カシメがまっすぐ打てない。上手に打つコツは?
カシメの打ち方の正解がわからないです
失敗したカシメって外せる?
そんな疑問を持った方に向けてお話します。
カシメが真っすぐ打てない悩みって多いんじゃないでしょうか。
私の場合ですが、カシメに限らず打つ系の金具の取り付けには長いこと悩みました。
そんな悩みを解決するお手伝いができればと考えています。
この記事の内容は次の通りです。
長年使って得たノウハウをお話しします。
カシメの構造や知識や買えるお店については、カシメって何?構造と素材、使うメリットをご覧ください。
カシメの取り付け方手順
写真を交えてカシメの取り付け方を紹介します。
使うカシメと革
今回使う革は2枚合わせて6mm弱の硬めの革です。
使うカシメは足の長さ6.5mmほどの片面小カシメです。
革との差は0.5㎜。
本当はもう少し足の長いカシメを選ぶのが理想です(今回は打ち方の説明ということで気にせず)。
打つ位置を決める
まず、打つ位置を決めましょう。
カシメに限らないことですが、金具を取り付けるときは、あてずっぽうの位置に付けるのではなく、型紙に印を付けて正確に決めるようにしましょう。
型紙の印のつけ方は主に2つです。
私は前者の型紙にハトメ抜きで穴を空けておく空け方をすることが多いです。
革に型紙をあて、この穴を空けるのに使ったハトメ抜きを使って空ける穴の位置を印付けします。
空ける穴はカシメのサイズに合わせて選びましょう。足と頭の内側の部分とでは太さがちがうので、そこを考慮して穴のサイズを決める必要があります。
参考として、大カシメの頭は3mm、足は2.5mmくらいが合います。
カシメとは別の話になりますが、バネホックのバネは3.5mmくらいがちょうどいいサイズになりますので、2.4mmと3.0mmと3.6mmのポンチを持っておくと使う機会が多いかもしれません。
日本の古い道具は尺寸で計算されていて、今でもその名残が残っています。
例)8号は8寸(約2.4cm)、10号は10寸(3.0cm)
耐久性の面でできるだけぴったりの穴を空けた方がベターです。
穴あけ
型紙を使って付けた印にしたがいハトメ抜きを使って穴を空けます。
穴を空けるときは、下にゴム板かビニ板を敷きましょう。無い場合は不要な雑誌などを代用することもできます。
他に打ち具も必要です。この時鉄の金づちを使うと打ち具を傷めてしまうので、木製のハンマー(ハンマー)を使うことをおすすめします。
利き手と反対側の手でハトメ抜きをしっかり垂直に立てて持ち、木づちで正確に叩きます。
カシメを仮留め
裏から足をはめ込み、
頭を手ではめてカチッと手ごたえがあるところまで押します。
カシメの足にはくぼみがあります。
足と頭を軽く手で押し込むと、このくぼみがカチッとはまり仮留めができます。
これで打つ準備が整いました。
打ち木を使って打ちます
使う道具は、メタルプレートと打ち棒とハンマーです。
メタルプレートは金具を打ち付ける時の台になってくれる道具で、一つ持っておくと便利です。
カシメの打ち棒はカシメのサイズに合ったものを選ぶ必要があります。9mmの大のサイズが人気があるように感じます。
打ち方は穴を空ける時と同じです。垂直に構えてハンマーも垂直に振り下ろします。
一発で打ち込もうとせず、少しずつ力を加えながら数回に分けて打ちましょう。
これ以上打ち込めないというポイントがあります。
ハギレなどで練習して力加減や打ち方の感覚をつかんでください。
打てました
↑表 ↓裏
しっかりと留まりました。
潰して平らに仕上げる方法
カシメは打ち具で打つと丸みを帯びた形に仕上がりますが、これをあえて平らに潰して仕上げることもできます。
↑通常の丸みを帯びたカシメ ↓あえて潰した仕上げ
これのやり方は、鉄板かメタルプレートの裏面の上に革を置いてカシメを打つだけ。
このとき、完成時に外から見える側を下にして打つのがポイントです。
こうすることで、外から見える側は平ら、見えない側は丸みに仕上がります。
応用ワザとして、打ち具を使わず金づちで直接カシメを叩いてしまう方法があります。この方法を使うと両面が平らに仕上がります。
応用ワザには注意点があって、上手く打たないと曲がってしまいます。
足の太さや長さが合っていないと特に注意が必要です。ハギレで練習してから本番に臨みましょう。
[上級テク]革包みカシメも作れる
包みボタンのようにカシメの頭も包むことができます。
基本的な作り方は包みボタンと同じです。革をうすく漉いて接着剤を塗り、金具を包んで打てば完成です。
カシメはホックよりもつぶれるため、打ち方は包みボタンよりも気を使う必要があるかもしれません。
包み方は、革くるみボタンの作り方をご覧ください。
打ったカシメが外れる原因はほとんど打ちミス
カシメを付けてもすぐ外れちゃうのはどうして?
原因はたいてい打ちミス。斜めに打ち込んでるとすぐに外れちゃうよ。
まっすぐ付けるコツは?
次の章で失敗しにくい打ち方を紹介します。
失敗しにくい方法|ハンドプレスが最強
カシメが曲がっちゃう。どうすればうまく打てるの?
ハンドプレスと駒使えば一発でうまくいくよ。
ハンドプレスは手打ちよりも正確に打てる
ハンドプレスを使えば誰でも失敗なく打てるだけではなく、より正確に打てるため仕上がりもよくなります。
人の手で打つとどうしてもわずかなズレが出てしまうんですね。
これがハンドプレスです。バーを押し下げるだけなので音や振動対策にもなり、マンションでも安心です。
ハンドプレスって導入ハードル高くない?
わかる。駒は高いし場所を取るしね。
でも本当におすすめな道具の一つ。
ハンドプレスは本当におすすめな道具。
正確に打てるから仕上がりがきれいで丈夫。そして失敗もしにくいです。
初心者さんにこそ使って欲しい道具です。
少なくとも、失敗が多かったり、使っているとすぐに金具が外れてしまうと悩んでいるなら使う価値は十分にあります。
よりくわしいハンドプレスをおすすめする理由については、革職人がホック金具をハンドプレスで付ける理由とメリット|使い方をご覧ください。
個人的おすすめはカシメ専用駒じゃなくてプレス駒
ハンドプレスの駒について少し触れておきます。
ハンドプレスは本体だけでは機能しません。専用の駒をセットする必要があります。
カシメ用の駒も売っていますが、個人的なおすすめは、プレス駒という平らな駒です。
私好みの平らに仕上がるのと、どのサイズのカシメにも使えるから、これ一つだけを買えばいろんな金具に対応できるからです。
ベタ駒 | ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
なお、外から見える部分だけをつぶすなら、上下駒両方を平らな駒にしなくても大丈夫です。
たとえば次にあげるこの駒。
普通の駒とちがい上駒だけの販売です。つまり、普通のカシメ用の駒をすでに持っている方向けです。
駒についてより詳しい解説は、最初に買うべきハンドプレス駒|ホック用、カシメ用ベタ駒などでお話ししています。
手で正確に打つコツ
ハンドプレスを使わないできれいに打つには?
ハンドプレスは導入したくないならば、手でまっすぐ打てるように練習しまくりたいところ。
コツは、しっかりかまえて確実に垂直に叩くこと。
このとき、顔を近づけて見てしまうと真っすぐかどうかの正しい判断ができにくくなるため、意識的に離れて見るクセをつけるといいでしょう。
集中すると顔を近づけてしまう人は注意。頭一つ分後ろに下がろう。
叩き方のコツは、菱目打ちのクセを直そう!失敗例と使い方のコツも参考になるかもしれません。
たたき方以外では、適切なカシメを選ぶことも大切です。
革に対してあまりにも長すぎる足のカシメを選んだり、カシメの足の太さに対して空けた穴が大きすぎると曲がりやすくなります。
カシメの外し方|金具はずしセット
失敗した時、修理するときなど、一度打ったカシメやホックを外したいタイミングがあります。そんな時の方法を紹介します。
カシメはずしに使う道具
使うのはこの金具はずしセットです。
穴の開いたプラスチックの板と、先の細い鉄の打ち棒がセットになっています。
これで本当に外せるの?ちょっと不安。
それがはずせるんだ。画期的だよ。
カシメの外し方
平らに潰した片面小カシメをはずしてみましょう。
はずす時は足側(片面カシメでは平らな方)を下にし、金具はずしキット土台のサイズが合う穴にカシメの足をセットします。
きちんと穴の中央にセット出来ているかどうか、土台を裏返して確認ができます。
その状態を保ったままゴム板やビニ板などの上に置き、付属の打ち棒を使って頭の中心をたたきます。
この時も木づちでたたきましょう。
いきなり力を入れると革を傷つけてしまうことがあります。ちょっとずつ様子を見ながら行いましょう。
たたききるとこのようにはずれます。
残った頭と落ちた足。
ニッパーや喰い切りではずしていたころがウソのように簡単で確実です。
両面カシメの場合は?
両面カシメの場合もはずし方は同様です。
すでに打ってあるカシメの場合どちらが足でどちらが頭かわからない場合がありますが、わからない場合はどちらを下にしても大丈夫です。
片面カシメ同様に少しずつ慎重に打ち進めましょう。
必要な道具とあると便利な道具
穴あけ用ポンチ
穴あけ用ポンチ(ハトメ抜き)はいくつかサイズをそろえる必要があります。2.4mm、3.0mm、3.6mmあたりを持っていると使用頻度が高いです。
もしわからなければ、安いセットを買い、必要なサイズがわかったらそれだけを高品質なものに買い替えるのもありです。
これらの激安な道具の品質は全く保証しません(使ったことないからわからないけれどあまりに安すぎる)が、後に買い替えるか一回しか使わないかの前提ならアリでしょう。
もしくは、ペンチタイプの穴あけ器具も便利。たたかないので騒音対策にもなり、マンション住まいでも安心です。
ゴム板 or ビニ板
ポンチで穴を空ける時、ゴム板かビニ板を下に敷くことで台を傷つけず、ポンチの刃も守ることができます。
量が少ないなら不要な雑誌などで代用することもできます。
ポンチを使わずペンチタイプで穴を空けるならそもそも不要です。
ビニ板は革を切るときの台としても使うことができます。
一般的なカッターマットよりも刃を傷めにくいのでおすすめです。
打ち棒 or ハンドプレス
打ち棒やハンドプレス用駒は、厳密にいえば専用のものを使わないと革に跡が残ってしまいます。
ですが、よほど精度が低いものはのぞき、基本的にはサイズと形さえ合っていれば使えます。
最近は海外製の安い打ち棒が出回っていますが、私は試したことがないのでこれらのことはわかりません。安心して使いたいなら日本メーカーのSEIWAなどを選ぶのがいいと思います。
サイズは使うカシメの頭の直径に合わせて選びましょう。
ハンドプレスは大と小があります、使える機会が多い大がおすすめです。
カシメ頭を潰して使うのが嫌でないなら、両面平らの駒を一つ持っていればカシメはそれだけでOKです。
ベタ駒 | ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
ハンマー
ハンマーは木製がおすすめです。鉄の方が効率はいいのですが、打ち棒がダメになってしまいます。
金具はずしセット
『かばん屋さんのキット 金具はずしセット』ではずすのがおすすめです。
失敗のリカバリーに、修理効率を上げるために、ぜひ使ってください。
ニッパー
金具はずしでうまくはずせなかったとき、私はニッパーを使います。喰い切りではどうしても革を傷つけてしまうのです。
ニッパーは立てて使います。カシメ頭を半分にぶった切るように刃先でつかみ、切るというよりも掴んで引き抜くような感じです。
ニッパーの刃先を傷める使い方だと思うので、あまりいいニッパーを使うことはおすすめしません。
まとめ
打ち方とはずし方、道具についてお話ししました。
失敗しにくい打ち方はズバリ、ハンドプレスと駒を使って打つことです。これは騒音対策にもなります。
手で打つなら、しっかり押さえて正確に垂直にたたくことと、適切な長さのカシメとハトメ抜きを使うのが大切です。
失敗は金具はずしセットを使いましょう。おどろくほど簡単にはずすことができて便利です。
カシメは耐久性を高めるのに有効な金具ですが、正しく打てていないとすぐに外れてしまうこともあります。
正しい使い方を学んで上手に活用していただけたらうれしいです。
長文お読みいただきありがとうございました。
コメント
deteさんはどこのポンチ使ってますか?私は初心者なのですが、セイワのやつを使ってまして、良いやつに変えたいのですが、ヘリ落としみたいに高品質なものが見つからず。。
よろしければ教えてくださいますと幸いです。
こんばんは。
ポンチにはあまりこだわりがなくて、加賀谷刃物さんや大戸糸店さんなどで買ったポンチしか使ったことがないです。おそらくセイワさんのものと品質に大差ないか同じものです。
KS Blade Punchさんはいかがでしょうか?
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