ヘリ落としって、誰にでもできる簡単な工程に見えるかもしれませんが、コツをわかっている人がやるのとそうでないのとで、仕上がりに大きな差が出ます。
初心者にはむずかしそう。
大丈夫。理屈がわかれば誰でもうまくなれます!
なお、今回紹介する方法は、特にクロム鞣しも含めた柔らかい革と繊維密度が低くてゆるい革に効果的な方法です。
「ヌメ革のヘリ落としはできるけど柔らかい革のヘリ落としは苦手!」という方に参考になるのではないかと思います。
動画を交えて紹介します。
ヘリ落としのコツ|柔らかい革でも失敗しにくい方法
ヘリ落としする部分を叩いて、繊維密度を一時的に高めてからヘリ落としします。
叩き終わったらヘリ落とし工程に移りましょう。
ヘリ落としのコツ
押さえた左手は、ヘリ落としの動きと一緒に押さえながら滑らせます。
こうすることで、ヘリ落としする部分を一時的に圧縮した状態にすることができ、繊維がゆるい革でもきれいに面取りできます。
練習してちょうどいい力加減を見つけましょう。
刃の少し先を押さえるやり方のデメリット
柔らかい革はこの方法が一番キレイにヘリ落としできるのですが、デメリットもあります。
刃が革に当たる部分がかくれて見えないので、角度は右手の感覚頼りになる点。
なので、少し慣れが必要ですが、ムズカシイことではないので安心してください。
ハギレでちょっと練習すれば感覚をつかめると思います。
切れ味は大切
へり落としは切れ味が重要なツール。
常によく切れる状態で使いましょう。
砥ぎ方は後ほど解説します。
やりにくいと感じたら・・・
その時は、無理に刃先を押さえる必要はありません。
その代わりに、ヘリ落としの脇(左)を定規か指で上から押さえながらヘリ落とししましょう。
これでも一定の効果はあります。さらに刃先を指で押さえない為、角度が目で確認できる安心感があります。
多くの職人さんは、この方法を使うか、全く押さえずにヘリ落とししていると思います。
押さえたほうがいいのは間違いないと思いますが、刃を押さえるか、脇を抑えるかでそれぞれのメリットがあります。
やりやすい方法を選んで製作に活かしていただけたらいいのかなと思います。
是非チャレンジしてみてくださいね!
硬い型押し革の場合は?
型押しの硬い革などの場合、指で抑えてもあまり圧縮できない場合があります。
でも、デコボコだからそのままではキレイにヘリ落としできません。
こういう場合どうやって角を面取りするかというと、有効な方法は2つ。
- 押しネンや縁ネンでコバ付近を熱を使って圧縮してからへりおとする方法。
- ヘリ落としを使うのではなく、カンナや包丁などの刃物でがっつり削ってしまう方法。
押しネンでコバ付近を熱を使って圧縮してからへりおとする方法
熱した押しネンの熱を利用し、ギュッと革のコバを圧縮してからヘリ落としします。
こうすることで、繊維がゆるい革でもヘリ落とししやすい状況を作ることができます。
ヘリ落としを使うのではなく、カンナや包丁などの刃物でがっつり削ってしまう方法。
本職が使うカンナは木を削ったり特殊な砥ぎをしたりと仕立ててからでないと使いにくいので、初心者の方には少しハードルが高いです。
最初から仕上がっているものもあり、こちらは私も持っています。
ヘリ落としの研ぎ方は?
そもそもなのですが、ヘリ落としがきちんと砥げていないときれいに仕上げることはできません。
砥ぎ方は人によっていろいろ方法がありますが、羅列するとこんな感じでしょうか。
- ピアノ線などの上に耐水ペーパー+油
- ピアノ線などの上に綿帆布+青棒+油
- 麻糸、タコ糸に青棒を塗る
撮影用に砥いでる風にしてみましたが、今思えば鉄棒が少し太かったです・・・
私の場合、frontier toolのヘリ落としは、普段は帆布に青棒塗り、サイズのあったピアノ線の上に置いて砥いでいます。
繊維が細かい布の方がきれいに砥げるかと思いきや、意外にも粗い帆布の方が切れ味が戻ります。
☝長いのでニッパーでカットして使います。
切れ味が戻らなくなったら、帆布ではなく耐水ペーパーをピアノ線の上に載せて砥ぎます。
この時、耐水ペーパーに青棒を塗って砥ぐととてもいい仕上がりになることがわかりました。
青棒×耐水ペーパーで砥ぐ
耐水ペーパーに青棒を塗って砥ぐとより良い仕上がりになるように思います。
- 青棒(研磨剤)
- 耐水ペーパー#2000
- ピアノ線
- ミシン油
ミシン油は100均で売ってるような安い物でも大丈夫です。
ピアノ線は☝で紹介しているようなものを。ペーパーはホームセンターや、Amazonなどでも買えます。
上はクラフト社の推奨の砥ぎ方です。この砥ぎ方で砥ぐなら、#800は少し粗過ぎるかなと思います。#2000でちょうどいいくらいだと思います。
以前パロサントの日本の代理店をしていた方は、板に太さを変えた何本かの麻糸を張り、麻糸にオイルと青棒を擦り込んでカンタンな砥ぎ機を作っていました。
これはカンタンに作れると思うので是非やってみて欲しいです。
より滑らかにするなら研磨フィルムを使う
例えばこのようなもの。
仕上げ用なので、やすりよりも滑らかな仕上がりになります。
砥いで使っているうちに溝が深くなったら・・・
砥ぎを繰り返していくと、溝が段々深くなっていき、ヘリ落としがやりにくくなったり、適正な使い方ができなくなっていったりします。
そんな時はメンテナンスをしましょう。
溝を浅くする作業です。
ずっと同じ角度で砥いでいると角が立ってきてしまうので、細かいやすりで磨いてあげるなどしてきれいに仕上げましょう。
頻繁に使っている私でも年1回とかのメンテナンスです。やりすぎ注意です。
ヘリ落としの先端の跡が残ってしまう場合の対処法
ヘリ落としの先端が通ったあとが残ってしまう原因は2つ考えられます。
- ヘリ落としを当てる角度が間違っている
- ヘリ落としを強く当てすぎている
ヘリ落としを当てる角度が間違っている
ヘリ落としを当てる角度にはこだわるべきです。直角の角なら、きっちり45度で当たっているかどうか確認しましょう。
角度が間違っていると、うまくヘリ落としできず、革に跡が残ってしまうこともあります。
ヘリ落としを強く当てすぎている
ヘリ落としを当てる強さも大事。
強さ(深さ)は常に一定であるべきです。
あてる強さを変えて落とす量を調節してるんだけど、間違ってる?
私の考えでは、あてる強さを変えて落とす量を調節するのはあまりおすすめできません。
理由は、構造上、力加減で落とす量を調節するのは限界がある為です。
落とす幅を変えるにはヘリ落としのサイズを変えましょう。
大抵の場合、各社ともいくつかのサイズのヘリ落としを用意しています。
例えば、クラフト社では
KSへりおとし #1 0.8mm[クラフト社] レザークラフト工具 ヘリ落とし
KSへりおとし #2 1.0mm[クラフト社] レザークラフト工具 ヘリ落とし
など。
おすすめのヘリ落としはパロサント
いろいろあって迷ってしまいますよね。
どのヘリ落としがおすすめ?
- クラフト社
- パロサント
- frontier tool
切れ味が違う。
他には、SINCEなども評判がいいようですね。
(S)へり落とし SINCE LEATHER社パロサントのヘリ落としのデメリット
クラフト社などの物と比べると高価です。
コストを気にする方は、クラフト社などを使ってみてもいいかもしれませんね。
安いですが結構使えます。
その他、デメリットというほどではないのですが、クラフト社やfrontier toolに比べると、パロサントで面取りした時はより直線的な取り方になります。
その点では、一発でRが作れるクラフト社やfrontier toolの方が使いやすいかもしれません。
直線的に角を落としたいならメリットになるとも言えます。
サイズの選び方
これは用途もあるけど好みの部分が大きいです。
なので、一つ実際に使ってみて、それを基準に選んでみたらいいのではないかと思います。
私個人的には、メーカー推奨よりも細かいサイズのものを良く使います。
財布などの小物が多いなら、まずはクラフト社の#2 1.0mm辺りを使ってみるといいのではないでしょうか。
まとめ
左手人差し指で押さえながら角を落とすことで、革を一時的に圧縮することができ、きれいにヘリ落としができます。
是非やってみてください。
今私が使っているヘリ落としの中でおすすめを紹介させていただきましたが、最近は新興メーカーも増えているので、もっといい道具もあるかもしれません。
ネットでも買えると思うので、試してみてください。よかったら感想も聞かせてくださいね。
コメント
どうも、ヘリ落とし、高いですよね。
僕は女装趣味を持ってるので気づけたんですけど、セリアの甘爪切りセットに入ってる甘爪切りがヘリ落としとして有用なんですよ。
まず形として薄く、ツノが長いんです、そして横から見ると独特なをしてるんでヘリ落としに向かないように見えるんです。
でも実際にはその形のおかげで力加減にそこまで頼らない調節力を誇り、薄さのおかげで容易に改造できると言う素晴らしい性能なんです。
今度一度でいいので見てみてください!
こんにちは。
セリアの甘爪切りとは思いもよりませんでした。
セリアに行く時には意識して探してみようと思います。
情報ありがとうございました。
パロサントのヘリ落としで、deteさんが一番使っているサイズはどれでしょうか?理由もお聞きしたいです。
パロサントのヘリ落としはサイズがいくつなのかわかりません。記載がなく覚えてもいないです。
最近メインで使っているのはフロンティアの00番です。理由はいくつかありますが、使っているネンとの相性がいいことが一番の理由です。
面を落としすぎるとネンとコバの間隔が狭くなってバランスが悪くなるので。
作る作品や求めるコバの形によって最適なヘリ落としは変わります。色々試してご自分の最適解を見つけてください。