見た感じだと栃木レザー社の一般的なオイルレザーはエルバマットやTOIANO等のイタリアのタンニン鞣しよりも丈夫そうに見えますが、どうなのでしょうか?
栃木レザーは、エルバマットやトイアーノなどのイタリアンレザーより丈夫?
革職人の見地で回答します!
栃木レザーはエルバマットやトイアーノよりも丈夫?
そもそも栃木レザーとは?
栃木レザー株式会社がなめす本ヌメ革およびそのタンナーそのものを指すこともあるブランド名。
栃木レザーは、ダブルピット槽という世界にも類を見ない製法で日本がほこる高品質な革を供給するタンナーです。
くわしくは、栃木レザーのすべてを革職人が語る|品質や種類、おもなブランドに弱点までをご覧ください。
硬い革か柔らかい革かの違いだけで丈夫かどうかは語れない
以下が回答全文です。
何をもって”丈夫”とするかで回答は変ってくるように思います。
例えば、革に動きが少ない箱モノを作るなら硬い栃木レザーの方が長持ちするでしょう。
逆に、革が動く柔らかい造りのバッグなら、しなやかさのあるイタリアンレザーの方がひび割れが起こりにくく長持ちすると思います。なので、「何を作るかによる」が答えになります。
引用元 peing
質問者さんが、それぞれの革のどのポイントで丈夫かどうかを判断したのは不明です。
推測ですが、栃木レザーの方が硬くてイタリアンレザーの方がしなやかな場合が多いので、その点についての意見なのかなと解釈しました。
表面の傷のつきやすさ、色変化
キズや汚れに強いかどうかという観点で考えたのであれば、わかります。
栃木レザーというと昔ながらのヌメ革という印象をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、私感では、むしろイタリアンレザー(日本で出回っている)の方が素朴な革が多いと感じています。
イタリアンレザーは素上げ(素上げの革ってどんな革?)やそれに近いナチュラルな仕上げの革が多いですが、栃木レザーは素のヌメ革だけでなく、ラッカーやカゼイン(タンパク質による透明感のある塗装)、アイロンなどで仕上げされた革も多いです。
素上げの革はキズや汚れが目立つのに対し、仕上げ加工された革はキズがつきにくく、汚れもつきにくい仕上げがされています。
革らしい素朴な味わいは素の革が勝りますが、扱いやすさやキズなどへの耐性は塗装などが施された革に軍配が上がります。
その結果、
という考え方についての理解はできます。
丈夫な革ってどんな革?
何をもって丈夫とするかによるということは先ほどお話しした通りですが、丈夫な革に共通する条件はあるのでしょうか?
私が考えは以下の通り。
- 繊維密度が高い
- 厚みがある
- 表面をけずっていない(フルグレインレザー)
繊維密度が高い
繊維密度の高さは、革のコシに関わる部分です。
繊維密度が高くなると革が硬くなってしまいそうですが、必ずしもそうとは言い切れません。
なめした後に革を揉んだり振動させたりすることで、密度が高く柔らかい革に仕上げることも可能。
繊維密度については別記事でもお話ししています。
厚みがある
当然ですが、薄い革よりも厚みがある革の方が丈夫です。革単体で比べればですが。
製品によっては、厚い革をそのまま使ってしまうと美しくなかったり使いにくかったりするので、いかに薄く仕上げて丈夫に作るかという点は職人の腕の見せ所です。
なお、厚い革をそのまま使ったがゆえにすぐに壊れてしまうようなケースもあります。
☝の記事内で紹介しているような繊細なパーツでは、厚い革をそのまま使うとひび割れが起こってしまいます。
革の硬さと同じで、薄い革も厚い革も使い方次第ということですね。
表面を削り取っていない革(フルグレインレザー)
けずった革なんてあるの?
表面を削った上に塗装と型押しをほどこし、削ったことをわからなくする安価な革もあるようです。
これとは逆に、削り取っていない状態の革をフルグレインレザーといいます。
表面を削ることによる売り手側のメリット
- 均一に仕上がる
- 使える部分が増えて歩留まりがよくなる⇒利益率が上がる
表面を削ることによる利用者側のデメリット
大きく(厚く)削ってしまうと、革そのものの丈夫さをそこない、製品は傷みやすくなります。
革の表面は言わば革のトロ。
一番大切な部分で、革の丈夫さを担っている部分です。
けずり過ぎると革の弾力や質感を損なってしまうのも問題。
ヌバックは?
ヌバックも表面を削っています。
どれくらい削っているかによりますが、通常の革と比べると若干ですが耐久性の差は出るのかもしれません。もちろん、触ってもわらかないくらいのわずかな差ですが。
ヌバックの場合は、キズを隠す目的だけでなく独特の質感を作る為の加工ですので、これはこれでアリなのかなと思います。
問題は、表層を削り取ってしまっているような革や、次に紹介するような切り込みをいれている革。
この革のウロコのような模様は、型押しではなく切り込みが入っています。
うまく加工されているなと思います。
なので、力のかからない部分に使うとか、使い方を工夫するなどすればアリだと思います。
とは言っても、通常の革と同じように扱ったらヤケドするので注意。
丈夫な革についてのまとめ
革だけを指して丈夫か丈夫でないかと論じるのはむずかしい話で、どんな素材でも、使い方次第でもろくもなり丈夫にもなります。
柔らかい動きをする製品なら柔らかい素材を。動かさない製品なら硬い革の方が長持ちします。
丈夫に仕上がっている革の特徴には共通点があり、繊維密度が高い、削っていないなどの特徴があります。
厚みがある革の方が薄い革よりも当然丈夫ですが、使い方を間違えると逆にもろくなるので注意が必要です。
革製品選び&レザークラフト素材選びの参考にしていただけたら幸いです。
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コメント
初コメント失礼します。
動きがあるかないかで変わると解釈しましたが、ベルトについてはどうお考えでしょうか?
動きはありそうですが、柔らかいと伸びてしまうと思うので、やはり硬いとはいかないまでも、しっかり繊維の詰まった革を使うべきなのかなと思いました。
ご意見お聞かせください。
ベルトはある程度硬さが必要だと考えています。
なお、動きがある革製品というのは、入れたものによって形が変わるくったりしたショルダーバッグや、一日に何度も閉じたり開いたりする二つ折り財布などのことを指しています。
ベルトは着脱時に少し曲げる程度であまり動きが無い種類の革製品です。
ありがとうございます!
革自体に頻繁に動き(変形)があるかどうかというところですかね。