シリコンの入ったレザーケア剤“Brillo”(ブリオ)は栃木レザーのヌメ革に使えるか?

✉「栃木レザーの手入れについて」

届いたのは一通の迷惑メール。

迷惑メールフォルダはざっと目を通してスルーするのが通例ですが、件名が革に関するものだった為、スキャンして危険性が無いことを確認し、開いてみました。

そのメールは、匿名な上に本文に署名もない。アドレスも、注文履歴にはヒットしませんでした。

内容はというと、

「お宅のメンテナンスについてのブログ記事を読んで連絡した。プレゼントで栃木レザーのナチュラルカラーのヌメ革のベルトをもらったが、初めてヌメ革を手にする為どのように手入れをしたらいいかわからない。手元にBrilloというケア剤があるんだが、これを使っていいものか教えてくれろ」

とのこと。

文面自体はとても丁寧で、内容に怪しい点は見受けられません。

とはいえ、不安が無いわけではないので、念の為返信はせず、こちらのブログでお返事させていただくことにいたしました。

公開することで多くの方にお役に立てて(?)いただけるので一石二鳥です。

ヌメ革にケア剤のBrilloを使っても大丈夫?

さて、ご質問に対するお返事です。

ご質問の中でテーマとなっているのは、ナチュラルカラーのヌメ革と件のケア剤。ケア剤は、株式会社コロンブスのBrillo(ブリオ)という製品です。

まずはヌメ革とはどんな革なのかについておさらいしておきましょう。

ヌメ革とは?

ざっくり言えば、昔ながらのナチュラルなタンニンなめし革で、表面加工も染色もしていない革です。

タンニンなめしって?

ミモザ、ケブラチョ、チェスナットなどから抽出したタンニン(渋)を使ってなめす製法。

なめしって?

皮を加工し、革にする工程のこと。染色や、柔化、加脂など、革を仕上げる一連の加工全てをひっくるめてなめしと呼ぶケースも多いです。

過去記事でヌメ革について書いたこともあります。

ヌメ革とはどんな革?日本のヌメ革とイタリア版のヌメ革TOIANO
ヌメ革というとどんなイメージがありますか? 日本に昔からある”ヌメ革”とはどんな素材なのか、イタリアのタンニンなめし革と比較しながら考えてみましょう。 ヌメ革ってどんな革? こう問われて多くの方が思い浮かべるのが、”ベージ・・・ read more.

この記事は多くの方に支持していただいているようで、検索かけると上位にヒットしており、当ブログの中では割とアクセスの多い記事です。

より詳しく知りたい方はこちらもご欄ください。

広義でのヌメ革、狭義でのヌメ革

広義でのヌメ革というと、タンニンなめし革全般を指す場合があります。今回議題に上がっているのは、”狭義でのヌメ革”。

↓のヌメ革の性質まとめに該当する、かさかさとした質感のベージュ系の無染色のタンニンなめし革を指します。

ここから先は、この狭義でのヌメ革のみをヌメ革と呼びます。オイリーでカラフルなタンニンなめし革や、ソフトでしっとりとしたタンニンなめし革などについてはまた今度お話しましょう。

ヌメ革の性質まとめ

  • タンニン100%なめし。
  • 染料、顔料による着色を行わない。
  • 加脂はなめしに必要な最低限量のみ行い、表面処理も必要最低限で、光沢は弱く、毛穴が目立つ仕上がり。
  • 色は薄ピンク~キャメル。
  • 経年変化大。摩擦による光沢の増加、タンニンの変色など。
  • 汚れやすい(金属汚れ、汗などに反応して黒く変色)
  • 吸水性、吸油性に優れる

ヌメ革はうまく育つと最高にかっこいい

ヌメ革はうまく育ってくれたら本当にかっこいい。

うまく育ってくれたなら。


敵「骨董品店や古着屋にある革のカバンはみんないい味出てるよね。」

私「汚くなったものが処分されて、いい味出た革が残ってるだけです。」


論破しようとするのは私の悪い癖。「ヌメ革に対する過剰な期待を捨てて正しい知識を持てば、より革を楽しむことができますよ。」ということが言いたいだけです。

deteでも以前、ヌメ革を扱っていたこともあるのですが、結果的には廃盤といたしました。今後取り扱うこともないでしょう。

2018年8月現在、良質のオイルを添加したイタリアンレザーのキャメルの革は取り扱いがございます。ヌメ革に似た風合いですが、革質は異なります。

小ネタをはさんでおきますと、ヴィトンのヌメ革は、日本で使われているような例のヌメ革ではありません。汚れにくい処理がなされています。

今から申し上げることに確かな根拠は無いのですが、ヌメ革がうまく育つかどうかは、手入れの仕方云々だけでなく、”使う人”によるように思います。近い例として、ぬか漬けって、漬ける人によって味が変わるといいますよね。それと似た感じに。

これはバッグや靴よりは、財布や手帳などで顕著です。手に触れる機会が多いから。

ちなみに、私もうまく育てるのは苦手です。

ヌメ革のトラブルというと水シミにばかりフォーカスがあたりがちですが、意外と水シミは次第にわからなくなっていくもので、尚且つ、それが幾重にも重なると逆にカッコよかったりもします。長い目でみれば、水シミはそんなに気にしなくていいものだと思いますね。

それよりも避けたいのは黒ずみですね。

Q.では、黒ずみを避けるためには、どうすればいいか?

A.答えは、きれいに使うこと

単純明快な答えで拍子抜けですね。

「だからそれをどうすればいいかって〇×%*!?」

なんて声が聞こえてきそうですが、本当にそこが大切なので、まずはこのことを肝に銘じておいてください。

少し踏み込んだことを申し上げると、そもそも汗かきな方はヌメ革製品を使うことは避けた方がいいかもしれません。ヌメ革の優れた吸水性は、人の汗もグングン吸い上げますからね。

それと、汚れた手で触ると簡単に反応してしまうでの注意。金属汚れなんかは特に天敵です。だから鉄工所で働く屈強な御仁はよした方が(限定すぎw)。

汚れが付いたら拭き取ってあげる。定期的なブラッシングは必須。

そういう基本的なことが大切です。

ヌメ革をかっこよく育てるのは本当に難しいです。かと思うと、うまく使える方は、そんなに気にしないでもきれいに育ったりもして、気まぐれで悩ましい存在です。

ヌメ革をできる限りかっこよく育てるポイントは、

  1. きれいに使う
  2. 適切なケアをする

ケアについては後ほどご説明します。

Brillo(ブリオレザーコンディショニングクリーム)というケア剤

まず始めに申し上げておく必要があるのは、私はこのケア剤を使ったことが無いということ。

なので、ここから先に書くことは、原材料の情報やネット上に落ちている写真、元々持ち合わせている知識を基に解析した憶測です。このケア剤を使った結果、愛用の革製品がどうなったこうなったということについての責任は持ちません。

メーカー説明文

プルプルとしたジェル状クリームで皮革をケア。
シトラスグリーンの香りが心地よい、べたつかない皮革用クリームです。
革製品の保護、ツヤ出し(防カビ剤配合)無色タイプなのでどんな色にも使用でき、靴だけでなくお財布やハンドバッグ、レザーウェアにもお使い頂けます。

主成分:ろう、油脂、シリコーン、水

性質

ゲル状のケア剤のようです。

こういった形状は、革の水分と栄養補給を目的としたケア剤に多いです。

水分量が多ければ多いほど革内部まで栄養を浸透させやすい反面、固形のワックスのようにコーディングする効果は薄れます。

モウブレイでいうところのデリケートクリーム(愛用品)に該当するカテゴリーの商品のようですね。

水分量が多く延ばしやすい為、塗りムラができにくく使いやすいケア剤といえるでしょう。

成分について

ビーズワックス、ひまわりワックス、ホホバオイルなど天然の蝋や油脂成分が使われており、ナチュラルな成分にこだわってブレンドしているようです。

有機溶剤も含んでいないようですね。有機溶剤は汚れ落としの目的で入っている場合もありますが、この製品は汚れ落としは目的としていないようです。

一点気になるのが、シリコンが含まれていること。

革とシリコンの関係

シリコンは革をなめす時に使われる場合があります。

某国内タンナーのある革は、弾力を出すためにシリコンを含ませているそうです。

防水スプレーの主成分としてシリコンが使われる場合もあります。

防水スプレーには大きく分けて2種類のタイプがあり、一つはフッ素系、もう一つがシリコン系です。

シリコン系とフッ素系の防水スプレーの違い
 シリコン系防水スプレーフッ素系防水スプレー
価格安い高い
持続性
防油・防汚
通気性×
風合いの維持×

どちらも、対象物をコーティングして繊維をつるつるにすることで水をはじくのだそうです。

使い方は異なります。

フッ素系は革にしみ込ませる為、オイルやワックスを塗る前にスプレーします。

シリコンは表面全体をコーティングするスプレーなので、最後にかけます。

ちなみにフッ素とはどんなものかというと、よくフライパンの表面加工に使われるあれです。身の回りで本当に多くの物に使われている身近な成分です。

風合いに影響が出るのはシリコン系です。職人はミシン糸の滑りを良くする為に、糸にシリコン液をしみこませて使ったりすることがあるのですが、この液体を床にこぼしでもしようものなら、ツルツル滑って大変なことになります。

ヌメ革にシリコンスプレーをしたら、手ざわりまでツルツルになってしまうのではないでしょうか?

光沢を出したいのであればそれも良いかもしれません。

こちらで防水スプレーに関する記事も書いています。

amazonの激安防水スプレー(LOCTITE 超強力防水スプレー)と王道Collonilの防水スプレー比較。動画と写真で検証するその性能!
長い雨が続いてやっと晴れたところですが、革製品の雨対策に関するお話を。 今回検証する二種類の防水スプレーはこちら 左:Henkel (ヘンケル) LOCTITE(ロックタイト) 超強力防水スプレー 右:Collon・・・ read more.

ヌメ革にブリオを使ってもいいか?

ネット上の口コミを見ると、ヌメ革に使用しているという情報もありました。

その方の意見では特に問題は無いようです。

シリコンを革に塗布すると、革の通気性を損なう為、革に悪影響を及ぼすという意見があります。ヌメ革に関して言えば、そこまで気にしなくてもいいように思います。

ヌメ革という素材は、革の中では断トツに通気性や水分の浸透性の高い素材です。ちょっとくらいコーティングしたところで、革の通気性や透湿性が無くなって革がダメになったりということは考えにくいです。

結論

ヌメ革にブリオを使ってはいけないという理由は見つかりません。

ただ、個人的には、ヌメ革に使用するなら、蜜蝋やワセリンのような固形の蝋成分やワックスを多く含み、水分の少ないケア剤が向いていると思います。油分を補いつつ、表面をコーティングして防水防汚効果を持たせる目的で。

より汚れを付きにくくするためには、ワックスやオイルを塗る前にフッ素系の防水スプレーをかけましょう。

Brilloは、しなやかさを維持したいカーフ製の靴や財布など、繊細な製品により適しているように思います。

大切なプレゼントの品ですので、適材適所をきちんと考え、よりベターな方法でお手入れされたら良いのではないでしょうか。ブリオは革靴などに使うと良いでしょう。

これからも質問に答える形での記事も紹介していきたいと思います。

長文最後までお読みいただきありがとうございました。

最後に、deteが考えるヌメ革のおすすめお手入れ方法を記して〆といたします。

ヌメ革のケア方法まとめ

  1. ブラッシングで汚れ落とし
  2. フッ素系防水スプレーをムラなく念入りに
  3. 水分の少ない、油分と蝋を含んだワックスをムラなく塗る
  4. 影干し
  5. 乾いたらブラッシング

使い方によりますが、数週間から1,2か月に一回くらいのお手入れから始め、様子を見ながら続けてください。なお、製作者の意図によってもケア方法は異なる為、メーカー推奨の方法がある場合はそちらを優先してください。

※ケア剤の効果は、ケア剤により、塗布する革により異なります。当ブログ及びHP記載の方法で生じた問題や製品の損傷について、弊社は一切の責任を負いません。

ご参考程度におとどめくださいませ。

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