革製品を作る上でキーになる部分の一つにコバがあります。
コバを仕上げる時、紙やすりを使う方が多いと思いますが、
どのくらい細かいやすりを使えばうまくいくの?
そんな疑問を持っている方に向けた記事です。
後半では、コバ磨きをラクにするツールについても紹介しています。
コバに使うやすりの番手は何がいい?
私のやり方を紹介します。
前提として、コバの仕上げには水分で磨き上げるコバ磨きと樹脂を使ったコバ塗り仕上げがあります。
私が使うやすりの番手
ふのりで磨く場合 #320(#240)➤みがき➤#320➤みがき
樹脂で固める場合 #320(#240)➤塗り➤#600➤塗り➤#800(1000)➤塗り
ふのりは320だけ?
樹脂の方が細かいやすりを使うのはなぜ?
320から800までどう使い分けるの?
みがきや塗りの前のやすりは何のために?
こんな疑問がわいているかもしれません。
順番に解説します。
ふのりのコバ磨きに使うやすりの番手
多くのタンニンなめしの場合、やすりの番手は、下地も仕上げも320だけで十分です。
しっかりとやすりであらし、磨きできれいに仕上げるのが磨きの特徴です。
ブライドルレザーなど、特に硬い革の場合のみ240を使うことがあります。
#320(下地)
↓
ふのり磨き
↓
蜜蝋磨き
↓
#320
↓
ふのり磨き
↓
蜜蝋磨き
ふのり磨きのやり方はこちらのページで紹介しています。
細かい番手のやすりが必要ない理由
ふのり磨きは、革の毛羽をふのりの水分で押し固めることでつるつるに仕上げています。
その為、やすりで毛羽を起こしてあげる必要があるのですが、ここで細かいやすりを使ってしまうと問題が。
どんな問題かというと、細かいやすりはすぐに目が詰まってしまうので、革の毛羽をやすりの段階で潰してしまうことになり、肝心のふのりが革の繊維に絡みにくくなってしまうのです。
コバ塗りに使うやすりの番手と使い分け
コバ塗りに使うやすりの番手は、コバ磨きとは対照的に、粗い物から細かい物まで少しずつ番手を上げて仕上げます。
薄い革を使った小物の場合、とても細かい#1000まで使うこともあります。
#320(下地)
↓
塗り
↓
熱したコテでならす
↓
#600
↓
塗り
↓
#800(1000)
↓
塗り
↓
熱したコテでならす
コテは電気ネンという道具を使っています。Amazonで買えるこれでも大丈夫です。
そのまま使うと温度が上がり過ぎてしまうので、こちらの調節機をかませて使いましょう。
※火事、やけどの危険性があるので注意して使いましょう。
少しずつやすりを細かくしていく理由
理由は、
やすりの番手は細かければ細かいほどなめらかに仕上げることができますが、時間はかかります。
あとは、どれだけ手間をかけられるか?、どこまで追求するか?です。
磨きとの違い(やすりの選び方について)
コバ塗りの場合、革の毛羽が必要なのは、革と樹脂を繋ぐ一回目の塗りの時だけで、二回目以降の塗りの下地はとにかくなめらかに仕上げておきたい。
だから細かいやすりがけが必要です。
磨きで使う#320などの粗いやすりは下地だけに使います。
みがきや塗りの前のやすり#320は何のため?
先ほどから下地のやすりとして#320のやすりを紹介していますが、これは何のためのものでしょうか?
下地のやすりをかける目的は二つあります。
- カットしたコバ面を整える
- ふのり/樹脂をからませやすくする
目的1:カットしたコバ面を整える
革を貼り合わせた後に余った部分を切り落とすのですが、どれだけうまく砥いだナイフで上手にカットしても、わずかな段差は残ります。
この段差を取り除くのに有効なのがやすり(耐水ペーパー)です。
目的2:ふのり/樹脂をからませやすくする
やってみればわかるのですが、カットした面そのまま磨くよりも、やすりであらしてから磨いた方がきれいに仕上がります。
これは意外に思うかもしれません。
カットした面の方がキレイだからコバもきれいに仕上がるんじゃないんですか?
と、手伝ってくれている職人に質問されたことがあるのですが、逆です。
裁断面は整っているので、ふのりや樹脂をからませようと思っても表層だけしかからまない(特に樹脂)。
やすりをかけて毛羽立たせると、繊維と繊維の間に入りやすくなるので、より丈夫でなめらかなコバを作りやすくなるということです。
コバのやすりのかけ方
手でかける方法と、ルーターを使う方法があります。
手でやすりがけ
コバにやすりがけするなら、耐水ペーパーを使って手で磨くのが一番だと思います。
理由は、コバの丸みに合わせてやすりがけできるから。
コバ磨きをする場合、大抵はヘリ落としでコバを丸めてから行うので、面で磨くよりもコバの丸みに合わせた方が良いと思っています。
他の職人の作業を見ていると、木の板にやすりを貼って磨く方もいるようなので、ここは好みの問題かもしれません。
ルーターでやすりがけ
ルーターに付けたやすりでけずる方法。
時短にはなりますが、やはり精度は手でかけるよりは落ちます。
昔はやなせという日本の会社がもっと細かい紙やすりを巻いたビットを販売していましたが、今ネットで買える物の中では☝で紹介した#320が一番細かいもののようです。
やすりの買い方
わかりやすくするため紙やすりと書いてきましたが、実際の商品は耐水ペーパーが使いやすくおすすめです。
ホームセンターが近くにあれば安く買えますが、無いならネットで買うこともできます。
たとえばガレージ・ゼロのこちらは使いやすそうな番手がそろったセットで便利そうですね。
コバ磨きをラクにする道具/機械
コバ磨きにはいくつか方法があります。
基本は布磨き。仕上がりが一番きれいな方法だと思います。
ここからは、他にもっとラクな方法があるよというお話をしていこうと思います。
仕上りの良い布磨きと、機械や道具を使った効率的な方法。
どちらを選ぶかはクラフター次第です!
布
現在私が使っている方法は布を使った手磨き。
効率は悪いですが、結局はこれが一番キレイに仕上がりました。
老後体力的に問題が出てきたら、その他道具や機械を使った方法に変えようと思います。
毛羽立ちが少なく、目が細かい薄い布が使いやすいと思います。
ハンカチやワイシャツ生地などがおすすめ。
Tシャツの生地は柔らかすぎてダメでした。
私は使っていませんが、クラフト社はコバ磨き用の帆布も売っています。
スリッカー
木の棒に溝が彫られたスリッカーという道具を使って磨く方法があります。
硬い木で磨くので、手を使って布で磨くよりも密度の高いコバに仕上げることができます。
スリッカーの選び方ですが、黒檀などのような密度の高い硬い木を使ったものがおすすめです。
キメが細かいのでコバをキレイに仕上げることが可能。
木バフ×ルーター
手で磨くことなくコバ磨きができる便利×時短ツール。
試したことがあるのですが、次第に使わなくなりました。
理由は手で磨いた時のクオリティには近づけなかったから。
職人でも使っている方は多いので、コツをつかめば市販の革製品同様にすることはできます。
もしルーターを使うなら、回転数が変えれるタイプがおすすめ。
☝で紹介したプロクソンの28525は私も使っていますが、精度が高く、長時間使っても焼き付きが起こりにくく良い商品です。
木バフ×グラインダー
この形状では無いですが、グラインダーに木バフを使って磨いてみた事があります。
今も使っているのか?というと、やはりルーター同様に使わなくなりました。
補足しておきますが、商品としてダメということではないです。
手で磨くのがむずかしいなど体力的に不安がある方、効率化を重視したい職人などは導入を検討してみてもいいかもしれません。
その他レザークラフト道具まとめをこちらで紹介しています。
コバに使うやすりとコバ磨き道具についてのまとめ
長くなりましたが、やすりにスポットを当てて私のコバ磨きの方法を紹介してきました。
コバ磨きに使うやすりの細かさは、ふのりやトコノールで磨く場合と、ビニモなどの樹脂を塗る場合とで違います。
ふのりで磨く場合 #320(#240)➤みがき➤#320➤みがき
コバ塗りの場合 #320(#240)➤塗り➤#600➤塗り➤#800(1000)➤塗り
ふのり磨きの場合は320で荒らし、水分を使って押し固めるイメージ。
コバ塗りの場合は、塗って磨いて、塗ってさらに細かいやすりで磨いて・・・と繰り返すイメージ。
共通しているのは、下地をしっかり荒らすこと。
カットした面をしっかり荒らし、ふのりや塗料ををからませながら磨いたり塗ったりという作業がポイントです。
別記事ですが、2020年8月時点でのコバ処理剤8種類(無色限定)の使い方や雑感を備忘録としてまとめました。
ご質問等ございましたらコメント欄でお寄せ下さい。
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