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裏打ちをマスターするだけでレザークラフトの腕が上達する本当の話

レザークラフト講座

当記事はプロモーションをふくみます。

“裏打ち”って知ってますか?

レザークラフト上級者なら知らないと恥をかくレベル。

ミコガイ
ミコガイ

っていうのは言いすぎです。

でも、マスターしておいて損はない技術です!

裏打ちが何かを簡単に説明すると、革の補強や質感をよくすることを目的に、革の裏に別の革や芯材をべたっと貼り付けることです。

例をあげると・・・

うすく漉いた硬い栃木レザーの裏に、もっと薄い羊革🐑を裏打ちすると、まるでボックスカーフや最高級の山羊革🐐のような、繊維の引き締まった一枚革が出来上がります。
裏打ちすることで、革の質感をガラリと変えることができるということですね。
つまり・・・
裏打ちというのは、自分の思い通りに革の硬さや質感をコントロールする魔法のようなテクニックなのです。

この裏打ちを使ってベルトパーツを作る方法を別記事で解説しています。合わせてご覧ください。

それでは詳しく説明していきましょう。

この記事を書いた人

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革職人の経験を活かし、趣味のレザークラフターや革製品のトラブルに悩む方に役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

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裏打ちをマスターするとレザークラフトの腕が一段上がります。

先日、deteのシザーケースのフラッグシップモデルS10-5を製作しました。

シザーケースS10-5 dete

S10-5 製作談

S10-5商品 ページ

この製品は、全パーツに裏打ちした素材を使用しています。

こんなにこだわったハイクオリティなシザーケース他社さんにありますか?w

たぶんうちだけでしょうw

今回はこの製品を例に、裏打ちについてお話ししましょう。

裏打ちすると丈夫で高品質なものづくりができる

S10-5を横ななめ前から見た写真です。

マチのパーツは、最厚部約1.3mm(ななめ漉き)の栃木レザーの裏に0.3mmの羊革を裏打ちしました。

とても美しい縦シボが入っていますね。

普通、栃木レザーのこの革でこのシボの感じは出せません。

比較してみましょう。

左:栃木レザー1.6mm(裏打ち無し)
右:栃木レザー1.3mm(0.3mm羊革裏打ち)
裏打ちしていない左の栃木レザーを内側に曲げて縦のシボを入れてみました。

違いがわかりますか?

裏打ちしていない栃木レザーの方は太いシボが入っているのに対し、裏打ちした方はきめ細かいシボが入っています

細かなシボを手もみで入れる為には、繊細な革であることが必要条件です。

栃木レザーは丈夫さと厚みを備えた素晴らしい革ですが、繊維の細さや密度はカーフ(子牛革)やシープ(羊革)やゴート(山羊革)には劣ります。

そこで、繊維密度が高くて厚みの薄い革を裏打ちしてあげることで、栃木レザーの革のウィークポイントを補ってあげることが出来るというわけです。

さらに利点として、同じ厚みの栃木レザーと比較すると、裏打ちした栃木レザーの方がずっと丈夫です。

また、一枚革全体の繊維密度が高まるので、曲げるとしなやかに曲がってくれる為、手にした時に、これはいい革だという実感を得ることができます。

裏打ちを使いこなすと、製品が丈夫になり、革質も良くなって製品の質が上がる

使った羊革はずばりこれです↓

厚い一枚革より薄い革を裏打ちした方が丈夫になる理由

裏打ちなんていう面倒なことしなくても、厚みがある革を使えばいいのでは?その方がコストも安いし

ミコガイ
ミコガイ

いえ、誰が何と言おうと、薄い革を貼り合わせた方が良いです!

その理由は以下の通りです。

革は表に近い側の方が繊維密度が高い。

厚い革を使うと、繊維密度の低い床(肉面側)を多く使うことになってしまうことになってしまいます。

その反面、薄い革を二枚貼り合わせると、革の良いところだけを使うことができるので、結果的に良い素材に仕上がります。

裏打ちするときの注意点。薄くしすぎちゃダメ!

革は表に近い層の方が良質とざっくり書きましたが、表層の吟面だけになってしまうのはダメです。これでは逆にもろくなってしまいます。

某革屋の社長に聞いたところ、革で強い部分は、吟面と床面の境の部分だということです。

吟面層と床面層が絡み合っているため、ここが一番強度が高いということ。

これは栃木レザーの断面を見たところです。厚みは大体2.3mmくらいです。

なお、これが表から何mmかというと、これは革の種類によって変わります。

写真にある革のように、もともとが厚い成牛革の場合0.7mm前後です。

カーフやゴート、シープ、豚など、原厚が薄い革はもっと薄くなります。

薄い革の方が、薄く漉いても強度を保てるということ。

だから、カーフやゴートやシープなどが裏打ち素材に向いているのです。

デテログ
デテログ

革の構造についてもっと知りたいマニアックな方は、⇩の別記事を開いておいて後で読んでみてください。

関連記事

牛革はどんな革?特徴、種類、手入れ方法《写真多数》

山羊革(ゴート)ってどんな革?羊革とのちがい

裏打ち作例

引き手は力がかかる部分だからこそ、見えない裏側にも同じ革を貼って補強しています。

金具のアタリ(段さ)をなくすのにも使えるテクニックです。

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裏打ちの方法は?→超簡単

裏打ちってどうすればいいの?

ミコガイ
ミコガイ

接着剤を全面に塗って貼り合わせるだけ。サルでもできます。

裏全面(周囲を除く場合もあり)に裏打ち材をベタ貼りするだけ

裏打ち材の薄い革や生地をべったり貼るだけです。

塗って貼ったら、型のサイズよりも少しだけ大きく粗裁ちしましょう。

このあと全体にローラーをかけて、周囲はハンマーで叩いて圧着。

そのあと正しい寸法にカットします。

これで完成。

(注:↑の写真は、パーツの内側だけに部分的に裏打ちしています。全面に貼ったり、補強したい部分だけに貼ったり、いろいろな方法があるので試してみてください。)

曲げて貼るのは上級テクニック

裏打ちのやり方

曲げた状態で使うパーツは、仕上がりをイメージして曲げた状態で裏打ちすることもあります。

治具(ビンや筒など)をうまく使って貼り、キレイなアールに仕上げましょう。

デテログ
デテログ

これは上級テクニック。まずは平面に貼る練習からどうぞ。

うまくいかない時の解決策

簡単とは言っても、ただ適当に塗って貼ると問題が発生します。

どんな問題が起こるかというと・・・

  1. 革は平らなはずなのに、ところどころボコッと小さく裏地が出っ張っている
  2. 製品にしてみたら、いくら磨いてもコバがきれいに仕上がらない。
  3. 気泡が入ってしまった

1と2については、接着剤の塗り方がマズいのが問題です。

接着剤は、できるだけうすーくうすーく、ダマにならないように塗りましょう。

接着剤をうまく塗るポイントは、極めてうすい塗り方で2回塗ること

一回目は革が吸収する分と考え、2回目に塗った分で接着するイメージ。

これについては、うちの職人のMさんにも口をすっぱくして何度も教えました。

これでもかっていうくらいに薄く塗りましょう

くわしくは、ゴムのりの使い方(革と革を接着する方法)をご覧ください。

もう一つ2の原因の可能性があるのは、裏打ち材がコバ磨きに適していない素材の可能性。クロムなめしの裏打ち材を使うと難易度があがります。厚みが薄いタンニンなめしの素材を使い、コバは染色してから磨くといいでしょう。

たとえばこちらの羊革など。

コバ磨きのやり方については、ふのりと蜜蝋のコバ磨きの方法 [革職人伝授]をご覧ください。

3の気泡が入ったケースですが、これは完全に貼り方の問題。慣れるまでは難しいと思うので、端切れなどで練習しましょう。何回かこなせばすぐにできるようになりますよ。

幅広のローラーなら跡がつきにくく重宝する

さらにいい仕上がりを目指すなら、幅広のローラーがあると便利です。

小さなパーツなら幅が細いローラーの方が力が加わりやすくていいのですが、大きなパーツに小さなローラーを使うのはおすすめしません。ローラーをかけた跡が残ってしまいます

できるだけ幅広のローラーを使い、まんべんなくかけるようにしてください。

ローラーの使い方については、レザークラフト用ローラーの使い方|効果と目的をご覧ください。

裏打ちにおすすめの革や芯材は?

これはケースバイケース。

どういう使い方をするか、表の素材が何かで違ってきます。

薄いナイロン布は、伸びを抑えたいけど硬くしたくない場合などに便利です。

私自身が仕事で使っている組み合わせを羅列してみますので、参考にしてみてください。

  • 栃木レザー×ボンテックス0.4mm or 0.6mm(曲げたくない部分/要裏地)
  • 牛革×スライサー(よく使われる芯材です。ほどほどに柔らかいので使う機会は多いです/要裏地)
  • 牛革×アメ豚or豚ヌメ(アメ豚や豚ヌメはコシがあって薄くて丈夫なので、裏地を兼ねた裏打ち素材として使いやすいです)
  • シュリンクレザー×羊革0.3mm(補強はほどほどに裏地としての機能がメイン)
  • 栃木レザー×栃木レザー(薄)(革の張りを強めたい部分に)
  • リザード×牛床革(リザードは厚みが薄いので補強に/要裏地)
  • 裏に象革(補強用。象は超高価なのですが、とにかく強靭なので、見えない部分の裏打ちに使ったりもします)
  • 牛革×ゴート0.3~0.7くらい(ゴートは腰がありながらもしなやかなので裏打ち素材としては最高。そのまま裏地にもなります)

まとめると以下の通り。

  • 硬い芯材は曲がって欲しくない部分に。
  • 革の裏打ちは裏地を兼ねる。
  • 羊、山羊、豚革は裏打ち素材として使いやすい
  • 裏地の厚み/裏打ち素材の厚みは表素材よりも薄くするのが基本

裏打ち素材(革/芯材)はどこで買える?

道具類はAmazonでも良いものが買えますが、生地や革に関してはAmazonで安心して買える商品はあまり見当たらないのが現状です。今後も難しいと思います。

利用しているお店がAmazonにも出店しているようであれば利用してもいいと思いますが、この場合はAmazon配送商品は避けた方が無難。

専門店の自社サイトや楽天などで買う方が、プロが管理している商品なので安心して購入できるのでおすすめです。

たとえばこちらの非常に薄い羊革は便利。

紙のように薄い0.3mmの羊革。厚みを出しすぎないから使いやすいです。アメ豚もこの同じお店で買えます。


IDEAL ONLINE SHOP

山羊革、羊革の選択肢が豊富でおすすめです。

上記の革は最薄0.6mmまで漉き加工(うすくする加工)依頼ができます。


芯地・接着芯「浅草ゆうらぶ」

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

スライサー0.6mm シールタイプ接着芯
価格:770円(税込、送料別) (2019/12/12時点)

楽天で購入

芯材のお店。楽天で買えるので手軽です。


中村貿易

アメ豚や豚ヌメなど良質な豚革を取り扱っている問屋さんです。


山上商店

完全に問屋なのでネット販売はありませんが、カーフとゴートの品質は高く、オリジナリティがあります。


清水商事

職人御用達。ネットショップあります。


上記あたりが品質が良い素材が買えるお店。私も利用しています。

まとめ

ぶっちゃけガチのプロのノウハウを公開しましたw

こういうのって同業の方からヒンシュク買ったりとか・・・大丈夫ですよね?w

記事のまとめとして

〈裏打ちの効果〉

  • 革質をコントロールできる。
  • 同じ厚みの一枚革よりも丈夫にすることができる。
  • 革で裏打ちすると裏地を兼ねることもできる

〈注意点〉

  • 初心者さんは特に、裏打ち革素材は薄い厚みからトライしましょう。
    例えば、1.0mmの牛革には0.3mmの羊革とか、0.5mmの豚革とか。
  • ボンドはきれいに塗りましょう。

裏打ちの重要性が少しでも伝わったら嬉しいです。

普段クラフトで使っているヌメ革やイタリアンレザーも、裏打ちしてみるだけで簡単に質感が変わります。

クォリティを上げるなら間違いない選択肢です。

あとは、どう活かすかですね。

試したら感想も聞かせてくださいね。


※裏地と裏打ちの違いがわかりにくいので、裏地についても記事にしました。

こちらもどうぞ。

コメント

  1. 留年学生 より:

    初見ですが、質問になります。
    裏打ちの際に豚や羊などを使った場合、牛だけを使った場合と比べてコバ処理で注意するポイントや特有の技法などはありますか?

    • dete より:

      留年学生様

      それぞれの革に合うコバ処理方法を選ぶという点では、裏打ちしていてもしていなくても同じです。
      その他のポイントとしては、以下のように、そもそも裏打ち革がコバに出るのを避けるケースがあります。

      ・コバ処理しにくい裏打ち革
      ・表の革と裏打ちの性質が違う場合
      例)タンニン成牛革の表に裏地(裏打ち)がクロムのカーフ等

      これらの場合、以下などの方法で裏打ち革がコバに出ないようにします。
      ・裏打ち革の周囲をゼロ漉きにする
      ・表革よりも小さくカットしてコバに出ないようにする
      ・ヘリ返しにする

      • 留年学生 より:

        ありがとうございます。
        何回か試作していい塩梅になるまでやってみます。

  2. まーぼ より:

    はじめまして!
    0.3ミリの羊革を裏打ちした場合、コバは問題無く磨けますか?

    • dete より:

      うちで使っている羊吟と同じものなら磨くことはできます。
      表と裏の革の性質がちがうと磨きの難易度は上がりますので、いろいろ研究しながらトライしてみてください。

      羊吟

      • まーぼ より:

        お返事ありがとうございます。この記事で紹介されてるぱれっとの羊革0.3ミリを使ってるのでしょうか?

        • dete より:

          ぱれっとで買える0.3mmの羊革も使っていますし、他の裏地用の革もいろいろと使っています。
          全部は紹介しきれないのと、0.3mmは表素材への影響が少なく初心者さんにもおすすめできるということで、こちらの羊革をピックアップしております。

  3. マダオ より:

    はじめまして。
    裏打ちをナイロンで行う場合もゴムのりベタ塗りで行うのでしょうか。
    それともナイロンは補強材と割り切り、裏地またはもう一枚薄い革でサンドするようなやり方になるのでしょうか。

    • dete より:

      こんにちは。
      裏打ちは一般的にベタ貼りすることを指します。
      それは素材が何であっても同じです。

      ナイロンで補強をする際に裏打ちをするかどうかですが、この場合は裏打ちです。表地と裏地の間に挟だけではあまり効果がありません。

  4. ヤスユキ より:

    はじめまして。
    車の革シートの補修で裏打ちする場合、伸縮性もありかつ強力な接着剤と裏打ち材のチョイスは何がよろしいですか?

    • dete より:

      具体的にどんな使い方なのかわかりかねますが、部分的な補強目的の裏打ちと仮定してお話しさせていただきます。

      伸縮性があって丈夫な裏打ち用の素材ということで、豚革はいかがでしょうか。
      アメ豚などスムースな豚革では張りが強すぎる可能性があるので、揉んで使うなど柔らかい素材の方がいいかと思います。

      ボンドはこのブログで紹介しているサイカプレンならうすくぬれば伸縮性も保つことができ、なおかつ丈夫です。

  5. ニコラス より:

    2.5mm程度のソフトシュリンクレザーで一枚革の作品を主に作っています。
    裏地を使用しておらず、コバも切りっぱなしにステッチを入れて、コバを磨いて仕上げています。そこで質問ですが、こういった仕上げで使用できる裏地は何が適しているでしょうか?裏地を貼り付けた状態でコバを仕上げることも出来るのでしょうか?ご回答よろしくお願いします。

    • dete より:

      こんにちは。

      [2.5mm程度のソフトシュリンクレザーがタンニンなめし革の場合]
      裏地はうすいタンニンなめしが良いと思います。
      もちろん裏地がついた状態でもコバを磨いて仕上げることはできますよ。磨く場合、裏地がタンニンなめし革なら一枚革と同じように磨くことができますが、クロムなめし革や合皮ではタンニンなめし革同様にコバを磨くのがむずかしくなります。

      羊吟、山羊革、豚革などが使いやすくおすすめです。

      [2.5mm程度のソフトシュリンクレザーがクロムなめし革の場合]
      バスコなどのコバ処理剤を使うのであれば、裏地はクロムなめし革や革以外の素材でも切りっぱなしでコバ処理することも可能です。

      最初はできるだけうすく柔らかい素材がチャレンジしやすいと思います。
      裏地を付けると当然厚みが増すので、今までと同じ質感や硬さにしたいのであれば表革も薄く加工するのがベターです。
      参考になりましたら幸いです。

      • ニコラス より:

        返信ありがとうございます。ソフトシュリンクのクロムなめし革を主に使用しています。お教え頂いた裏地に薄い山羊や羊などの革を貼り合わせてバスコなどでコバを仕上げるイメージはわきますが、例えば薄い布などをボンドで同サイズに貼り合わせて切りっぱなしで仕上げるのはアリでしょうか?裏に貼った布がすぐに剥がれて来てしまうようなイメージがあります。もしこれらのクロムなめし革に革以外の薄い裏地を貼って切りっぱなしで仕上げるとした場合、おすすめの素材はございますか?
        よろしくお願いします。

        • dete より:

          帆布やナイロンなどの布は切りっぱなしではだめです。ほどけてしまいます。
          革以外というのは合皮などを想定していました。

          とはいえうすい革の方があつかいやすいと思いますので、まずはそちらを試してみてはいかがでしょうか。

          • 岡 圭二 より:

            貴重なアドバイス大変ありがとうございました。

          • dete より:

            またわからないことがあれば気軽にコメントください。

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