のルールに沿った形でカットされ、カットした部位に合わせたレシピで加工されています。
それぞれに、半裁、ダブルショルダー、丸革などという名前がついていて、性質が違い、扱い方も違います。
一体何がどう違うのか?それぞれのメリットデメリットは?
についてお話します。
革の形の違い|半裁、ダブルショルダー、シングルバット、丸革、クロップ
『どういう形状に切り出しているか?』が使える部位に関わってくるため、革素材を選ぶ際は、どの切り出し方がされている革なのか?を知ることも大事です。
革の部位をざっくりわけるたのが次の画像。
日本で流通している革のおもな形と、それぞれのメリットデメリットを紹介します。
- 丸革
- 半裁
- クロップ
- シングルバット
- ダブルバット
- ダブルショルダー
- ベリー
丸革
一頭丸々の革のこと。
カーフ(子牛革)、キップ(中子牛革)、豚革、山羊革、羊革など、主に小さな動物の革が丸革で販売されています。
その他、家具用、高級車の内装用など、大きな革が必要な場合用に成牛の巨大な丸革もあります。
丸革のメリット
一番いい部分を取りたいように取れる点が大きなメリット。
また、大きなソファや車の内装などは丸革でないと作れません。
丸革のデメリット
ネックやベリーも含むため、使えない部分は多め。
販売サイト例
半裁
引用元 和乃革国産革の多くがこの形。
動物の右半身もしくは左半身のどちらかになります。
主に国産の成牛革、コブ牛革、馬革に採用されるカットです。
半裁革のメリット
ベンズ(お尻)からショルダーにかけて好きなように使えます。
特にベンズ付近は繊維密度が高く、良質なベルトパーツ(長いパーツ)を取ることができます。
半裁革のデメリット
丸革同様、ベリーやネックを含むためロスが多い。
また、背すじにそってカットされていて、バッグの本体部分など大きなパーツを取る時に革の一番良い部分を使うことができない点がデメリット。
丸革よりも使えない部分が多くなる。
販売サイト例
クロップ
半裁からベリー(後述)を取りのぞいたもの。
国産の一部の革やイギリスのブライドルレザーなどに採用されるカットです。
クロップ革のメリット
ネックをふくみますがベリーはトリミングしてあり、ムダになる部分が少ない。
半裁同様、ベリーからショルダーの良い部分が使えて長いパーツも取りやすいです。
また、長方形に近い形で届くので、計算がしやすくパーツ取りがしやすいのもメリット。
クロップ革のデメリット
半裁と同じく、背すじにそってカットされているので、一番いい部分を大きく使うことはできないです。
シングルバット
背中からお尻にかけての右半身もしくは左半身の革。
あまり一般的なカットではなく、私は一部のタンナーのイタリアンレザーでしか見た事がないです。
シングルバット革のメリット
バット(背中からお尻)だけを使っているため、この部位に特化した最適な方法でなめすことができます。
部位的に非常に繊維密度が高く、質がいい部分だけを使うことができます。
シングルバット革のデメリット
お尻付近は革質はいいのですが、意外と生きていた時の治り傷が多いです。
また、半裁やクロップ同様背すじをカットしているので、どちらかといえば小物向き。
ダブルバット
半身のシングルバットに対し、背すじをまたぐように左右両方の背中からお尻にかけてカットした革がダブルバットです。
あまり多くないカットで、私はダブルバットの革を手にしたことはないです。
ダブルバット革のメリット
シングルバット同様、もっとも繊維密度が高い部分が使えます。
背すじ付近も使えるので、より製作の幅は広がります。
ダブルバット革のメリット
お尻付近なので生きていた時のキズが入る可能性が高い。
キズが無ければ最強。
ダブルショルダー
イタリアンレザーで一般的なカット。
ダブルショルダー革のメリット
ショルダーに最適な方法でなめすことができるので質が良い革が多い。
背すじ付近も使えるので、質のいい大きなパーツがとれます。
ダブルバットよりキズが少ない印象。
ダブルショルダー革のデメリット
伸びにくい背すじと平行のラインで長いパーツがとれない。
その為、ダブルショルダーでベルトパーツを取るには、伸びやすい方向で使わざるをえません。
ショルダー付近は革によってはトラ(すじ)模様がめだつので、個体ぶれが大きく、製品によっては使いにくい。
ベリー
前脚付近~お腹~後ろ脚付近の革。
半裁のベリーは品質が著しく落ちるので、商品に使うのはむずかしい。
その点、イタリアンではベリーに特化したなめしを行うタンナーがあり、これらはベリーとは思えないくらいしっかりした革に仕上がっています。
ベリー革のメリット
価格が安い。
ベリー革のデメリット
耐久性が未知数。
型押し、ヌバック、バッフィングなど、表面を加工した革に用途が限られる。
とある展示会で、イタリアのベリー革にさわりました。
パッと見&触れた感じでは「意外とアリかも?」と感じましたが、製品を使う過程でどういう経年変化するのかは未知数です。
まとめ
革の形(カット)について書きました。
主な革の形は、
- 丸革
- 半裁
- クロップ
- シングルバット
- ダブルバット
- ダブルショルダー
- ベリー
などがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
半裁はムダになる部分が多い、ダブルショルダーは質のいい部分を大きく使えるなどなど。
作り手は、革の見た目や品質を優先して素材をえらびますが、実は革の形もとても大切な要素のひとつ。
例えば、丈夫なベルトを作ろうと思ったら、バットやクロップから選ぶと都合がいい。
対して、バッグ用に大きなパーツを取りたいなら丸革やダブルショルダーを使うと質のいいパーツがとれます。
これらを考えるのも作り手の仕事で、実はとても重要。
目利きで仕上がりに大きな差がでます。
最後に、今回は少しコアなお話になりましたが、この記事で革や革製品への興味を深めていただけたらうれしいです。
革の繊維の向きについてもっとコアな話はこちらです☟
半裁とダブルショルダーにさわることが革の勉強に役立つ理由についてはこちら☟
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