コバ処理の方法やノウハウは、職人をしている人間なら皆それぞれが持っていると思います。初心者レザークラフターは、どうすればきれいに仕上げることができるのでしょうか?
革職人歴9年の私の目線で、コバ処理をきれいに仕上げる為の方法についてお話をしていきましょう。
具体的なコバ処理のレクチャーは以下の記事をご覧ください。
・コバ処理に使うやすりの細かさについて
・ヌメ革に使えるコバ処理剤と使い方まとめ
・蜜蝋を使ったコバ処理のやり方
などをご覧ください。
レザクラテクニック記事をまとめたページはコチラ☟
革のコバ処理をきれいに仕上げるには?
私なりにこの仕事を9年続けてわかってきたことは、ふのりでも蜜蝋でも、樹脂や処理剤でも、大事なことは一つだということ。
- 固めて(ふのりで磨いたり樹脂をしみこませたり)、整えて(やすりがけand熱処理)固めて・・・を繰り返し、地道に整えていくこと
- 樹脂や蜜蝋は薄く仕上げること
以上です。
いかに美しいコバに仕上げるか、どれだけ丈夫に仕上げるか。
もっと掘り下げて語ってみましょう。
- コバの処理方法でいうと、磨くのか、塗るのか、その両方を用いるのか。
- 磨くなら、布海苔なのか、蜜蝋なのか、薬品なのか。鏝(こて)は使う?使わない?
- 塗るなら、塗った後何で整える?やすり?こて? 塗料の厚みは?
- 色は?
- コバ付近に刻む捻という飾りについていうと、深さは、コバから何ミリに入れるか、捻自体の幅はどのくらいに入れるか、線だけ刻むかコバごと包むように形作るか(玉捻)。←1mm2mmではなく、コンマ何ミリの世界です。
もちろん、革物作りに携わったことのない方にはチンプンカンプンなことはわかった上で書いています。お伝えしたいのは、この部分の違いで仕上がりの表情がはっきりと違ってくること。
どんな作り方をしているかがわからなくても、「この財布どこかかっこいい。」とか、「同じ革の鞄でも、こっちの方が端正に見える。」などという見え方は、なんとなく感じることができるものです。
革製品にくわしくない方でも、「何かいいな」とか、「よくわからないけどきれい」とかの感覚は持っているはず。その感覚を呼び起こしている正体は、もしかしたら、濁りなく輝く美しいコバなのかもしれません。
他のあらゆる趣味と同じように、掘り下げれば掘り下げるほどコバの楽しみは深く、追求しがいがあります。
ちなみに、deteの製品は、布海苔&蜜蝋で磨くこともあれば、塗料で仕上げることもあります。これはケースバイケースで、製品ごとに(場合によってはパーツごとに)仕上げ方を変えているといっても過言ではないくらいです。
人に教わり、古い本を読み漁り、情報を集めていく中で、それぞれのやり方にそれぞれの長所と短所があることがわかってきました。
絶対にこれと決めてかかるより、あまりこだわらず、状況によって柔軟な作り方をしていくのがベターだと思っています。
日本、フランス、イタリアの5社製コバ処理剤をテスト
本当に良いコバ処理剤はどれなのか、うちの製品にあったものはどれか?
実験して検証してみました。
今回試したのは以下5種類(一部社名伏字有りm(__)m )
左端は磨きで使う蜜蝋です。その隣から右に、
- GIARDINI SEMIDENSE – LEATHER EDGE PAINT フランス
- Vernis Edge Paint イタリア
- バスコ 80cc 黒 (サーマルコート) 日本
- 〇〇〇 日本
- 豊島化学 コバオール 日本
VernisのEdge Paintは、日本で取り扱っているお店がないようで、今回はアメリカのお店から個人輸入で取り寄せました。豊島化学は廃業しています。恐らく代理店や卸先はなかったと思うので、新たに手に入れることは難しいと思います。
それぞれを同じ工程で仕上げてみました。
仕上げ剤の使い心地は、各社まったく違うものでした。
どの塗料がどういう結果だったかはここでは書きません。
別記事ですが、2020年8月時点でのコバ処理剤8種類(無色限定)の使い方や雑感を備忘録としてまとめました。
検証結果を比べてみると、これがまさに、あちらを立てればこちらが立たずといったところで・・・。
柔軟性が高くひび割れにくい塗料は、革との結着が弱くはがれやすい。
結着が強いものは摩擦にも強い場合が多いですが、その分柔軟性が低く、曲げを繰り返すとひび割れを起こしやすい。
万能なものはなかなか無いようです。
革と塗料の相性もあり、また、作る製品によっても適材適所を考えて素材選びをする必要があるようですね
ちなみに、GIARDINIやVernisの塗料は、海外の有名ブランドでも使われているようです。
有名ブランドで使われている塗料を使えば、それだけでいい仕上がりになるかというと、必ずしもそうではないようです。
どういうことかというと、大手ブランドの製品の中には、手作業で仕上げる高級品もあれば、機械でコバ塗りをする量産品もあります。同じブランドでも、機械塗りと手塗りで、使う塗料を分けている場合があるようなのです。この機械塗り用の塗料で手塗りをしても、きれいに仕上げるのは困難な場合があります。
他にもじっくり試してみたい塗料が2つあるのですが、どちらも国内では流通していません、機会を見つけて手に入れて検証したいと思います。
まとめ
コバ処理の方法は一つではありません。
自分なりの理論を見出し、形にしていけるようになれば、あとは極めるのみです!先に書いたいろいろな仕上げ方法を駆使し、自分だけのやり方を見つけてください。
方法はそれしかありません。ここで私の今現在の(常に進化を求めています)やり方を書いたところで、大した意味はないと思います。なぜなら、1から10まで人に聞いたやり方をマネたところで、きっといつか納得できなくなって、結局は自分のやり方を探すことになる。
それがコバです。
回り道する必要はありません。自分で動きましょう。
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