同じ革で作っても、作り方次第で製品の雰囲気はガラリと変わりますという内容のお話です。
コンビなめし(クロムなめしとタンニンなめし両方の性質を持つなめし製法)のカーフ(子牛革)で作った名刺入れとミニ財布を例にお話します。
シックな名刺入れとカジュアルなミニ財布|同じ革でも作り方で雰囲気は変わる

右:ミニ財布
この二つの製品は、全く同じロットの同じ革の同じ色で作られています。
左の名刺入れはすっきりとした印象なのに対し、右のミニ財布はアンティークを思わせるカジュアルな表情。
はっきりと違いを感じていただけると思います。
これらの違いは何なのでしょうか?答えはこちら☟。
- 中身に合わせて形が変わる(見た目に影響する)作りにしているかどうか
- 革のコシを活かす製品なのか、柔らかさを活かす製品なのか
この名刺入れは中身(入れた名刺)が見た目に影響しにくい造り
この名刺入れは裏地を付けており、なおかつ裏地を浮かせて貼る製法を採用しています。
この製法の特徴は、裏地の革と表地の革の間に空気の層ができること。
裏地に入れたものがあたってキズやアタリが付いたとしても、表地の革に影響することは少ない。
だから型崩れしにくく、シックな雰囲気を保つことができます。

スマートにキメたいのに、入れたものがボコボコしてたら萎えますよね!
これに対して、ベタ貼りという製法で裏地を貼ってしまうと、裏地と表地の間に空気の層が出来ない為、裏地へのダメージが表地に響きます。

ベタ貼りにはベタ貼りのメリットもあるのでどちらが良いとか上とか言えることではないです。
ただ、シックな雰囲気を保ちたいなら、裏地を浮かせて貼った方がメリットが多く、うちではこちらを採用する機会が多いです。
このミニ財布は中身が見た目に影響する造り
裏地を浮かせて貼っている名刺入れに対して、こちらのミニ財布はそもそも裏地を付けていない一枚革。
この構造を選んだ理由は、軽く握れて使いやすくしたかったからと、やわらかくなめらかな革をにぎるという”ささやかな幸福感”を感じられる製品にする為。
裏地をつけないだけでなく、あえて厚みをうすく加工してさえいます。

入れたコインや、手でにぎった跡が革に残りやすくなりますが、それも含めてアンティークな雰囲気が出て良い感じです。
革のコシを活かす製品なのか、柔らかさを活かす製品なのか
何を入れるか?どう使うか?誰に使って欲しいか?
で、革のコシを活かすか柔らかさを活かすかが決まります。
この名刺入れは革のコシを活かした製品

出回っている名刺入れの多くは、硬めの革を使ったり芯を入れて型崩れを防ぐつくりにしていることがほとんど。
これは、『いつでもピシッとした名刺を出せるように』という作り手の配慮。
この考え方は名刺入れ以外も同じで、紳士用は財布もビジネスバッグも、札が折れにくい、書類が折れにくいなど、型崩れしにくいつくりになっています。
今回紹介しているdeteの名刺入れも同じ。
厚みのある表地と裏地、そしてポケットの革が互いに補強し合って、薄いながらもしっかりとしたコシを出しています。
ポケットは裏打ち(詳しくは裏打ちをマスターするだけでレザークラフトの腕が上達する本当の話を参照)して型崩れを防ぎました。
このミニ財布は革の柔らかさを活かした製品

カジュアル用途なら、ビジネス向け製品のような決まり事は無い。
柔らかく作りたいなら柔らかくすればOK!
手ざわりを良くしたり、容量が増えたり、くずしやこなれ感を演出できます。
同じ革でも作り方次第で雰囲気はガラリと変わる話のまとめ
同じ革でも、つくり方次第で雰囲気は大きく変わります。
具体的には以下のような製法を上げました。
- 裏地を浮かせて貼ることで、中身によるキズやアタリが表地に影響しにくくなるり、キレイに使うことができる
- 裏地を付けず、革自体の厚みをうすく漉くことで、革のやわらかさやキメの細かさを活かすことができる
このように、用途やデザイン、そして求めるつかい心地を実現する為、革の厚み、芯材の有無や種類、貼り合わせ方などを変えて作っています。

ただ革を切って貼って縫っているだけではないのです 笑
革製品っておもしろいと思いませんか?
今あなたがお使いの製品も、じっくり眺めると作り手のこだわりがかいま見られるかもしれません😊
紹介した商品
コメント