この記事では、バッグや財布の芯として使われるボンテックスについてお話しています。

どうやって使うの?

他の芯材とのちがいは?

どこで買えるの?
などの疑問を持っている方にお楽しみいただける内容です。
ボンテックスの特徴と用途
まず、ボンテックスとは何なのか?から見ていきましょう。
素材はセルロースとゴム
ボンテックスの原料はセルロースとゴム。ざっくりいえば、ゴムで柔軟性を持たせた厚紙のような芯材です。
紙と聞くとペラペラの状態を想像する方もいるかもしれませんが、ボンテックスは0.4mmから2mmの物が多く使われ、しっかりとした硬さがあります。
比較対象 一般的なコピー用紙の厚みは0.1mm未満
硬く仕上げたい時に重宝する芯材
ボンテックスは、やわらかい素材に張りを持たせて硬く仕上げたい時や、硬い革をさらにガッチリと仕上げたいときに重宝します。
うすい素材にボリュームを持たせたり、力がかかる部分を補強する際にも便利な素材です。
厚みのラインナップ

ボンテックス各種で厚みが複数用意されています。
一般的に使われるのは0.4mm〜2.0mmで、販売している厚みはお店によって多少異なります。
ボンテックスの用途。曲がる部分には不向き
ボンテックスは比較的柔軟性が乏しい芯材なので、やわらかいバッグや、財布の曲がる部分などにはあまり向きません。
あくまでも文字通りに板物として使うのがおすすめです。
カチッとしたカバンの胴(本体)や底、財布のフラップ部分や本体の曲がらない部分など
ボンテックスには向きがある
ボンテックスには縦に溝が入っていて、この溝に沿った折り目になる向きに曲がりやすく、溝と交差する向きに曲がりにくい性質があります。
この性質を知った上で縦横どちらの向きに使うかを判断します。製品にしたときにどのように使われるか?をイメージして選びましょう。
次の動画をご覧ください。
芯材のボンテックスにも、生地との「目」と同じように向きがあります。
— デテログ (dete®の人) (@mkgx81) May 3, 2022
向きに沿って曲げると比較的しなやかに曲がり、向きに逆らって曲げると折れてしまいます。 pic.twitter.com/ZQP84XQbRz
繊維の向きに沿って曲げるとしなやかに曲がり、向きに逆らって曲げると簡単に折れてしまいます。


ボンテックスは、動く部分に使うなら(フラップなど曲がる部分にはあまり使わないと思いますが)、動いた時に折れてしまわないように曲がりやすい向きを合わせて使います。
新品の状態なら向きがちがっていても気になりませんが、実際に使っていくうちに劣化が起こって折れやすくなる可能性があるため注意が必要です。
シール加工とは
シール加工というのは、裏面をシールのように接着できる状態にしておく加工のこと。剥離紙をはがすと接着面が現れます。

シール加工は一見便利ですが、シール加工されていない方が使いやすいと感じる場面もあります。接着が効きにくい素材があったり、ミシンの針が目飛びしやすくなるなどのデメリットがあるからです。
使い方にもよりますが、どちらか一つを買うのであれば、シール加工されていない方をおすすめします。
®MORI-FRESH treatedは抗菌加工の商標

ボンテックスの表面に印刷された、®MORI-FRESH Treatedって何?と気になった方がいるのではないかと思って、調べました。
The product is treated with our unique Mori-Fresh® technology to resist the growth of bacteria, fungi and mold
ボンテックス公式サイトより
Google翻訳 この製品は、バクテリア、真菌、カビの繁殖に抵抗するために、独自のMori-Fresh®テクノロジーで処理されています。
®MORI-FRESH Treatedは、バクテリア、真菌、カビの繁殖を抑えるボンテックス独自の処理加工のこと。

靴のインソールやミッドソールに使われるボンテックスならではの加工ですね。
テキソン、ウェブロン、ボンテックスちがいは?
名称はちがいますが、同じものとして販売されています。
ボンテックス347と47と37のちがい

ボンテックスには3つの種類があります。
数字のちがいはゴム含有量のちがい
製品にふくまれるゴムの量がちがい、数字が少なくなるほど含有量が多くなり、価格が上がります。
347 | 47 | 37
少ない → ゴム含有量 → 多い
安い → 価格 → 高い
硬い → しなやかさ → しなやか
それによって質感と弾力に差が生まれ、デザイナーが求める硬さや弾性に応じて選ぶことができます。
しなやかさの比較実験。結果は意外にも…
以下は同じ1.0mm厚で比べた時のちがいです。
ボンテックス比較1⃣
— デテログ (dete®の人) (@mkgx81) May 4, 2022
347:紙に近いペラペラな質感
47:最も硬く、曲げると割れる
37:硬いがしなやかさもある pic.twitter.com/61UyXdA1Gc
347:紙っぽい質感でペラペラな印象。
47:347よりも一気にしっかりした質感に。最も硬く感じる。
37:47よりもスムーズに曲がる感じがある。しっかりした硬さもあり、最もリッチな質感。
販売店の解説を読むと、数字が小さい方がしなやかだとのことですが、実際に比較してみると、347よりも47や37の方が確実に硬く感じました。ゴムが多く入ってしっかりしているからなのでしょうか?次の動画では力を入れて折り曲げてみました。
ボンテックス比較2⃣
— デテログ (dete®の人) (@mkgx81) May 4, 2022
深く曲げてみた
347:柔らかいが折れ方が紙に近い
47:深く曲げるとバリバリに割れる
37:曲げへの耐性が最も強い pic.twitter.com/AGtr3CJCvx
347:柔らかいが、折れ方が紙のよう。限界がくると折れてしまう感じ。
47:347よりもさらに折れやすく、割れてしまう。
37:曲げへの耐性が最も強い。
中間の47だけがバリバリとひび割れました。
次の写真は、いろいろな方向に折って変化を確かめたもの。

47だけが激しくひび割れしています。
どうしてこうなったのでしょうか。販売店の清水商事さんに問い合わせてみました。
問い合わせた結果|ボンテックスは経年劣化する

それぞれの曲がり方を比較してみたところ、47がもっとも硬く、深く曲げると簡単に割れてしまいました。
比較動画(先ほどのTwitterURL添付)
これは元々持っている性質によるものなのでしょうか。
それとも劣化が考えられますか?(37と47は8年保管したもの)

担当者さん
ボンテックスは紙です。
紙は生き物と表現されるほど、時間や環境によって質が変化します。
古い物となると、水分がとんでしまい割れやすくなります。
また、変化の1つとして伸縮もします。
つまり、紙の劣化が原因の可能性があるということです。
普通は8年も使わずにおくことはあまりないとは思いますが、ボンテックスを買ってから革製品になって使ううちに8年以上経つ可能性は十分にあるのではないでしょうか。
通常の範囲で革の補強に使う分には、ほとんど気にする必要はないと考えます。
ですが、柔軟性を必要とする使い方をする場合や、強度をボンテックスに頼る場合(うすく柔らかい革に使う場合など)は、性質をよく理解したうえで使う必要があるでしょう。
ボンテックスの使い方とコツ
レザークラフトやバッグ作りをする方に向けて、ボンテックスの使い方をざっくり解説します。
基本はベタ貼り
ボンテックスは、ほとんどの場合表地もしくは裏地にベタ貼りして使います。

表裏はこだわらなくて大丈夫です。平面に貼る場合は、あらかじめ重しなどを載せてボンテックスの曲がりクセを直しておきましょう。
曲げて貼る場合は、ボンテックスが折れないように気をつけつつ、曲げクセを付けてから貼るときれいに貼れます。
革とボンテックス両方の接着面にボンドを塗るか、あらかじめシール加工されたボンテックスを使って貼りましょう。
シール加工は剥離紙を剥がせばすぐに貼れるため便利ですが、接着はあまり強くありません。deteでは、シール加工ボンテックスの場合でも、革面に接着剤を塗ってから貼り合わせるようにしています。
革用ボンドの使い方と貼り方については、ゴムのりの使い方(革と革を接着する方法)をご覧ください。
フチの段差に注意
ボンテックスをそのまま貼ると、革の厚みや種類によっては段差が目立ってしまいます。
これを防ぐには、ボンテックスの縁をナナメ漉きして段差が出ないようにする方法があります。

ボンテックスは漉き加工できる
ボンテックスは、革のように漉き加工ができます。

薄いボンテックスが無い時、手元にない時は漉いて代用したり、先にあげたフチの段差をなくすためにナナメ漉きしたりします。
ボンテックスは紙系の芯材なので、刃が切れなくなりやすいです。マメに砥ぎながら漉きましょう。包丁で漉くときも同様です。
ボンテックス同士を貼り合わせてさらに強く
革を革を貼り合わせて補強すると性質がちがう丈夫な革を作ることができますが、ボンテックスも同じです。

よりしっかりした芯を入れたい場合は、ボンテックスの裏と裏を中にして貼り合わせて使います。このとき、ボンテックスの向きが縦横互い違いになるように貼り合わせてください。
こうすることで、縦にも横にも折れにくく曲がりにくい強い芯材になります。

ボンテックス各種の使い分け
- しっかりした補強を目的とするならば、37がベター
- コストを下げつつほどほどに補強したいなら347がベター
私のブランドdete®では、主に動かないで欲しい部分の硬さや厚みを増す目的で347を使っています。
しなやかさは求めておらず、強度に関しては革がメインで芯材は補助的な使い方が多いのも347を選んでいる理由です。
補強しつつしなやかさを求める場合は、ロザーフレックスやバルソールなど、レザーボード系の芯材も選択肢になります。
その他の補強用の芯材については、革の伸び止めに使える素材一覧とテクニックをご覧ください。
ボンテックスの販売店
ボンテックスが買える取扱店を紹介します。
浅草ゆうらぶ
買いやすい楽天の芯材・裏地取扱店。1枚単位での購入になります。
Amazon(レザークラフト材料専門店ぱれっと)
有名レザークラフトショップぱれっとのAmazon店です。
清水商事
職人・メーカー御用達の資材屋さん。厚みのラインナップが豊富です。m単位での購入になります。
大戸糸店
職人御用達の道具・材料店です。
その他裏地や芯材が買えるお店については、革のバッグや財布のハンドメイドに使える芯材ネット販売店まとめをご覧ください。
この記事は以上です。長文お付き合いいただきありがとうございました。
コメント
突然すみません。
趣味でレザークラフトをしていて、シザーケースを2mmの革で使っていて芯材を入れてみようと思ってベルポーレンの0.5mmを買ったんですが、色々見てたらこのサイトに辿りつきボンテックスの方が良いのか迷っています。どちらが良いんでしょうか?ちなみに厚みもどれくらいがいいんでしょうか?
よろしければ教えて下さい。
こんにちは。
うちではベルポーレンも使いますしボンテックスも使います。厚みもいろいろです。
どう使うかによって適正な芯材はまるで変わってくるので、まずは両方買って試してみることをおすすめします。
ボンテックスの厚みは、うちの場合0.4~0.8くらいをよく使いますが、どう使うかによって変わるので参考にならないと思います。
小さい革に貼ってみて、革の硬さやコシがどう変わるかを見るといいですね。
やってみてください。