この記事では、刃物の切れ味とセーム革の効果についてお話ししています。
こちらのセーム革は、最高級のキョン(鹿の仲間)を使用しておりおすすめです。
結論からいうと、質の良いセーム革は、一時的に落ちた刃物の切れ味を戻す効果はあります!が、刃のカエリは取れません。
使い方について勘違いしている方も多いようです。
詳しく説明していきます。
刃物(シザーズ)の切れ味とセーム革の効果
セーム革で切れ味が戻るという話について、ホントとウソをあばきます!
セーム革で刃の返りが取れるって本当?結論、ウソです!
まず最初に、セーム革の効果について私が疑問を持った経緯からお話していきます。
美容学校に在籍していたころ、先生にハサミの手入れ方法について尋ねると、「セーム革で刃を拭くといいよ。」と教えてくださいました。
こうやって拭くと切れるようになるんだよ。
へえー。
何で切れるようになるんですか?
刃先の返りが取れるからだよ。
返りが・・・?
他にも美容関係の方に聞いてみると、刃の”返り”が取れて切れ味が戻るというのが、セーム革で切れ味が戻る理由とされているようです。
ここで一つの疑問が。
もし返りが出ているとしたらそれは目にみてわかるものだし、返りが取れたらセーム革に破片が残るはず。
でもそれって考えにくいよなぁ。
”セーム革で切れ味が戻る理由”は他にあるのではないか。そんな仮説を立て、ひいきにしている包丁屋(革用)さんに買い付けに行った際に相談してみました。
返りに関する包丁屋さんの見解も先述の私の疑問と同じようなもので、
これが刃物のプロの意見です。
ハサミは刃と刃がこすれることにより切っ先に返りができる。
これを取るには砥石で研ぐ必要があるというのです。
でもでも、刃物の切れ味がセーム革で戻るのは事実ですよね。
私自身も実感しています。じゃあ、セーム革で切れ味が戻る理由は一体何でしょう?
刃物屋のオヤジと小一時間程話し合った末たどり着いた推測は・・・
セーム革の持つ吸油性により、刃先のギザギザに詰まった油脂(手入れ用の油やヘアワックス、髪に付いた皮脂など)やチリなどが除去されることにより切れ味が戻っている
ということ。
油分を拭うと切れ味が戻る?
この理屈を解説する前に、切れる刃物の刃先はどんな状態になっているかを説明します。
逆じゃね?って思ってしまいそうですが、逆じゃないです。ギザギザな方が切れるんです。
このギザギザが削れるか油などが詰まるかで、真っすぐになると切れ味が鈍ります。
この推測を持ち帰り、革職人ならではの方法で刃物とセーム革の切れ味の効果を検証してみました。
研がずに、セーム革を使って、刃物の切れ味を一時的に回復する方法
革包丁とワックスとセーム革と牛革を準備。刃が切れる状態になっているかの検証なので、シザーズでもその他の刃物でも同じことです。
正しい検証をする為、セーム革は最高級品を買ってみました。
包丁の切れ味を確認します。
革にワックスを塗ります。
写真と文章では伝えきれませんが、わずかに切れ味が落ちるのが確認できました。
ここでセーム革で刃先の油を拭うと・・・切れ味が戻るというのは最初から申し上げている通りです。今回もその通りでした。
さて、先述の包丁屋さんとのやりとりの中で、セーム革で切れ味が戻るのは油を取ってくれるからという話が出てきました。だとすると、
ということで、アルコールタイプのウエットティッシュを試してみました。
アルコールは油分を除去してくれます。
ウェットティッシュでしっかりと油分を取り去って、切ってみると・・・
切れる!セーム革のときより切れるようになってる!!
菱錐(手縫いの道具)
この道具は切れ味が非常に大事な道具です。
これはどうかというと・・・
切れる!そして、刃を付けていない部分も滑りが良くなり、抜けの良さが向上しました。
結論とまとめ
今回の検証のまとめです。
刃の切れ味が悪くなる原因は二つ
- 刃のギザギザが無くなること
- 刃のギザギザに油など余計なものが詰まること
[1の対処法] 砥ぐ
[2の対処法] 油分を除去する
他にわかったこと
- 刃についた油分を除去すると切れ味がもどる。
- セーム革で刃の返りやバリは取れない。
つまり、一時的に刃の切れ味を戻す唯一の方法は・・・
油分除去!!
ということでした。
ちなみに、アルコールが刃に影響が無いかどうかは、刃物のメーカーさんに予めご確認の上お使いください。
切れなくなる前に研ぎましょう。
抜けが悪いセニング使ってる美容師さん、時々痛いですよ笑
道具は上手に使いましょう。
こちらのセーム革は、最高級のキョン(鹿の仲間)を使用しておりおすすめです。