この記事では、へり定規(へり裁ち棒)の使い方と、それを使ったレザークラフトの効率アップテクニックについてお話しします。
いきなりへり定規という見慣れない単語が出てきて「?」マークが浮かんだ方もいるかもしれませんね。
へり定規は、上手に使えばレザークラフトを時短化できる超絶べんりなツールです。使い方も簡単なので、この記事で使い方を学んでぜひトライしてみてください。
へり定規(へり裁ち棒)とは?
へり定規というのは、おもにへり返しをするときに使う真鍮製の定規のことです。
革製品の断面の加工技法のひとつ。
革の端の厚みを漉き(うすくすること)、裏側に折り返して貼ったり縫い付けたりする製法のこと。
革の断面が露出しないので上品な仕上がりになります。
へり返しは安価な量産品から最高級品まで幅広く使われるテクニックなので、あなたがお持ちのバッグや財布でも使われているかもしれません。
ちなみに、定規と言っても、目盛りが書いてあるふつうの定規とはちがいます。
拍子抜けするくらい簡素な、ただの真鍮製の角棒です。厚みは約3mmで幅は2mmくらいから10数mmまで1mmもしくは0.5mmきざみで販売されています。
写真に一つだけ厚みがちがうへり定規があるのがわかりますか?左から3番目のへり定規です。
これは、実はへり定規として売られているものではなく、ホームセンターで買った4mm×4mmのただの真鍮棒。これでも全く問題ありません。
もし自作する場合は、真鍮やステンレスなどさびにくい素材のものを使ってください。
へり定規の使い方は?
へり定規の幅にカットしたり表面を荒らしたりするガイドになる道具ですが、実践的な使用例をいくつか挙げてみましょう。
使い方1 へり返し幅にカットする
表革と裏地を貼った後、へり定規を裏地のへりに当て、へり定規の反対側に刃を沿わせるようにして表地をカットします。
7mmへり返したいなら7mmのへり定規、10mmへり返したいなら10mm幅のへり定規を使います。
なお、ここでは裏地の厚みは考慮していません。
実際は裏地分も計算に入れる必要があります。裏地が1mmなら8mm幅でカットするといった具合です。
これでへり返し分の幅がキマります。
ちょっとだけへり返しの技法について解説しておきしょう。
先ほどの通り任意のへり返し幅にカットしたら、
裏地に沿わせるように角ベラなどで折り返し…
叩いたりローラーをかけて圧着。このあと縫製をかければへり返し完了です。
縫わないで仕上げる場合もあります。
使い方2 任意の幅でカット&荒らす
直線にカットされた革のへりからへり定規幅でカットしたり、その幅で荒らして接着しやすくしたりするテクニックです。
関連記事 革の表面同士がうまく接着できない!革表面を荒らす3つの方法
ヘリ定規の幅で切ったり荒らしたりする方法。
— dete® (@mkgx81) April 29, 2021
早くてわりと正確です。
グレーの物体は単なるガイドなので、革より厚みがあって直線の硬いものならOK。
ヘリ定規は、ホームセンターで真鍮棒を切ってもらうか、職人が出入りする道具店などで買うか。複数サイズあると便利です。 pic.twitter.com/3LqbDsFZXV
やり方は動画内で実践していますが、文字でも解説しておきましょう。
高さがある直線のガイド(グレーのやつ)を革に沿わせて置き、そのガイドにへり定規をぴったり付けて置きます。
次にカッティング定規をへり定規に付けて置き、そのカッティング定規のラインでカットしたり革を荒らしたりします。
使い方3 肉盛りの端からカットラインを決める
肉盛りという技法を使うときにもへり定規が役立ちます。
肉盛りというのは、革と革を張り合わせた中に芯を入れて立体感を出すテクニックのことです。
肉盛りのやり方について知りたい方は、『肉盛り』で立体的に作る方法。レザークラフトレベルアップ!高級感を出すテクニックをご覧ください。
肉盛りにもいろいろやり方がありますが、今回紹介するのは芯の形をベースに仕上がりサイズを決めるやり方です。他には裏地を最初に仕上がりのサイズで裁つ方法もあります。
芯をはさんで表革と裏地を貼った後、芯の段差にぴったり付けてへり定規を置きます。
へり定規のラインに沿って切るか、丸目打ちでけがいてそのラインに沿って切ります。
このように仕上がりました。
使い方4 革と型紙を揃える(効率化&精度アップ)
私が推している使い方なので、次の章でピックアップして紹介します。
へり定規の保管方法
保管方法に注意!
へり定規を使ってレザークラフトを時短・効率化させる方法
レザークラフトを時短化する簡単なテクニックをご紹介します。
直線で構成された型紙にしか使えない方法ですが、かなりの効率化が期待できるテクニックです。
必要な道具
- へり定規
- カッティング用定規
- 立クリップ
- カッター
カッティング用の定規は、ステンレス製もしくは、ステンレス板が貼ってあるアクリル定規を使ってください。全面アクリルやアルミ製は適しません。
関連記事 レザークラフト向け 定規マニアの革職人が選ぶ本当に使える定規
立クリップというのは、生地をまとめて裁断したり、革の上に型紙を載せた状態で固定してカットしやすくしたりする道具です。
関連記事 最高に使える型紙押さえ用立クリップ|レザークラフターは3つ買おう
動画で解説
使ってる道具紹介。型紙を革に写したり、薄い革なら型紙当てたままカットしたりがめちゃめちゃはかどる超絶便利なやつ。https://t.co/VNplYmDS7D pic.twitter.com/zsjyDFe5sS
— デテログ (dete®の人) (@mkgx81) September 2, 2019
写真と文で解説
立クリップで型紙を固定し、型紙の直線部分にへり定規を沿わせます。
へり定規の内側にカッティング定規を沿わせます。
定規の外に型紙がはみ出ていないのを確認してカットすれば型紙通りにカットができます。
定規に沿って切る場合は、定規がずれないように真上からしっかりと体重をかけておさえましょう。
定規を使った切り方については、関連記事 定規でまっすぐ線が引けない(切れない)方へ【解決策】をご覧ください。
カットした物が次の写真。
アップで見てみましょう。
型紙と寸分たがわずに切れました。
この時のへり定規は3mm角がおすすめ。この細さが絶妙です。
こちらもそろえたい。丸型へり定規
同じような名前の丸型へり定規というものがあります。
丸型へり定規とは
丸くて平べったくカットされた真鍮のコインのような形状で、中央に穴が空いています。
この穴にペンや丸目打ちを通し、丸型へり定規の外周面をガイドに沿わせて印をつけるのに使います。
直径10mmの丸型へり定規ならガイドより5mm外側に、20mmの丸型へり定規なら10mm外側に線を引けます。
丸型へり定規のつかい方
直線のへり定規と同じような用途ですが曲線に対応しているところがポイント。その分直線の安定感はへり定規の方が上です。
具体的には、仕上がりサイズで作った型に縫い代を足す場合(内縫い)や曲線のへり返し部分のカットなど。
また、一度作った型を一回り大きくするなどの使い方もできるでしょう。
へり定規の章で紹介した肉盛りのカットラインを決めるのにも有効です。
初心者の方には必須の道具ではありませんが、持っておくと非常に便利なアイテムです。
丸型へり定規の仲間?型紙用の「ぬいしろライナー」
丸型へり定規に似た道具に「ぬいしろライナー」(商品名)があります。
これも丸型へり定規同様の道具ですが、使い方がちょっとちがいます。
二段構造になっていて、段と段の間に型紙をはさんだ状態で線を引く使い方です。
安定した状態で使うことができます。
画用紙など硬い紙なら使いやすいのですが、革をガイドに使うには不向きな場合があります。また、写真よりも厚い紙だと使えない場合があります。
相性を考えて使い分けるのがおすすめ。
これも良い道具なので、バッグやポーチなど内縫いの製品を作るなら持っていると便利ですよ。
(3mm・5mm・7mm・10mm幅)の線が引ける4個セットです。
へり定規が買えるお店
主に職人御用達の専門店で扱っているへり定規ですが、Amazonや楽天、レザークラフトショップなどでも手に入ります。
へり定規(へり裁ち棒)が買えるお店
職人が通うお店ならほとんどのお店であつかっているでしょう。最近は趣味のレザークラフトショップや、Amazon楽天ヤフーショッピングなどでも手に入ります。
大戸糸店などのプロが利用する専門店では豊富なサイズがそろっています。
丸型へり定規一覧
大手レザークラフトブランドが販売しており、専門店から大きなホームセンターまで幅広く扱っています。
協進エルの丸型へり定規は私も使っている昔ながらのへり定規です。
↑こちらの丸型へり定規は使ったことがありませんが、サイズが豊富な上お安いです。品質は不明なので自己判断でお求めください。
ぬいしろライナーは、Amazonや楽天、手芸店などでお求めください。
その他、UNBLOWNという海外メーカーの真鍮丸型へり定規も使いやすそうだったのですが、2023年12月現在国内での取り扱いはみつかりませんでした。
ぬいしろライナーとちがい型紙の厚みに左右されない構造で便利そうだったので残念です。
この記事は以上です。長文お読みいただきありがとうございました。
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