デテログで紹介したアイテムまとめ(Amazonページ)

ヴィーガンレザーが流行ると革製品はオワコン化します

革職人のなり方

革業界に暗~い影が忍びよってきています。

革の材料と非常に関係が深い肉牛がこの世から消えて無くなるかも。

そんな未来が現実的になってきました。

人工肉製造、米で上場 フードテック、世界で脚光
2019/7/29付

フードテック企業は世界で急速に注目を集め始めている。大豆などでパティやソーセージを作る米ビヨンド・ミートは5月、ナスダック市場に上場した。直近の株価は初日終値の3倍に及ぶ。

[中略]

フードテックは技術開発の段階からビジネスの競争に進んでいる。

[中略]

コンサルティング会社シグマクシスの田中宏隆氏は「米国のフードテック系ベンチャーキャピタルは200社に増えた」と話す。日本でも、けん引役の新興企業などへの投資が増えるとみる。

2019年7月29日の日経新聞朝刊の記事から引用しました。

人工肉と革に何の関係が?

と思う方もいるでしょう。

関係大ありなんですよ。

この状況が革業界にとってどれだけ痛手か・・・詳しく解説していきます。

スポンサーリンク

目次で便利に読めます(スマホのみ)

右下に現れる目次タブをタップすると目次が現れ、読みたい見出しをタップするとジャンプできます。

ヴィーガンレザーが広まると革製品はどうなる?革はオワコンに

ヴィーガン:動物愛護の観点から動物質の食品を一切口にしない人のこと
ヴィーガンレザー:動物質の素材を使用していない合成皮革や人工皮革のこと。シンセティックレザー、人工皮革と同義
いきなり衝撃的なことを書きました。

なぜ革がオワコンになるのか?

これを説明する為に、現在の皮から革への流通についてシンプルに説明します。

[現在の革業界の構図]

🐄肉が消費される

残った皮が安価でなめし業者に回る

革になる

👜革製品がつくられる

です。

人工肉が主流になると以下のように変わります。

[人工肉が主流になった時の革業界の構図]

🐄肉が消費されなくなる

原皮が入手困難、価格高騰

なめし業者廃業

革が手に入らなくなる

🍂ヴィーガンレザーで代替?

つまり、人工肉が主流になると、原皮が手に入らなくなって革が作れなくなり、革製品も無くなります。

人工肉は肉の主流になるか?

現時点でいつ主流になるかを判断することはできませんが、人工肉メーカーは今後も間違いなく伸びていきます

その証拠に、5月に新規株式公開した人工肉開発メーカー最大手のビヨンドミートは、2019年4~6月期決算売上高が前年同期比3.9倍と、市場予想を上回る躍進ぶり。

さらに、その背中を追うベンチャー企業はアメリカだけで200社を超えているということです。

人工肉が拡大するシナリオを市場が証明してしまっているということですね。

ヴィーガンレザーは革の主流になるか?

こちらも肉についてと同じ意見。

肉の状況から少し遅れて同じ道をたどることになるでしょう。

理由ですが、本革よりもヴィーガンレザーの方が圧倒的にサスティナビリティ(持続可能性)が優れているから。

将来性があるので、これはいたし方ないことでしょう。

ここで一つ心配になることが。

将来は今の革の財布やバッグのような製品はなくなってしまうのでしょうか?

私はそんなことは無いと思います。

人工肉が一般化すれば、普通の牛革でさえ超高級品になり、おいそれと手に入れることはできなくなりますが、その代わりに革新的なヴィーガンレザーが生まれることでしょう。

スポンサーリンク

ヴィーガンレザーの未来は?

私個人的に、ヴィーガンレザーの将来はかなり明るいと思っています。

革よりも優れた素材が出てくるのも時間の問題でしょう。

めちゃめちゃ楽しみです。

弊社deteでは、2017年より東レのUltrasuede®を採用しております。

手ざわりや質感は、ゴートなどの高級スエードのシルキーさには叶いませんが、普通のピッグスエードより上質です。

2019年時点で人工皮革を作っている日本メーカーはわずか4社

  • 旭化成
  • クラレ
  • 東レ
  • 帝人コードレ

どれもTVCMをバンバン流してる大手化学メーカーやその子会社です。

人工皮革というものはそれくらい設備投資や開発コストがかかるものなのでしょう。

人工皮革業界が発展すれば、供給量が増えて導入コストが下がり、人工皮革界にもより多くの会社が参入し、多様な製品が生まれていくと思います。

新時代のヴィーガンレザー皮革を紹介

既存の合皮や人工皮革は、化学薬品や合成樹脂をふんだんに使ったものですので、環境に配慮しているかと言われると難しいものがあります。

天然原料で作られた以下の素材こそ、未来のヴィーガンレザーと言えるのではないでしょうか。

ピニャテックス

パイナップル繊維で作ったヴィーガンレザー。

未来がやってきたなぁと感じます。

個人的にこういう革新は大賛成です。

ピニャテックスの注目ニュース
2018年4月:H&Mは、サステイナブルでハイエンドなコレクションH&M CONSCIOUS EXCLUSIVE(コンシャス・エクスクルーシヴ)内でピニャテックスを使用したコレクションを発表しました。

2018年6月:ヒューゴボスがピニャテックスを使用したスニーカーを発表しました。

2019年8月:シャネルがピニャテックスを使用した帽子を発表しました。

今後も目が離せない素材の一つです。


2020年3月、ピニャテックスの実物を手に入れました。

こちらで紹介しています。

アップルレザー

リンク切れ。倒産?

リンゴの皮を使った人工皮革のようですが、アップルレザーは最近の情報が出てきません。

このように、まだまだこれからの発展途上の業界です。

成長を見守りつつ、どこにリソースを注ぐのか見極めていきたいと思います。

新時代のヴィーガンレザー安定供給には課題がある

これらの新しい植物由来のヴィーガンレザーには、普及を広めるにあたって大きな課題があります。

それは原材料の安定供給が難しいこと

そもそも、なぜ牛革が安定供給可能なのかというと、素材の供給量が多いからです。
牛の原皮は大量に調達できて、しかも他に用途も限られるので安価です。

では、リンゴの皮はどうでしょうか?

牛の皮並みに大量のリンゴの皮がむかれることって想像できますか?

当然、むいた皮は腐らないように適切に管理してまとまった量を集める必要があります。

これを安定供給するのはかなりハードルが高いです。

廃棄物ではなく専用の繊維を栽培した方が安くて確実に思えますね。

合成皮革と人工皮革って違うの?

合成皮革:化繊布を樹脂でコーティングしたもの
人工皮革:立体的に織った化繊の繊維にポリウレタン樹脂を染み込ませたもの。

どちらもいずれは劣化しますが、人工皮革の方が革に近い構造で長持ちします。

そもそも、どうして人工肉が作られるの?

理由は以下の通りです。

  1. コストが安くなる
  2. 温暖化対策
  3. 動物愛護の観点

人工肉コストは急激に下がっている

人工肉が私たちの手に届く金額、流通量になるのは時間の問題となっています。

2013年に、オランダの科学者マーク・ポスト氏が牛肉の細胞から培養したバーガーを世界に紹介したが、開発に3,250万円もかかったそのバーガーがスーパーの食肉コーナーに並べるのは未だ遠い未来だと予想されていた。しかし、その値段はどんどん安くなってきており、わずか2年で3,250万円から、1100円に下がった。

家畜の牛を減らせば温暖化対策に?

牛1頭がげっぷやおならとして放出するメタンガスの量は、1日160〜320リットルにも上る。

中略

メタンにはCO2の28倍もの温室効果があることがわかってきた。

温暖化の原因は、二酸化炭素じゃなくてメタンだったという可能性が・・・

ガスの排出量を増やすエサの開発も進んでいますが、手っ取り早く家畜の数を減らしましょうという働きかけがあるということですね。

これは畜産、食肉、皮革関連業に従事するすべての人にとって非常に強い逆風です。

肉を食べると牛さんがかわいそう?

いのちをいただくことですから、当然かわいそうです。

でも、生き物のいのちをいただいて、私たちはそれに対して感謝をささげるという流れが自然だと私は思うのですが・・・いろんな人がいていろんな意見があります。

それぞれが意見を出し合って、より良い世の中になっていくことについては大いに良いことだと思います。

ヴィーガンレザーの問題点

ヴィーガンレザーが主流になっていく可能性について書きましたが、そうなった時の問題点は何があるでしょうか?

  1. 粗悪な合皮がデカい顔して売り場に並ぶ
  2. 製品の個性が出しにくくなる
  3. 長持ちする製品が無くなる?
  4. 廃棄される原皮はどうする?

私は1と4の問題を特に懸念しています。

粗悪な合皮がデカい顔して売り場に並ぶ

ヴィーガンレザーというキラーワードが、今まで日の目を浴びることがなかった合皮の立場を”おしゃれで最先端な素材”に押し上げてしまう恐れを危惧しているわけです。

『最新のヴィーガンレザーのバッグです!』って言って売ってるけど、要はすぐに加水分解起こしてボロボロベタベタになる合皮じゃん!

っていうことが起こると思うんですよね。

どうせなら、クオリティの高い人工皮革メーカーが出てきて革製品業界を盛り上げて欲しいと思います。

廃棄される原皮はどうする?

ヴィーガンレザーを推す方の中で、原皮の処理問題について言及している方を見たことがありません。

革は、肉を利用した時に出る廃棄物の皮を原料にして作られます。

本当に革より優れた素材が出来たとして、その時原皮はどのように活用し、どのように処理するのか

大きな課題が残されているはずです。

まとめとして

将来的に、革がヴィーガンレザーにとって代わられることは間違いないでしょう。

10年後なのか?100年後なのか?1000年後なのか?それはまだわかりません。

ホンモノの革の味が楽しめなくなったら悲しいですが、それ以上に素晴らしい素材が出てくるかも?という点においては期待していいと思います。

新興ヴィーガンレザーメーカーも5年後、10年後にはバンバン出ていると思うので、その時に我々革製品メーカーはどんな立場に立っているのか?

不安もありますが、同時に楽しみでもあります。

消費者の皆様は楽しみにしていてください。


記事を書きながら、とある革屋さんの営業の方にヴィーガンレザーの展開を打診してみたところ、とてもいい反応が返ってきました。

もともと注目していて、海外からサンプルを取り寄せようと思っていたところらしいです。

やっぱり若い会社は感度が高くて素晴らしい。

いろいろ楽しみです。

2020年10月時点の原皮やヴィーガンレザーについて

2020年10月26日。

革の原料の現状

思いもしなかったコロナウィルスの登場で肉の消費が落ち込んだ結果、革の材料である原皮の価格が急激に落ち込んでいます。

原皮の流通に関わる業者の経営状況に、大きな影響をあたえることが考えられます。

☟の記事で原皮価格について少し触れています。

本革こそサステナブル|断言できる1つの理由
レザーは肉の副産物です。革製品は持続可能性が高く、皮を革(レザー)にすること自体がリサイクルなのでとても理にかなったものづくりだということは、疑いようのない事実なのではないだろうか?そんな思いで書きました。

ヴィーガンレザーの現状

ヴィーガンレザーと言われている素材はいくつか実物を触りました。
おもしろいかも?と思う素材もありましたが、革とは全くちがうジャンル(どちらかといえば布に近い)だったりするので、そもそも革の代わりにはなっていないものが多いようです。

問題点は多いですが、今後どんな展開を見せるのか個人的にも興味はあります。

ブランドの対応

アパレルやラグジュアリーブランドを筆頭に、サステナブルな社会の実現に向けて舵を切る流れを強く感じます。

その中で生物原料の素材に対する向き合い方を考え直す企業も増えていくでしょう。

私が運営するレザーブランドdeteでは、今後、新規に爬虫類革を仕入れないことを決めました。

爬虫類革の多くは、革目的で捕獲・飼育された生体を原料にしています。

2021年4月追記。

現時点では、新興の代替レザーにはがっかりさせられ続けている状況です。

今後の研究開発には期待していますが、現時点では革を別の素材に変えることのメリットが少なく、デメリットの方が多いと感じています。

先行きは見えませんが、今後も革とヴィーガンレザーに関する情報を集め、お客様と作り手と環境がハッピーになれる活動を目指し、製作と発信をしていきたいと思います。

コメント

  1. ヴィーガン より:

    ヴィーガンレザーのトニーラマブーツもいずれは発売されるかも。

    • dete より:

      ヴィーガン様

      ヴィーガンレザーのウエスタンブーツも私は出ると思いますよ
      レザーファッションの概念が変わる時代がもうそこまで来ているのかもしれません。

    • ぴょん より:

      そういう流れになるでしょうね、人類はなぜ肉食をやめられないかのマルタザラスカさんが書いてましたが、ハンバーガー1個でアメリカの車を500キロ走らせたのと同じ位の温暖化効果があるそうです。牛のだすメタン以外にも、牧草地を切り開くとかそう言うのも考えれば、牛肉は辞めるべきでしょう。でも革の出すエイジングまで表現できるヴィーガンレザーが出来れば、皆そっちを買うでしょうけど、エイジングまではもう少しかかるのかなー。。

      • dete より:

        ぴょん様
        マルタザラスカさんの本チェックしました。是非読んでみたいと思います。
        人類はなぜ肉食をやめられないのか: 250万年の愛と妄想のはてに

        おっしゃる通り、環境保護の観点からすると、本物の肉にこだわり続けるのはスマートな選択肢とは言えないように思います。
        エイジングできるヴィーガンレザーについてですが、そう遠くない未来に私はきっと実現できると思っています。

        私なんぞでよければいくらでも開発協力するのですが。

  2. モーリス より:

    分かりやすい記事ですね^^

    バイオファブリケーションで、動物の細胞で皮革を作る技術も開発されています。
    既にご存知だったらすみません。
    「TED 動物を殺さない皮革と肉の開発」
    https://www.ted.com/talks/andras_forgacs_leather_and_meat_without_killing_animals/transcript?language=ja#t-101885

    • dete より:

      モーリス様
      コメントありがとうございます。
      バイオファブリケーションという言葉は初めて知りました。

      菌や繊維など様々な原料でヴィーガンレザーの開発が進んでいますが、動物の細胞を使った技術開発も進んでいるのですね。

      今後も注目していこうと思います

      良い情報をありがとうございます。

  3. 'baɪdən 'dʒoʊsəf より:

    <うーん、前ブーツだかスマホケースだかで見たんだけどさ、"紙製の革"ってのがあるらしい。
    <紙も繊維の集合体、さらに言うならツルツルにもできるし千年使えるとすら言われてるよね。
    <しかも紙の素材は主に植物よりセルロースなど、和紙やレーヨンの類ならもっと多様化できる上、エンボスなり多様な加工で水に強くもできるぅ……
    <色々レパートリーももうあるらしいくてどうおもいますぅ?

    • dete より:

      新しい素材が出てくることはいいことだと思います。実物を見ていないので製品としての良し悪しはわかりません。

      ただ、そのような代替レザーには大きな問題があって、実際には革でないのに革と名乗ってしまっているところです。
      革というものは、動物の皮をなめして腐らないように加工したもののことを言います。

      紙や、多くのヴィーガンレザーに使われているPVC(ポリ塩化ビニル)などで作られたものを革と言ってしまうと、本物の革を欲しいと思っている方に違う商品を届けてしまうことがあります。そして、それを悪用する業者さんがいるわけなのです。

      それを防ぐために、家庭用品品質表示法という法律で、革製と言っていい製品は「革」で作られたものと定められています。

タイトルとURLをコピーしました