丸ギリ(目打ち)の使い方(革職人dete流)を紹介する内容です。
丸ギリって型紙写すの以外に使い道ある?
そんな疑問を持った方に向けた内容です。
そもそも丸ギリって何?
という方は、関連記事 レザークラフトの丸ギリって何?千枚通し、目打ちとのちがいをご覧ください。
間違えやすい似た名称の「丸目打ち」(縫い穴を空ける道具)のつかい方については、関連記事 菱目打ちのクセを直そう!失敗例と使い方のコツが参考になります。
レザークラフトでの丸ギリの使い方
順番に解説します。
型紙を写す(カットする線をげかく)
型紙を革に写し、カットするラインをけがくのに丸ギリを使います。
趣味のクラフターさんや、私のように小規模ブランドを運営する職人にとっては、最も機会が多い使い方でしょう。
型紙を革に置き、おもりを載せるかクリップではさんで固定し、型紙のラインに沿って丸ギリでなぞります。
このラインに沿って革包丁で裁ちます。
この型紙の写し方は、タンニンなめし革や、跡が残りやすい繊細な革(顔料を使っていない)で有効です。
顔料を使ったクロムなめし革の場合、目打ちではカットラインが写せない場合があります。そういう場合はボールペンや銀ペンを使うのが一般的です。
関連記事 タンニンなめし革とクロムなめし革のちがい
関連記事 顔料を使っている革は悪い革?染料と顔料のメリットとデメリット
写さないで型紙に合わせて直接切る人を見たことがあるよ。どっちがいいの?
型紙をしっかり固定できるなら直接切った方が確実な場合もあるよ。好みの問題だね。
型紙を写してから切るのにもメリットがあって、刃を少しななめ入れて断面を末広がりにできるところ。詳しくは別の機会にするけど、こうした方がコバ磨きをしやすくできる場合があるんだ。
ハトメ抜き穴の目印を付ける(目付け)
金具を打ち付ける場所を型紙から写したり、ベルト穴を等間隔で開ける時の目印にしたりするのにも丸ギリは便利です。
型紙をどけると次のようになります。
この点に合わせてハトメ抜き(ポンチ)を当てて木で叩くと、
このように穴が開きます。
菊寄せを作る
丸ギリは菊寄せをするときにも使えます。菊寄せというのは、革の財布のヘリの角や、ファスナーのカーブ部分などに使われる技法のこと。
特に小物の職人(財布や名刺入れ専門の職人)は、丸ギリではなくて刻みネンという道具を使ったりもします。
私はそこまで緻密な菊寄せをする機会がないので、丸ギリが使いやすく重宝しています。
あるていど先がとがっていて、根本に向かって太くなっていない丸ギリが使いやすいです。
使っているのはこちらのニッケル丸錐です。
コバに塗料を塗る
丸ギリは柄がついているので持ちやすく、コバ塗りにも便利です。ベルト穴に塗る時や細かく入り組んだ場所に塗るのにも重宝します。
この時に使う丸ギリは、先端がとがっている必要はなく、キリ部分は長いほうが使いやすいです。
透明のコバ処理剤やふのりをつけるときは注意。鉄の丸ギリで塗ると変色してしまいます。
くるみボタンのひだを作る
くるみボタンのひだを作る時は、菊寄せと同じ要領で丸ギリを使います。この時、ボタン金具を固定するのに太めの丸ギリやくじりが活躍してくれます。
私は、ボンドを塗ったくじりをボタンの足に挿して固定しています。
作業工程については、関連記事 革くるみボタンの作り方で解説しています。
ミシンで縫った穴に手縫い糸を通す時
少し特殊なケースですが、ミシンで縫った部分に手縫いで別のパーツを縫い付けることがあります。
手縫い針が通りにくい場合があり、こういう時は丸ギリを軽く通して穴を広げてから縫うようにしています。
丸ギリの先でこじ開ける感じ。無理にやると革が避けてしまうので注意が必要です。
麻の縫い糸の始末に使う
麻糸は、ポリエステルやナイロン製とはちがい、熱して固めることができません。では、どうやって縫い終わりを留めるかというと、水溶性のボンドを使うのが一般的です。
この時、丸ギリの先にボンドを付けて行うとやりやすいです。
ざっくり糸の留め方を説明すると、糸にボンドを付け、裏が見えない場合や段差が気にならない場合は結び、そうでない場合は革の厚みの中で糸をクロスさせて糸を切って留めます。
ミシンで縫う時の押さえとして
丸ギリはミシンで縫う時の送りとして使うこともあります。
どちらかというと布の手芸で使われるテクニックかと思います。布の場合は、マチ針の代わりとして用いられることもあるようです。
私の場合は、丸ギリの細さを利用し、指で持つには窮屈な場面で使ったことがあるように思いますが、いつだったかよく覚えていません。それくらいレアなケースです。
ファスナーを手縫いする時
通常、革を手縫いするときは、菱目打ちという道具で穴を途中まで開けておき、菱キリという道具で貫通させながら縫います。
ですが、ファスナーを手縫いするときは菱キリは使いません。理由は、菱キリは切り込みを入れるため、ファスナーの生地を傷めてしまうからです。
生地を傷めないやり方の一つとして、菱キリではなく丸ギリで貫通させる方法があります。
丸ギリで開けた穴切れ目がないため広がりにくく、のちのちの耐久性に差が生まれます。
ほかには、裏からも菱目を打って(ファスナー生地まで貫通させない)、縫い針でファスナーを貫通させながら手縫いする方法も安全です。
丸ギリは研ぐ必要がある?ない?
丸ギリを研ぐにはどうすればいいかについてお話しします。
まず最初に、基本的に丸ギリは研がずに使えます。
では、研ぐ必要があるのはどんな時でしょうか。
研ぐ必要がある2つのケース
丸ギリを傷めてしまったとき
床に落として先が曲がってしまった、無理な使い方をして折れてしまったなど。
太くカスタムしたいとき
私の場合、細い丸ギリと太い丸ギリを使い分けたかったので、一本の先を丸めるカスタムを施しました。
太い方の丸ギリは革を貫通しません。
貫通しない丸ギリはキリと言っていいのかと疑問はあります。
定規のメモリは0.5mmです。
これらの使い分けは次の通りです。
細い丸ギリ:印付け、型紙の写し(けがき)などほとんどの作業
太い丸ギリ:印付け、コバ塗り(とがっている必要がない)、くるみボタン製作時の固定用など
丸ギリの研ぎに使う道具
#2000の紙やすりは、ホームセンターやAmazonで売っている耐水ペーパーを使うといいでしょう。
丸ギリの研ぎ方
研磨剤を摺りこんだ布か革を用意します。
青棒は、ミシンオイルを少し付けた布や革にこすりつけて使います。
ムラなく色がつくまで青棒を擦り付けます。
これで丸ギリの先端をつまみ、反対の手で丸ギリを回して研ぎます。
このとき、丸ギリの先端に研磨剤をどう当てるかで先端が丸まったりとがったりします。
丸ギリを回しながら少しずつ起こしたり寝かしたりして当てる角度を変えると、滑らかに先端を丸めることができます。
紙やすりは、丸ギリを太く丸めるときや、先端を傷めてしまったときのみ使います。むやみに使うと状態を悪くしてしまうことがあるため気をつける必要があります。
丸ギリは細いので、#2000などの細かいやすりでもすぐに削れます。番手を下げる(荒くする)場合は様子を見ながら行ってください。
なめらかに研げている丸ギリと角ばった丸ギリの線
なめらかに研げている丸ギリの線はなめらかでツヤが出ています。それに対し、角ばった丸ギリの線はツヤがありません。
この二つの線は何気なく引いたものですが、こうして比較すると、研いだ方は真っすぐなのに対し、角ばった方はゆらゆらしています。
これは丸ギリに角があって、革のデコボコ(毛穴)に引っかかっていたからと考えられます。
正確に線を引くためにも、革を不用意に傷つけてしまわないためにも、ストレスなく使うためにも、あるていど先端がなめらかになった丸ギリを使うのをおすすめいたします。
目安は指にあてても痛くないくらいなめらか(引っ掛かりがない状態)になっているのが理想。
私だったら、高級な丸ギリを削るのは躊躇しますね。ほどほどにお手頃な丸ギリを使いやすいとがり具合にカスタムして使っています。
この記事は以上です。
丸ギリは使い道がたくさんあって、レザークラフトにはとても便利な道具です。使いこなせれば製作の幅が広がったり、もっと効率的に作ることができるはず。楽しみながらいろいろと試していただけたらうれしいです。
おすすめの丸ギリは、関連記事 「レザークラフトの丸ギリって何?千枚通し、目打ちとのちがい」の中の「丸ギリのおすすめと買い方」の章でお話ししています。
かっこいい道具を使うとモチベーションもアップします!
長文お読みいただきありがとうございました。
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