アルラン社の山羊革「シュリー」について深掘りします。
どんな革なの?
良い革って聞いたけど、どんなところがいいの?
レザークラフトにもおすすめ?
などの疑問を持った方にお役立ていただける内容です。
先に結論を言ってしまうと、美しくて革質もいい上質な素材で、レザークラフトにも最高です。
この記事で紹介する革は、シュリー(シェリー)ともシェーブルとも呼ばれます。
シュリーというのはアルラン社が名付けている商品名です。
シェーブルというのは広い意味でのフランス語のchèvre:山羊(山羊革)のことであると同時に、某ブランドがこの革に名付けている名称でもあります。
アルラン”シュリー(シェーブル)”ってどんな革?
アルランシュリー(シェーブル)の概要
Sully(シュリー)はフランスのALRAN(アルラン)社製のゴート(山羊革) です。
昔からヨーロッパのブランドで広く使われ、そちらではシェーブルという名前で呼ばれることが多いです。
くわしくご存知の方もいらっしゃるかと思います。
日本では2010年代中頃から導入するブランドが増え始め、2021年現在では高級レザーの一つとしての地位を確立した感があります。
アルランシュリーの特徴
- 鮮やかで美しく絶妙なカラー展開
- 凹凸の深いはっきりとした、不均一なシボ
- 少し硬めでコシのある革質
- 非常に密度の高い繊維質
- いいとこ取りのコンビなめし製法
- 小判なので、大きな製品は作りにくい
山羊革全体のくわしい特徴については、山羊革(ゴート)ってどんな革?羊革とのちがいで解説しています。
美しい発色が人気
まず写真を見てください。
ぱっと見てわかる通り、どの色もひじょーーーに美しい発色です。
そして色のセンスがいい。優しい雰囲気のグレージュとか、その隣のゴールド(キャメル)とか、明るいブルーのデニムとか、とてもおしゃれですよね。
革の質感は?
アップで見てみましょう。全体にシボが入った革です。シボは細かく、それでいて手で触っても凹凸がはっきりとわかる、硬さのあるシボです。くったりとソフトな革ではありません。
革にコシがある、ミディアムハードタイプの革と言ってもいいでしょう。
アルランシュリーはキメ細かな革
シボの次にお伝えしたいこの革の特徴は、繊維の細かさ。
“繊維が細かく密度が高い革”はいい革です(逆の革が必ずしも悪いわけではないのです)。
繊維が細かく密度が高い革の良いところ
- 手で曲げると滑らかにしなり、美しいラインを作るところ
- 繊細に見えるが、伸びにくく型崩れもしにくく丈夫
- コバがきれいに仕上がる
見た目もいいですが、触るとこの革の良さはすぐにわかります。財布やブックカバーなどのような、手に取って使う製品にするなら最適です。
しっかりしているのにしなやかな革質は、使う人を幸せにすると言っても言い過ぎではないです!
シュリーはコンビ鞣しでいいとこ取りの製法
鞣しはクロムとタンニン両方が使われた混合鞣し(コンビなめし)です。
関連記事 クロムなめし革とは?タンニンなめし革&ヌメ革との違い
コシの強さ、コバや床面(裏)の色や質感からタンニンなめし寄りの性質があるようにも見受けられますが、弾力の強さや、急激な色変化が無い点はクロムの特徴があるなと感じます。
クロムとタンニン両方の特徴のいいとこ取り素材です!
試作したキーケースを自分で使っていますが、表面の色変化はほとんど見られません。汚れもほとんどついていないです。少しずつ革が馴染んで柔らかくなってきた印象です。
お手入れも簡単で使いやすく、きれいに長く使える優秀な素材です。
シュリーの革は小さい
元々の革が小さいので、大きな製品を作るには不向きです。例えば、ベルトを作ろうと思うと、2頭分の革を継がなくてはいけません。大きなカバンなども少し難しいかもしれません。
向き不向きを考えて製作することが大事です。
関連記事 半裁革はどこから切る?大きな革を使うときのパーツ取りテク
シュリーはコンビなめしでいいとこ取りの製法
鞣しはクロムとタンニン両方が使われた混合鞣し(コンビなめし)だということです。
関連記事 クロムなめし革とは?タンニンなめし革&ヌメ革との違い
コシの強さ、コバや床面(裏)の色や質感からタンニンなめし寄りの性質が見受けられますが、弾力の強さや、急激な色変化が無い点はクロムの特徴があるようにも感じます。
クロムとタンニン両方の特徴のいいとこ取り素材です!
アルランシュリーの経年変化
試作したキーケースを2,3年ほど自分で使っていますが、表面の色変化はほとんど見られません。
明るい色であっても色変化しにくい革だということが言えます。(塗装が剥げた部分はタンニン革独特の色変化があります)
よく擦れるくるみボタン部分にすこし塗装の剥がれはありますが、汚れはほとんどついていないです。少しずつ革が馴染んで柔らかくなってきました。
実はコレ、ほとんどノーメンテです…
お手入れが簡単できれいに長く使える優秀な素材ってことですね。
シュリー(シェーブル)の革って評判はどう?
deteの場合ですが、お客様からの評判はとてもいいです。
男女ともに気に入っていただけていますが、他の革に比べて特に女性からのウケがいいと感じています。
落ち着いた色から鮮やかな色までそろっていて、幅広い層のお客様に受け入れられるのも納得です。
人気のポイント
- 色がキレイ
- 革質がしっかりしている
- 丈夫で長く使えそう
- 軽い
- 高級感がある
お客様の声をまとめるとこのような感じです。私の意見もほぼ同じ。高級なんだけどカジュアルに使えて、丈夫な素材。
つまり最高ってことですねw
レザークラフトにも使える?
適度なコシがある革なので、普段ヌメ革を中心に使っている方にもすんなり受け入れられると思います。
むしろ、財布などの小物を作るにはこれ以上なく扱いやすい革です。
初心者ほどいい革を使った方がいいと言われますが、ここでいういい革っていうのはアルランのシュリーのような革のことですね。
扱いやすく、だれが作ってもさまになりやすい素材です。
シュリー(シェーブル)が向いている革製品は?
- 財布
- キーケース
- スマホケース
- 名刺入れ
- 小銭入れ
- ペンケース
- ブックカバー
- 手帳
- その他小物
などなど。
要は、シュリーはあらゆる革製品に向いているけど、元々の革が小さいから大きな革製品は作ることができないということです。
シックな色を選べば男性のビジネスにも。明るいカラーでカジュアルダウンするのもアリ。オンオフ問わず受け入れられる汎用性の高さも特徴です。
手帳カバーやブックカバーにも最適です。グレージュの手帳カバーは、大人の女性が使うと落ち着いたヌケ感を演出できて素敵です。
シザーケースにも。型崩れしにくくて丈夫なので、ハードに使っても大丈夫。ハイブランドのお墨付きですので、色落ちや衣類への色移りリスクへの対策もばっちりです。
引用元 レザートレイ dete
こちらはこの革で作ったキャッシュトレイ。美容室、飲食店、アパレル、都内の某有名ホテルからも当店のキャッシュトレイをご注文いただいております。変色しにくい素材ですので、キャッシュトレイにも安心ですね。
ビジネスで使う道具は清潔感が大事。大きな経年変化がなく、汚れも付きにくい革は、ビジネス向け商品や、店舗で使う雑貨にも最適です。
シザーケースのような汚れやすい過酷な使用条件にもおすすめできます。
アルランの革を使う国内ブランド
ヨーロッパの有名ブランドがアルラン社の革を使っていることは公然の秘密として知られていますが、公表していない場合が多いのでここで書くのは控えます。
国内のブランドでシュリー(シェーブル)を採用しているブランドを紹介します。
IKUMA
IKUMAというブランドの名刺入れ。Mens Leather Store で取り扱っています。 シェーブル 名刺入れ “コントラリオ”コシがある革なので名刺入れにはピッタリです。
Crevaleathco
次は、Crevaleathcoというブランドのアップルウォッチ用のバンド。こちらも同じくMens Leather Storeで販売している製品です。
シェーブル アップルウォッチバンド [42mm-45mm]キズや汚れが目立ちにくい革なので、目につきやすい時計バンドとの相性は◎。
Livelty
Liveltyという国内ブランドのコインケース。
ぺリンガー社のシュリンクレザーとシュリーをコンビで使っています。
コインケース / LiveltyLiveltyのコインケースは楽天でも購入できます。
高級レザー×高級レザーですがすんなりなじんでいますね。
某ブランド
楽天で「シェーブル 財布」「シェーブル 革」などで検索してみるといろいろ出てきます。
見ればわかるあのブランドです。
お楽しみください。
アルランシュリー(素材)の販売店と色見本
販売店
高級輸入革を扱うK2 INC.がAmazonで取り扱っています。
カラーバリエーション
アルラン社は元々たくさんのカラーバリエーションがある他、特注のカラー製作を受けています。柔軟な会社で比較的低ロットで受けてくれるので、利用している企業は多いです。
その他多数。
製品の色見本
うちで過去に作ったシュリーの写真を貼っておきます。革のカラーを検討する際にお使いください。
※素人が撮影した写真ですので実際の革の色味と同じではありません。
グレー、グリーン、黄緑はAmazonでは取り扱いがありませんが、ここに無いカラーも多数扱っているようです。
まとめ
アルランの山羊革シュリーは、非の打ち所がないくらいに良い高級素材と言えます。
良いポイントは、発色とシボのうつくしさ、繊維密度が高く耐久性に優れる点などがあります。
シュリーは主にヨーロッパのハイブランドで使われている他、国内のブランドや工房でも広く採用されており、日に日に認知度を高めている印象です。
レザークラフト素材としてもおすすめ。扱いやすく、革に不慣れな初心者さんにも使っていただきたい素材です。
シュリーの革素材はAmazonで購入が可能です。
元々が小さな山羊革なので、趣味の方でも大きすぎて困ることは少ないと思います。
小さな革は一枚丸々使いやすいところもおすすめポイントですね。一枚丸々使うことのメリットについては、革の勉強をしたいなら一度でいいから半裁とダブルショルダーを買ってほしい理由3つをご覧ください。
この記事は以上です。長文お読みいただきありがとうございました。
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