良い革ってどんな革?
という疑問に答えます。
最初に私の結論です。
作りたい製品に合った質感や色の革が良い革。だから何が良い革かは何を作るかで全然別の答えになる
いくら優れた点があっても、作る形にマッチした革質でなかったら型崩れしてしまったりすぐに壊れてしまったりするさえあります。
さらに好みの問題もからんできます。
ヘタに「○○の革が一番良い!」などと言おうものなら、他の職人さんや革マニアの方から怒られかねないです。
なので今回は革質だけに絞り、その中で良い革に共通する特徴とその理由にフォーカスしてお話ししていきます。
良い革に共通する特徴
- うす化粧の革
- ギッシリ詰まった革
- キメが細かい
- 退色しにくい
(いずれも例外あります!)
うす化粧の革
良い革は、塗装が薄いにもかかわらずきれいに仕上がっています(高級品のアニリン染め、ヌメ革などは無塗装)。
これは、顔料を使う前に染料で十分に下染めしているからこそできること。
そして高い技術が必要です。
染料の染めを丁寧に行わずにいきなり顔料で塗装したとしても、パッと見だけはきれいにすることは可能。
でも、それだと顔料の層を分厚く塗り重ねなくてはいけなくなります。
層が厚くなると、革の風合いが損なわれ、またひび割れも起こりやすくなるデメリットがあります。
うす化粧革中のうす化粧革『素上げ』とはどんな革なのか?について以下リンク先でお話ししています。
ギッシリ詰まった革
繊維密度が高くギッシリと詰まった革は良い革です。
繊維密度が高い革は、そうでない物に比べて丈夫で型崩れしにくい、コシが強い、コバがきれいに仕上がるなどの特徴があります。
繊維密度が高い革は硬いものと思ってしまうかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。
柔らかく良い革は、断面を見るとやはりぎっしりと詰まっている場合が多いです。
キメが細かい
先ほどの繊維密度と似ているけど少し違う。
ここでいうキメとは、繊維そのものの細やかさのことです。
キメが細かい革は繊細で美しい
キメが細かい革の一番の特徴は、見ためが繊細で美しいこと。
財布や手帳等、手にもって使う物に使うと、持つ人を引き立ててくれて最高です。
キメが細かい革の方が繊維密度も高くなる場合が多いです。
同じ厚みで比べると、キメが粗い革を使うよりも細かい革を使った方が型崩れしにくく長持ちする傾向があります。
だから、キメが細かい革は小物に向いているというわけです。
≪細かい≫
ゴート(山羊)やカーフ(子牛)
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キップ(中子牛)
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ステア(去勢雄牛)
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ブル(雄牛)
≪粗い≫
キメが細かい革は美しく曲がる
キメ細かい革は、手にもって曲げた時の動きが素直でしなやか、それでいて弾力がある。
柔らかさをいかしたドレープを製品に取り込むと、革の美しさが際立ちます。
退色しにくい
退色しにくい革は素晴らしい。
鮮やかに塗装された良い革は、スレや汚れにも強く長持ちします。
上手に染められたヌメ革は、タンニンなめし革特有の色変化を取込みながらも、鮮やかな色彩を保ちます。
ヌメ革の場合、特に油分が多い革の場合、仕上げの方法によっては色落ちしやすくなります。
特に、はっきりと濃く染められた革はその傾向が強くなるので、キレイならそれでいいとは言えずむずかしい部分ではあります。
『良い革』についてのまとめ
「良い革」とは何かについてお話ししました。
良いか悪いかは作りたい製品に合った素材かどうかが一番大切だと考えています。
それを理解した上で革質が良い革に多くみられる特徴は次の通りです。
- うす化粧
- 繊維がギッシリ詰まっている
- キメが細かい
- 退色しにくい
などの特徴があります。
これが製品になった時にどう作用するかというと、
- うす化粧 ⇒ 経年劣化しにくい
- 繊維が詰まっている ⇒ 耐久性&コバの仕上がり
- キメが細かい ⇒ 美しい表面と美しい革の動き(ドレープ)
- 退色しにくい ⇒ 経年劣化しにくい
これをさらにまとめると以下のようになります。
だから、職人は良い素材を求めます。
逆に、ファッション性が高いカジュアルなブランドは、品質は高くないけれど”おもしろい素材”を好んで使ったりします(安いからという理由も多いにある)。
それもいいんだけど、長く使ってもらう前提なら革質は超重要事項だから・・・
『どういう素材を使っているか?』
から、ブランドが目指す方向性が見えるような気がします。
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