革職人が選んだベストな革用ブラシに検証写真を添えて。

ブラシにはこだわりたい。
革製品の手入れをするときにはもちろん、製作時にもブラシの存在は欠かせません。
適切なブラッシングをしてあげることで、チリや埃、余計な油分を取り払って、革目を整えてくれる。些細な掻き傷は、これである程度目立たなくなる。革製品の小傷に悩まされているという方は、是非、ブラッシングによるお手入れを導入していただきたい。TOIANOやELBAMATTなどのタンニン鞣し染料仕上げの革なら特に、きっと効果を実感できるはずです。

ブラシにもいろいろあって、適したブラシを使わないと、革に傷をつけてしまったり、効果が発揮できなかったりします。

今回は、うちで使っているブラシ(靴用)を例にとり、ブラシの毛の種類にフォーカスを当てながらご紹介したいと思います。

当店で使用するブラシ

当店で使用するブラシは、硬い方から順に、黒豚毛、化繊毛、馬毛、山羊毛です。順番に紹介していきます。

豚毛ブラシ

中央黒いブラシ

豚毛ブラシは、一般的に使われている革製品・靴用ブラシの中では、最も硬い部類に入る素材です。白豚毛と黒豚毛に分類され、白豚毛の方が黒豚毛よりも若干柔らかいです。当店では、黒豚毛の靴用ブラシを使っています。

豚革専門タンナーの方から聞くところによると、、昔は、鞣す前にカミソリで豚の毛を剃り、剃った毛を集めて歯ブラシにしていたということです。今の歯ブラシと比べるとかなり硬め。痛かろうに・・・。使いやすいのでしょうか?

黒豚毛の硬さは、汚れ落としやブラッシングにおいて、高い効果をもたらします。

ただ、ブラッシング効果自体は高いものの、毛の硬さゆえ、革にブラシ跡や傷が残る可能性があるので、使える場面は限られます。

スニーカーや登山靴の汚れ落とし、ソールのお手入れには最適です。優しく使えばクリームを伸ばすのにもいいですね。私にとっては、作業机に散らばった革の粉や埃を払うのにも丁度いい硬さ。日常のお手入れ用というよりも、掃除に適した硬さといえるかもしれません。

適度な硬さがフェルト生地のほこりをかきだすのに向いているらしく、ウールの帽子のお手入れに使われることもあります。

この記事を書き始めてから、やはり白豚毛も気になってしまい、前々から作業台の掃除用に狙っていたREDECKERのテーブルブラシを購入してしまいました。

白豚毛は黒豚毛より柔らかいと書きましたが、比べてみると、うちにある黒豚毛よりも、こちらの白豚毛の方が、気持ち硬いような?いずれにしても、大きな違いはないようです。

テーブルブラシの使い心地ですか?紆余曲折あってやっとたどり着いた感。大満足です。

化繊毛ブラシ

豚毛より柔らかく、弾力があります。

化繊毛と聞くとグレードが下がるように感じるかもしれませんが、人工だから一本一本の太さや性質が均一で、安心して使えます。毛が抜け落ちにくい点もメリットです(毛が細ければ細いほど抜けやすい傾向にあるように思います。 抜けやすい順 山羊毛>馬毛>豚毛)

私にはこの硬さと弾力が丁度よく、靴用と製作時用の2つを持っていて、多用しています。

制作時用にブラシ?と思ったかもしれませんね。

革製品制作に不可欠な革用ブラシ

材料としての革は、革の裏側と表側が接した状態で保管されています。結びを解いて広げ、切り出した状態の革には、革の粉がついていたり、保管時の埃が載っている可能性があります。革によっては、余計な油分や蝋成分が表面を覆っている可能性もあります。

そういった余分なものを除去し、革目をならす(整える)のにはブラッシングが最適です。革の種類によって適したブラシは異なり、この化繊毛ブラシや後述の馬毛ブラシ、場合によっては豚毛ブラシなどから選んで用いています。

馬毛ブラシ

豚毛や化繊毛より柔らかく、山羊毛より硬い。尻尾の毛と鬣(たてがみ)でも性質が異なり、硬く長い尾は掃除用、柔らかい鬣は洋服や靴用に使われます。

適度な弾力で、いろいろな用途に使いやすいブラシです。

このくらいの硬さなら、ほとんどの革製品に安心して使うことができます。

その反面、ブラッシング効果は前述のブラシより劣る為、制作前の革の目のならしに使うには少々物足りなさを感じます。日常的な革製品のブラッシングや埃掃いとしては、靴用としても、その他の革製品用としても最高のパフォーマンスを発揮してくれます。

家具用のブラシとしてもよく使われていて、ドイツのREDECKERやスウェーデンのIris Hantverkなどのブランドが代表格です。

山羊毛ブラシ

当店のブラシの中で一番柔らかなもの。主に仕上げの埃払いや艶出し用に使います。

他の素材に比べて高価な場合が多いです。

デリケートな革製品や靴にも安心して使うことができます。ブラッシング効果はあまりありませんので、汚れ落としや、塗ったクリームを伸ばす様な用途には向いていません。

高級家具用のブラシや埃掃い、デリケートな衣類用のブラシなどにも使われています。

革への影響(艶出し、傷)を実験してみた。

ELBAMATTのprugnaとgialloを豚毛ブラシでブラッシング

この革は、使い始めは繊細で、ちょっとしたことで小傷ができます。使っていくうちに油分が浸み出してくるのと同時に小傷は目立たなくなってくるので問題はありませんが、ブラッシングで傷ができてしまったらやはりショックです。

それに、使い込んでせっかく艶が育ってきても、ブラッシングが原因で革が曇ってしまったら元も子もありませんよね。

どんなブラシが適しているのか、実際にブラッシングして検証してみました。

こんな感じにエルバマットのprugnaを黒豚毛の靴用ブラシでブラッシングしてみました。

効果がわかりやすいように、ブラッシングというより少し強めにゴシゴシこすっています。

片手にカメラを持ってのことなので変な感じになってますが・・・

右側四割くらいをブラッシングしました。色が濃くなっているのは、ブラッシングにより、この革の特性である、ブルームが取れて革地が見えている為です。

このブルームは完全に落とさずほどよく残してあげる方が革のためにはいいと思いますが、仮に、このブルームを落とす能力=ブラッシング力と仮定すると、十分な能力があることがわかります。

gialloをブラッシングした結果はこちら。

ブラッシングされた部分はどうなっているでしょうか。拡大してみましょう。

定規と平行に、縦の細かい筋が残っているのがわかりますか?

gialloは横筋

この筋は、ブラッシングでできた傷です。

実際には、よく見ればわかる程度の微細な傷ですが、ピカピカに磨かれた靴や、使いこんでピカピカになった財布なら一目でわかります。

では、化繊毛のブラシはどうでしょうか?

ELBAMATTのprugnaとgialloを化繊毛ブラシでブラッシング

先ほど右側を黒豚毛でブラッシングしましたが、今度は左側を化繊毛ブラシでブラッシング。

違いが判りますか?真ん中のわずかの部分はブラシをあてていません。

ブラシを当てた左右の側は、共に光沢が出て、照明の光を白く反射しています。

右側との違いは、ブラシをかける前と比べて色の変化があまりないこと。前の項目で仮定したブラッシング力は、豚毛ブラシよりも劣ります。

傷の方はどうでしょう。同じ写真を拡大してみました。

【giallo 化繊毛ブラシ】

【prugna化繊毛ブラシ】

【prugna豚毛ブラシ】

違いがわかりますか?化繊毛ブラシ側は、これだけ拡大してもブラシの傷はみられません。

この革で大丈夫なら、化繊毛のこのブラシは大抵の革に使えそう。さらに、これより柔らかい馬毛や山羊毛はほとんどの場面で使用可能です。

個人的には、柔らかいブラシよりも、できるだけ硬さと弾力があるものが好ましいのですが、デリケートな製品に使えるどうかのボーダーはこの辺りになりそうです。

まとめ

デリケートな革にも、そうでない革にも使える万能な革用ブラシは、化繊毛ブラシです。心配な方は、馬毛ブラシを使っておけば間違いなし。

そして、余裕があれば山羊毛のブラシも手にしていただきたいですね。これが最強タッグです。丁寧に手入れをする楽しさを知っていただけたら嬉しいです。

注)一口に化繊毛ブラシや馬毛ブラシといっても、メーカーの違い、自然素材の場合個体差があることはお見知りおきくださいませ。

いかがでしたか?革製品のお手入れは、それ自体を趣味になさっている方がいるくらい奥深いものです。その中でも、今回はブラシにスポットを当てて紹介させていただきました。

専門店に行けば、所有欲を満たしてくれるくらいに、美しく、完成度の高いブラシもあります。ブラシに凝るという趣味も、奥深く、追及し甲斐があるかもしれません。(著者は掃除用のブラシやはたきに凝っています)

毎度マニアックな話で恐縮ですが、少しでも皆様のレザーライフが豊かなものになりましたら幸いです。

最後に、うちで使用しているブラシのリンクです。

・豚毛ブラシ・・・浅草で購入(店舗忘れました)

・化繊毛ブラシ

collonil 馬毛ブラシ ブラウン dete
スプレーやクリームを付ける前に欠かせないお掃除用の馬毛ブラシ。革を傷つけない適度な硬さです。
プロ・ホワイトブラシ | 靴・皮革製品のお手入れ、靴磨き、Q&A、お悩み解決 ポータルサイト

・馬毛ブラシ・山羊毛ブラシ

Collonil Japan コロニルジャパン|今より楽になる!お手入れブラシ講座|クリーム塗布、ブラッシング、クリーニングに
お手入れ時に用途に合ったブラシがあると、今よりもっと楽になります。コロニルジャパンには、クリームを塗りこんだり、ホコリや泥を落としたり、素材や製品に特化したブラシが多数揃っています。

2017 3/27 追記

万能に思えた化繊毛ブラシでしたが、スエードとはあまり相性が良くないことがわかりました。毛の柔らかさのわりに、なぜか毛先がひっかかるのです。豚毛の方がスムースなブラッシングができておすすめです。

ゴムのスエード用クリーナーも市販されていますが、これは革にダメージがありそうで、私としてはあまり積極的におすすめはしません。自分でも使っていません。

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